「みなさん~!こんにちは!いきなりの配信になってゴメンね。」
アニメの世界から出てきたような少女が、画面に向かって話しかけている。しかし、彼女がいるのは、現実世界でありダンジョンの前だ。
仕事のお昼休憩のサラリーマンが、子供を学校へ送り出した主婦が、風邪を引いて休んでしまった小学校の子供たちが、その配信を見ている。そして、コメント欄は
【お昼にアマネちゃんの配信嬉しい!】
【怪我しないようにね。頑張って!】
という、彼女への応援コメントが溢れていた。
「みんなありがとう!今日は、この
♤♤♤
澄み渡る空の下に、一人の女の子がステップを弾ませ歩いている。彼女が、この先にある絶望など知る由もない。
ある日、この世界にはダンジョンが現れた。前は、危険なものとされ、免許がない人は入れないという研究対象の時代が支配していたが…、
その時代はもう終わった。
今は誰でも、特殊な教育を受ければダンジョンに入ることができる。そして、そんな時代に合わせるようにして増えてきたのが、"ダンジョン系配信者"だ。
彼らは、この世界で十五歳になるともらえるSkillを利用して、ダンジョンの中の魔物を狩っている。ダンジョンには、
よって、狩ったものを料理する料理系や、ただ倒して、人々のストレスの解消を促す、戦闘系。ダンジョン内の魔物の手なづけ、ペットとして楽しむ、育成系など、様々なジャンルが現在には混在している。
この青い晴々とした空の下を歩いている彼女――
戦闘系の配信者になるためには、
Skillにはランクがあり、
上から
になる、全5段階評価だ。戦闘系では、最低
よって、結愛は
そこの魔法陣の真ん中で祈ると、Skillを授かる。よって、強いSkillを手に入れられれば、格付けのダンジョンの外にいる企業のスカウトマンにスカウトされるかもしれないのだ。
やはり、誰にとっても魅力的な企業系配信者。圧倒的な、支えとしっかりとしたコラボの実現。また、活動の幅が広がる夢のような、空間。(かといって悪徳業者には、気をつけなければならないのだが…。)
そんな、夢が叶うといいな…。彼女はそう言いながら、目の前にいるスカウトマンを見つめるのであった。そう、彼女は今、格付けのダンジョンにいる。受付を済ませ、初めて見る魔法陣に胸を弾ませ、順番をまっている。
一人、一人と結果が報告されていく。2つ前に並んでいた子が、
前の人が、
大きな魔法陣の真ん中で手を組む。祈りながら、彼女は、
「どうか、強いSkillをお与えください!」
そう、願った。なんにも聞こえず、緊張で耳鳴りがなっている彼女の耳に誰かの声が響く。
『なら、叶えてやろう。』
ハッとして、彼女が目を開くと魔法陣は、見たことのない色を出し光り輝いていた。
「え?」
結愛は、声だして困惑した。目の前に見えるスキルボード――スキルのレベルやランクを確認できるもの――には、
「え?これは、強いの?弱いの?」
そう困惑の色が目に出ている。近くにいる、市の係の人と目が合った。彼も分からないというような首を傾げようとした時、彼の首が落ちた。
ドッチャ、聞いたことがない音を立てて目の前にはシカバネが、倒れかかってくる。
それもそのはず、彼女のスキルは【
そして、最も配信者に向かないSkillなのだった。
♤♤♤
その後、係の人は蘇生の能力を持った人が近くにいたため、殺人犯にはならずに済んだ。しかし、彼女の心には、大きな夢を失ったという穴が空いてしまった。家族が事情を聞きつけ、迎えにきてくれた車内で彼女は大きな声を出して泣いたのだった。
翌日のニュースには、新しくSkillのランクに、
私の映像が流されていないのは、肖像権とかではない。私を映すと写真の目と合わせるだけで、大虐殺マシーンになる可能性があるから。私は、配信者になれない。そしてら普通の生活も…できない。
高校も、このままでは通信制の所に、行くことになりそうだ。目を合わせられないというのは、意外にも大きく人の顔を恐怖で見ることができず、家にいる時はアイマスクを外すことができなくなっていた。
母も父も大事な一人娘がこんな状態に、あることを心配していたが、彼らに解決できることではないのだ。励ますことしかできない。
そんな時、彼女のスマホに一通の連絡が入った。
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逗鞠 結愛様へ
貴方のSkillをお見かけしまして、是非弊社のダンジョン配信者の0期生になっていただきたくご連絡しました。
少しでも興味を持たれましたら、以下の番号にご連絡ください。
株式会社 Lelive 代表取締役 服部 咲羅
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配信者へのスカウトだった。聞いたことがない会社だが、家族にも相談せずに結愛は、連絡していた。
まだ夢が叶うかもしれないそんな希望に背中を押されて。無我夢中で、電話をかけたが繋がらず、ソファに飛び込む。(やっぱ、騙されてたのかな…。)
彼女が疑いをもち始めたときメールで返事が来て、一度会いたいということだった。少しためらったが、結愛は面接に行くため久しぶりに、外に出るのであった。
外の空気は、このSkillをもらう前と同じく青く澄んでいた。
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メールでもらった住所は家から電車で1時間かからないくらいの場所だった。事務所はこじんまりとしていた。(0期生ということを聞いて想像していたが)人なんか1人しかないない。本当にこの事務所大丈夫か?
近くにいた女性に名前を言い証拠にメールを見せようとしたが、「いいよ!いいよ!こっちに来て!」
そう言われた。
応接室という名の、ただの仕切りが立っているだけの空間で結愛は彼女――代表取締役の咲羅――と向き合った。深く呼吸をして追いつくと彼女は、すぐに切り出した。
「単刀直入に言うと、VTuber系ダンジョン配信者になりませんか?」