エイダと朋子がセラフモドキから逃げてくるのを見て、篤也は即座に全員に指示を出した。
「よし、全員馬に乗れ! 撤収するぞ!」
希美が未来を救い出すところは遠目にも確認できていたので、これ以上無理に戦う必要はない。
ここまでは予定どおりだ。
篤也は雷光の魔術を広範囲に撒き散らして、敵の群れをまとめて薙ぎ払った。
その隙にそれぞれ手近の馬に跳び乗って、元来た吹雪の壁の中へと駆け込むつもりだったのだ。
しかし、次の瞬間、吹雪の壁の中から伸びてきた無数の銛が、三頭の馬をことごとく貫いてしまう。
「なに!?」
魔力で生み出されたエクウスたちは哀れないななきを残して、そのまま光の粒子となってかき消えた。
茫然と立ち尽くす篤也たちの前に、吹雪の壁を抜けて金色の巨体が姿を現す。全身に生えたトゲをしならせながら、地響きすら響かせていた。
「二匹じゃなかったのかよ!」
新たに現れた二体のセラフモドキを前にして、藤咲は悲鳴じみた声をあげた。
「てめえらは下がれ!」
慚愧が大刀を手にセラフモドキの前に躍り出る。頭上から降り注ぐ銛の雨をかろうじて大刀で払いのけるが、その表情に余裕はない。
「下がれって、向こうにもいるんだが!?」
喚く藤咲だが、それでもここに止まるよりはマシと判断したのだろう。朱里たちとともに廃村の奥へと走って行く。
振り向けば、エイダたちは、すでに進路を変えていた。自分たちを追っていた二体のセラフモドキを
鈍重に見えるセラフモドキだが、この深い雪の中、馬無しではとうてい逃げ切れない。
篤也は覚悟を決めて