目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

EPILOGUE

 翌朝、俺とセラフィナ(ソフィエ)は、バランさんとミィファさんに連れられて、プレア王城へ向かった。

 メシエの王城は白い石壁に青い屋根だったけど、プレアの王城はべージュ色の石壁に緑の屋根。

 王都の中心の高台にあり、孤児院や冒険者学園がある平民街からでも見ることはできる。

 今まで外観を見ることはあっても、城内に入ったことは無かった。


「どうぞ、お通り下さい」


 王城正門の門番たちは、俺たちの姿を見ただけで、すんなり通してくれた。

 お城に顔パスで入れる?!

 ……っていうか、服装ですぐ誰か分かるんだろう。

 俺とセラフィナの服装は、メシエの法王様から渡された正装だ。

 バランさんとミィファさんには、プレア国王から謁見用の礼服が贈られている。

 当然ながら目立つわけで、街を歩いているときや門をくぐるときには、街の人々が興味津々で眺めていたよ。

 この白い服は、どの国でも王との謁見に使えるものらしい。


『僕はこういうの苦手で喋れなくなるから、スバルに任せるよ』


 アルキオネはそう言って、表層意識を交代した。

 俺も堅苦しいのは苦手なんだぞ?

 まあでも俺は大人だから、引き受けておくよ。



 ◇◆◇◆◇



「よく来たな、勇者アルキオネと聖女セラフィナよ。この国を拠点としてくれることを、とても嬉しく思う」


 プレアの国王陛下は、黒髪黒目で日本人と西洋人の混血っぽい顔の男。

 バランさんと同じくらいの歳かな?

 謁見の間にて、俺たちは玉座の前で跪いて王様の話を聞いていた。


「勇者を生み出した両親には恩賞を与えているのだが、アルキオネは孤児と聞いている。故に育ての親であるバランとミィファを両親とし、恩賞を与えるものとする」

「「お心遣い感謝申し上げます」」


 国王陛下の言葉に、バランさんとミィファさんが深々と頭を下げて応える。

 深層意識で、アルキオネが歓喜するのが感じられた。

 生まれてすぐ棄てられたアルキオネに、実の親への思慕の情は無い。

 彼にとって親とは、バランさんとミィファさんなんだ。

 2人に褒美が与えられることが、アルキオネには何よりも嬉しかった。


 勇者はどこの国でも待遇が良いらしいが、プレアでは特に歓迎され、福利厚生が良いと聞いたことがある。

 多分、勇者はSS級冒険者となり、難易度の高い魔物の討伐を引き受けられるからだろう。


「そして聖女セラフィナ、父上より依頼がきている。そなたをプレア国民として迎えよう」

「ありがとうございます」


 法王様は、プレア国王に魔導通信で連絡していたらしい。

 セラフィナは王の承認により、プレア国籍を手に入れた。

 勇者と聖女は名誉国民となり、貴族よりも上の立場になるそうだ。


「さて、メシエでもしたと思うが、バルコニーに出て、プレアの民にも勇者と聖女の姿を見せてやってくれ」


 そう言うと国王陛下は玉座から立ち上がり、謁見の間に隣接するバルコニーに向かう。

 後に続いてバルコニーに出ると、お城の前に人々が集まっているのが見える。

 ゲームやアニメでよくあるシーンだ。

 歓声をあげる人々の中には、見知った顔も見つけられた。


 購買のケラエノさん。

 モントル時計店のリピエノさん。

 アトラス、エレク、リック、ミラ、クロエ。

 それに付き添う、2年生パーティのミュスクルさん、シェリーさん、ミニョンさん。

 同じく子供たちに付き添う、バランさんのパーティのヴァルトさんとマルカさん。

 食堂のおばちゃんや冒険者学園の先生たち。

 ユノと娼館のお姉さんたち。

 よく菓子を買いに行く店のオヤジ。

 役場の職員ジミーさん。


 いじわるトリオの姿も見えた。

 トレミーは恨めしそうな顔で俺を見ている。

 スーフィーは、なんでお前がそこに立ってるんだ? って言いたそうな困惑顔になっている。

 ハインドだけは俺に蘇生されたり海竜召喚を見たりしたからか、笑みを浮かべてこちらを見つめていた。


 奴隷商人のユピテルはいなかった。

 多分、もうアルキオネを奴隷にすることはできないから、興味を失ったんだろう。



 ◇◆◇◆◇



 夏休み明け、学園へ行くと校長に呼び出された。

 さすがに説教ではないだろうと思いつつ行ってみると、校長室にはコメルス支部長のシースリットさんがいる。


「やあアルキオネくん、勇者認定されたそうだね」

「はい」


 シースリットさんは、お祝いに駆け付けたというわけではなさそうだ。

 俺が頷くと、彼はニッコリ笑って用件を伝えてくる。


「実はね、今代の勇者と聖女のお披露目式をソシエテでもやってほしいっていう声が多くてね、ちょっとコメルスまで来てもらえないかな?」

「ついでにエテルネルにも来てほしいと依頼があったのだよ」


 ソシエテからの招待に便乗するエテルネル。

 まだ他の国からも呼ばれそうな予感がする。


 後に、俺たちは予想通り、世界の各国を巡る旅に出ることになってしまった。

 その話は、またいつか。


   ~END~

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?