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第123話 想定外

 エイダと朋子がセラフモドキから逃げてくるのを見て、篤也は即座に全員に指示を出した。


「よし、全員馬に乗れ! 撤収するぞ!」


 希美が未来を救い出すところは遠目にも確認できていたので、これ以上無理に戦う必要はない。

 ここまでは予定どおりだ。

 篤也は雷光の魔術を広範囲に撒き散らして、敵の群れをまとめて薙ぎ払った。

 その隙にそれぞれ手近の馬に跳び乗って、元来た吹雪の壁の中へと駆け込むつもりだったのだ。

 しかし、次の瞬間、吹雪の壁の中から伸びてきた無数の銛が、三頭の馬をことごとく貫いてしまう。


「なに!?」


 魔力で生み出されたエクウスたちは哀れないななきを残して、そのまま光の粒子となってかき消えた。

 茫然と立ち尽くす篤也たちの前に、吹雪の壁を抜けて金色の巨体が姿を現す。全身に生えたトゲをしならせながら、地響きすら響かせていた。


「二匹じゃなかったのかよ!」


 新たに現れた二体のセラフモドキを前にして、藤咲は悲鳴じみた声をあげた。


「てめえらは下がれ!」


 慚愧が大刀を手にセラフモドキの前に躍り出る。頭上から降り注ぐ銛の雨をかろうじて大刀で払いのけるが、その表情に余裕はない。


「下がれって、向こうにもいるんだが!?」


 喚く藤咲だが、それでもここに止まるよりはマシと判断したのだろう。朱里たちとともに廃村の奥へと走って行く。

 振り向けば、エイダたちは、すでに進路を変えていた。自分たちを追っていた二体のセラフモドキをエクウスに乗ったまま別の方向へと引っ張っていく。そのまま逃げ回っていれば、あるいは向こうは戦わずにすむかもしれないが、こちらはそうもいかない。

 鈍重に見えるセラフモドキだが、この深い雪の中、馬無しではとうてい逃げ切れない。

 篤也は覚悟を決めて金色の回転鋸バトルソーを構えると、セラフモドキの前に立ち塞がった。


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