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第3話 初配信

 遂に、配信器具をそろえ、結愛はパソコンに向き合っていた。ついに、初配信。モデルは作られていたから、思っていたよりも早く初配信ができた。SNSには、

【Lelive0期生、夢風ゆめかぜ 天心あまね初配信!】


 と宣伝はしたが、ほとんどはちゃんと機能しているかのチェックだ。リンさんが別で視聴してくれてるから、視聴者数が0になることはない。そうは、思っていても怖がってしまうのが人間というものだろう。


 そんな、恐怖に打ち勝とちながら、結愛ゆめは初配信を今日行なう。もちろん、初配信からダンジョンで!というわけではなく、今日は自己紹介も兼ねて1時間、配信する予定なのだが…。


 残念ながら、彼女に一時間も配信し続けるほどのコミュニケーション能力はないのだ。


 しかし、これも社会復帰の一員として、息を大きく吸いこむと、時計が動きカチャリという音を立てた。今ごろ社長がオープニング流してくれてるから。大丈夫。大丈夫。彼女はそう言い聞かせ、リアルタイム視聴者数を見る。


 まさかの5人。1人は、リンさんで、あと4人はきっと新人あさりか、リンさんのファンだろう。(意外と、リンさんは予約待ちになったこともあるぐらいの人気の絵師さまなのだ。)


 ついに、心をきめ彼女はマイクに話しかけはじめた。画面には、綺麗な銀髪、青目の美少女が私の口の動きに合わせて動いている。自分で言うのはあまり良くないが、Vチューバーの中でもしっかりとした可愛い見た目だと思う。


「みなさん〜!こんにちは。新人Vチューバーの…」


 そう言いかけた時、コメント欄の初コメントが見えた。アカウント名、逗鞠とどまり はじめ――結愛のお父さんである。本名なのも色々と問題だが、家族が見ていると分かると、逆に緊張が十倍に…。


 しっかりと、【頑張れ!】と、描いている。よかった…。結愛頑張れ!とかじゃなくて…。


 胸を撫で下ろしながらも彼女は


「新人Vチューバー、ダンジョンの案内天使の夢風ゆめかぜ 天心アマネです。アマネと呼んでほしいです。こう見えても、Lelive所属Vチューバーの偉大なる第一号なんですよ!」


 事前に、社長に原稿作ってもらってて良かった…。


 コメント欄を覗くとお父さんの他にも


【頑張れ】


【はじめまして!】などや、


胡桃くるみ―リンさんが使っているペンネーム――の絵柄だ!可愛いい!】


 などが、少しずつ流れていく。


「私は、ダンジョン内で配信する、新型Vチューバーとして皆さまをダンジョンの中のロマンや、熱いバトル。そして、ダンジョンという新たな可能性があるものに案内していきたいと思っています。」


 その時だった。


【こういう量産型のVチューバーって、よくいるよな。】


 コメントの数が少ないので、じっくりと読むことができた。近くいる社長は、


「新人への荒らしだよ、気にしなくていい」


 と言っていたが、心に大きな石を投げられたようだ。量産型そういう縛りに入れられている。どこにでもいる、ありきたりなVチューバーということなのだろう。


 紛れもないが、アンチコメントに近いものだった。


 彼女は気にしないようにして、別の前に流れてきていたコメントを読むことにした。これは、リンさんが、話の内容を流せるように流したものだ。

(サクラ行為と言われるが、なかったら沈黙になっちゃうよ!)


【アマネさんの、skillは何ですか?】


「えぇ、そうです。私のskillは、これはダンジョン配信の時に、お見せしたいんですけど…。今話題になっている魔神ドグマのランクを頂いたskillを持っています。」


 コメント欄が一気に湧く。


【マジですか?】


【あの話題になっていたやつ?】


【身バレしないか?大丈夫?】←これはお父さん


 リンさんが、SNS上に

魔神ドグマ級配信Vチューバー遂に、配信中!】という広告をしてくれたので、視聴者数が一気に24人にまで増えた。また、


【はじめまして!】


【天使ですか?めちゃくちゃ可愛いい】


 などの初見コメントが流れてくるようになった。


 また、いつもの調子で話を再開し、性格、好きなもの、誕生日、ファンネームなどを考え、配信は終了した。


 終わったあとの最高同接数は、53人。新人としては良いところなのではないだろうか?企業としては少ないのかもだけど。


「お疲れ様でした!結愛ちゃん。どうだった配信は?」


「楽しかったですけど、疲れますね。コレから有名になると荒らしも増えるだろうし…。」


「もう有名になる予想ができてるのだ?それなら、もっと頑張らないとだ。」


 リンさんはそういうと、別の画面を私に、向けてきた。


「3Dモデル!急ピッチだったけど、ほかにも仲の良い絵師さんとか、うまいプロとかに手伝ってもらって完成したのだ。必殺技とか出す時は翼も戻せるようになったのだ。」


 そう言って、彼は立体的になったアマネをこちらに見せてくれる。 


 本当に配信者になれるんだ。すごく嬉しい。


「それてさ、ダンジョン配信なんだけど、コラボ相手見つかった?」


 社長がリンさんに聞くが、彼は頭を横に振る。


「コラボ相手って、何ですか?早速コラボなんですか!?嬉しい、楽しみ。」


「いや、だって結愛ちゃん。未成年じゃん。ちゃんとした大人のskillを持った人がいないとダンジョンに入れないんだよ。」


 そうだった。未成年単独でのダンジョンへの入場は法律で禁止させられてるんだった。


「コラボ相手ね…。こんな弱小企業だと、あまりコネもないからな。外回り担当のヤツに聞いてみたけど、今は銀行関係で忙しいらしいし。」


 一応、この事務所は創設メンバー5人で成り立っている。結愛もなぜか創設メンバーの一員になっていた。


「リンさんが復活して、やるなんでどうですか?」


「僕は、ダンジョン系のVチューバーではないから無理なのだ。」


 これ、Vチューバー系ダンジョン配信はいつになったら実現するのだろう。

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