それから真斗は
「あ痛っ!んーーーーーーーーっ‼また針で指を刺してしまった!」
針で刺してしまった左手の親指を口に銜え、止血する真斗の姿に美しい着物を着た
「真斗って他は手先が器用なのに刺繍は若干、不器用よね」
「いやはや。確かに刺繡は幼い頃から
「いいのよ。私も弟の様なお前に刺繡の作法を教えるのは好きなのよ。それじゃ続きをしましょ」
「はい。
真斗は笑顔で頷き続きを始める。その光景は仲のいい本当の
そして少々慣れない手つきではあったが、念願の
「やっと出来た!
「いいのよ。それよりも真斗、必ず
「はい!
その後、真斗は次に針を作った陶磁器用の
だが真斗は苦労していた。鉄製の吹き棒で溶かしたガラスを膨らまそうとするも途中でシャボン玉の様に途中で割れてしまっていた。
「あ!また割れてしまった!はぁーーーっこのガラス作りとは、なかなか難しいなぁ」
「
真斗の背後から彼を見守っていた源三郎が笑顔で励ますと真斗は自信に満ちた笑顔となる。
「ありがとう、
それから真斗は失敗を繰り返しながら龍の首の珠を意識した五色の美しい風鈴を完成させた。
⬛︎
梅雨の時期が終わり蝉の鳴き声と光り輝く太陽の暑さを感じ始めた初夏の昼。
中庭の見える
手前には金の枝に色鮮やかな宝石を付けた小枝と奥に描かれた白い絹を身に纏った美女が小さな桶で綺麗な池で水を汲み、更に奥には勇ましく高々しい蓬莱山が描かれた掛軸。
綺麗な青と白い斑点がコントラストとなり、その二つによって紅色の糸で刺繍された炎の手拭い。
そして
「どれもこれも私が望んだ品ではないのに・・・」
そう一人で呟く
しかも彼の事を思い出す度に
(なんですか?この苦しくて痛くて、でも嫌ではない胸の違和感は)
「どうしましたか姫?そんな思い詰めた様な困った表情までして」
深く自問自答していた為、
「え⁉あ!あぁ‼いえ!何でもありませんわ!」
初めて見る
「もしかして真斗様の事を考えていたの?」
「えぇ⁉︎い、いいえ!まさかお婆様。私の望んだ品を模した手作りを送る者ですよ!その様な者に心を許すわけがありません!」
しどろもどろに弁解する
(あらあら、いつも冷静な姫も年頃の女の子の様に慌てふためいちゃって。真斗様の存在がよほど大きくなっているのね)
そう心の内で語る
「姫。そこまで彼の方が気になるのでしたら・・・」
「なっ⁉︎お婆様!いくら何でもその様な事は!」
「いいから。一度、そうした方がいいですよ。そうすれば姫の悩みも無くなりますよ」
笑顔でそう言う
⬛︎
翌日の朝、真斗はいつも通りに屋敷の
(これで最後だが、今まで以上に気合いを入れて作るぞ!)
そう心の内で語る真斗は力強く正確に松の枝を彫り続ける。
そんな彼の背中を
「
源三郎が小さく呟き
「あのーーーーーーっ!誰かおりませんかーーーーーーーーっ!」
屋敷の正面門から女性の声が聞こえて来たので源三郎は掃除の手を止め、駆け足で正面門へと向かう。
「はい!はい!どちら様でしょうか?」
笑顔で源三郎がそう言いながら両扉が開いた正面門に着くと、そこには
「あのー伊達家武家屋敷はこちらですか?」
「はい。そうですが、何かご用意でしょうか?」
源三郎に問い掛けた女性は笑顔で
「源三郎様、少しの間だけあるお方を垣間見てもよろしいでしょうか?」
絹を退けた事で女性の素顔を見て源三郎は驚く。
「こ!これは竹取の
源三郎から見て
「源三郎様、突然の訪問をお許し下さい」
「か!
そう言いながら源三郎は深々と頭を下げるが、そんな彼の姿に
「いいえ!そんな頭を上げて下さい!源三郎様!ここへ来たのは真斗様のお姿を見たくてこちらへ参りました」
「え⁉
源三郎からの問いに
「え、ええ。その・・・真斗様はいらっしゃいますか?」
「ええ。おりますよ・・・!」
源三郎は何かを察し、
「分かりました。ではこちらへ、
源三郎は笑顔でそう言うと
そして源三郎によって案内された屋敷の
(あんな真剣に私の為に品を作るなんて。でも何故なの?あの人が頑張る姿を見ていると胸がズキズキする。これが恋なの?)
だが、今は違う。自分が望む品ではないのに一生懸命に
「姫、どうでしたか?」
屋敷の
「お婆様、今は
「源三郎様、突然の訪問で申し訳ありませんでしたが、私達の為にありがとうございます」
「いえいえ。それで
「ふふふっ。さぁーどうでしょうか。でも姫の心を動かしつつあるのは確かです」
「そうですか。それで今回の訪問は
「ええ。どうやら姫が迷っている様だったので」
笑顔で源三郎と
「お婆様、そろそろ行きましょう。あまり長居しては」
「そうですね。では源三郎様、私達はこれで失礼します」
「はい、
すると
「いいえ。ここで十分ですわ。では源三郎様、失礼いたします」
「分かりました。
源三郎は一礼をし、二人を見送る。そして再び中庭の掃除を始めるが、少しして手を止める。
「
そう笑顔で源三郎は少し遠くに見える真斗が居る屋敷の