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5.経費と家事按分

※※※※※※※※※※※※

今回の話のポイント。


・経費とは商品やサービスを生み出すために直接的・間接的に必要な費用。

・プライベートと共用しているものは、使用割合を算出できればその分を経費に出来る(家事按分)

・白色申告でも家事按分は可能だが証明が難しい(白色申告は割合50%以上じゃないと家事按分不可と言う話があるが少なくても国税庁のサイトでそのような表記はない)


※※※※※※※※※※※※


 経費については前回述べたようにたくさんのサイトがヒットします。

 ただ基本的に仕事に関わるものは経費になると書かれていますが、いまいちピンときません。

 そもそも経費はどのように定義されているのでしょうか?


 迷った時は原点に返るべきです。

 国税庁のサイトには下記のように書かれています。※1

  [事業所得、不動産所得および雑所得の金額を計算する上で、必要経費に算入できる金額は、次の金額です。

  (1)総収入金額に対応する売上原価その他その総収入金額を得るために直接要した費用の額

  (2)その年に生じた販売費、一般管理費その他業務上の費用の額]


 なるほど、(1)については認識通りです。

 収入を得るために直接要した費用、例えば紙で提出するなら原稿用紙の購入とかでしょうか。

 それが経費になるのは理解できます。

 しかし(2)についてはあまりよく分かりませんのでもう少し調べてみます。


 ただ国税庁のサイトではなぜか詳しい説明がありませんでした。

 そのため、比較的わかりやすく書かれている弥生のサイトでは下記のように書かれています。※2

  [販売費及び一般管理費は、本業の営業活動にかかる費用のうち、原価に関わらないものを指します。原価とは、材料の仕入など、商品やサービスを生み出すために直接的に必要となる費用のことです。ただし、商品やサービスを販売するには原価以外にもさまざまな費用がかかります。例えば、商品のアピールには営業活動や広告宣伝が必要になるでしょうし、企業を運営するには総務・経理といった間接部門による管理が欠かせません。このような費用のことを、販売費及び一般管理費といいます]


 副業で考えているとあまりイメージ湧いてませんでしたが、たしかにこちらも経費ですね。

 これで定義は大体理解出来ましたし、基本的に仕事に関わるものは経費になるというのも納得です。

 ただ気になるのはその範囲です。


 契約作家にとっての成果物は作品となります。

 作品を執筆する際はPC・スマホ・タブレットを使っていますので仕事に必要なものです。

 またデータを送信するためにネットを使っているのでプロバイダや携帯会社との契約も仕事に必要です。

 もしこのまま経費に出来るならすごい金額になりそうです。

 わくわくしながら調べてみると、どうやら経費に出来るけど家事按分という作業が必要なようです。


 一例としてマネーフォワードのサイトでは下記のように書かれています。※3

  [支出した経費が、全額副業で収入を得るためにかかったものであれば問題はありません。しかし、経費のうち一部でもプライベート部分が含まれている場合には、プライベート部分を控除しなければなりません。これを「按分計算」と呼びます。]


 先ほどの例だと、全てプライベートでも使っているものですので家事按分が必要となるようです。

 さっそくやってみようと思ったのですが、気になる文言を見つけました。

 青色申告と白色申告で家事按分に違いがあるらしいということです。


 弥生のサイトでは下記のように書かれています。※4

  [白色申告者の場合は家事按分の際に注意する点があります。それは上記の条件に加えて、「業務・仕事の部分の割合がおおむね50%超の家事関連費だけが対象」だということです。] 


 つまり副業で白色申告する際はほとんどが経費に出来ないことになります。

 この時は非常に残念な話だと思いつつ家事按分は諦めました。

 しかし今回、この話を書くに際して改めて調べてみると新しい情報が出てきました。


 freeeのサイトでは下記のように書かれています、長文になりますが重要です※5

  [青色申告では所得税法により、家事関連費のうち事業のための支出が50%以下であっても家事按分が認められます。そのため、家事按分は法令上では青色申告が白色申告に比べ有利とされています。しかし、実際に家事按分の可否の判断を下す国税庁は、家事按分の可否基準として青色申告か白色申告かに基づく違いを明示していません。国税庁の家事按分の要件では、50%以下・50%超えにかかわらず、支出が明確に事業用である根拠を示せることが求められています。これは青色申告も白色申告も同様であるため、実務上は白色申告も青色申告も要件に差異はないといえます。] 


 あわてて参考に書かれている国税庁のサイトを見てみました。

 国税庁のサイトでは下記のように書かれています。※6

  [45-2 令第96条第1号に規定する「主たる部分が不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務の遂行上必要」であるかどうかは、その支出する金額のうち当該業務の遂行上必要な部分が50%を超えるかどうかにより判定するものとする。ただし、当該必要な部分の金額が50%以下であっても、その必要である部分を明らかに区分することができる場合には、当該必要である部分に相当する金額を必要経費に算入して差し支えない。]


 たしかに青色申告・白色申告については触れられていません。

 ただこれは別の所に記述があるのかもしれませんのでもう少し調べてみます。


 すると所得税法で近い表記を見つけました。

 所得税法施行令第96条第1号

  [第九十六条 法第四十五条第一項第一号(必要経費とされない家事関連費)に規定する政令で定める経費は、次に掲げる経費以外の経費とする。一 家事上の経費に関連する経費の主たる部分が不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務の遂行上必要であり、かつ、その必要である部分を明らかに区分することができる場合における当該部分に相当する経費]


 法令なので非常に分かりづらいですが、区分が出来れば経費にして良いと書かれています。

 また事業所得だけでなく雑所得も含まれているので実質国税庁の家事按分の可否基準と変わりません。

 白色申告で50%未満であっても家事按分は認められると考えられます。


 たださらに詳しく調べてみると、白色申告になると家事按分の妥当性の証明が難しくなるようです。

 青色申告と違って根拠に出来るデータが少ないことと青色申告と同等の証明を要求されるのが原因みたいですね。

 面倒ごとが嫌だから白色申告にする人も多いでしょうし、そんな人に客観的な根拠を持って割合を証明しろと言ってもややこしいことになるのが目に浮かびます。

 だから白色申告では『家事按分は業務・仕事の部分の割合がおおむね50%超の家事関連費だけが対象』と言ってるのかもしれませんね。


 長くなりましたので続きます。


※1 No.2210 必要経費の知識

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2210.htm


※2  販売費及び一般管理費(販管費)とは?内訳や勘定科目、求め方を解説

https://www.yayoi-kk.co.jp/kaikei/oyakudachi/accounting-basic-07/


※3 副業で家賃や光熱費は経費にできる?按分計算や確定申告についても解説!

https://biz.moneyforward.com/tax_return/basic/56066/


※4 白色申告者の家事按分のしかた

https://www.yayoi-kk.co.jp/shinkoku/oyakudachi/shiroiroshinkoku-kajiambun/


※5 家事按分とは?個人事業主が知っておくべき経費計上の仕方や計算方法についてわかりやすく解説

https://www.freee.co.jp/kb/kb-kakuteishinkoku/apportionment_of_housework/#content2-1


※6 〔家事関連費(第1号関係)〕

https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/07/01.htm


※7 法令検索 所得税法施行令第96条第1号

https://laws.e-gov.go.jp/law/340CO0000000096#Mp-Pa_2-Ch_1-Se_4-Ss_1-At_96

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