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センキューは嘆いている!センキューは学園ラブコメをやりたいと嘆いているぜ!
センキューは嘆いている!センキューは学園ラブコメをやりたいと嘆いているぜ!
小鳥遊咲季真
現実世界ラブコメ
2025年06月01日
公開日
1万字
完結済
俺たちが超新宿だ!そこんとこヨロシク! 第3回のテーマ「様々な属性の女の子と学園ラブコメ」参加作品です。真面目に学園ラブコメを書きませんでした。誰かに見つかったら怒られそ。てへ。

第1話 様々な属性の女の子と学園ラブコメをやりたい

〉レッツゴー!


〉パーパラッパパーパラッパッパ


(六人の男が仲良く陽気な歌を歌いながら、前の人の肩に後ろの人が手を置いた電車ごっこで入場してくる)


「俺たちが劇的サヨナラ!超新宿だ!ヨロシク!」


(モヒカンの男がひとり、前に出て来て以下のような奇声を発する)


「ゔ、うぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ…………!」


「「「どうした!!!」」」


(モヒカンの男(呼称:センキュー)以外全員が叫ぶ)


「センキューは嘆いている!センキューは『様々な属性の女の子と学園ラブコメ』をしたいと嘆いている!」


(ここでボケ担当がひとり前に出てくる)


「じゃあ、俺たちが学園ラブコメをやって見せてやるぜ!」


「お前らが学園ラブコメなんてできるかよ」


(以降ボケが代わる代わる前に出てきてボケる)


「動くな!ラブコメ警察だ!貴様をピ◯チ姫拉致監禁容疑で逮捕する!おとなしく署まで来い!この悪役!見ろ!これが礼状だ!」


「うおおい!いや、それは『悪役礼状』!違う、違う。いきなり違う。お題が違う。お題は『悪役令嬢』じゃなくて『学園ラブコメ』。今回の属性はラノベの属性じゃないから。それに、ピ◯チ姫って。それはもう犯人ク◯パじゃねぇか。全然違うから。全然できてないよ。学園ラブコメだからね」


「俺がラブコメを見せてやるぜ!」


「なに!?」(他のボケ全員)


「出たな戦隊ヒーロー!今日こそ貴様の正義に我々悪のヒーローが鉄槌を下す!我の名は赤レンジャー!」


「俺はアオレンジャー!」


「俺はミドリレンジャー!」


「俺がイエローレンジャー!」


「そして俺が紅一点モモイロレンジャー!」


「「「「「五人合わせてアクヤクレンジャー」」」」」


「うおおい!」(ツッコミが入る)


「何がアクヤクレンジャーだ。普通レンジャーは正義のヒーローだろ。それにこれもまた『悪役令嬢』をお題にしてるだろ。違う、違う。お題は『色んな女の子と学園ラブコメをする』だから。全然できてないよ。学園ラブコメだからね」


「俺がラブコメを見せてやる!」


「なに!?」(他のボケ全員)


「勘違いしないでよね!別にあんたのことなんて好きじゃ無いんだから!」


「おお、ツンデレか。ようやくそれっぽくなったな」


「私はいつも元気ハツラツ!あなたのことが大好き!」


「ああ、まあ、無条件に好意寄せてくるタイプな。自分で元気ハツラツとは言わないと思うけど」


「のじゃ、のじゃ、のじゃ、ラブなのじゃ」


「いや、キャラは出てるけども。それはラブコメなのか?言葉通じる?」


「ねえ聞いてよ主人公くん!この前のクリスマスなんだけどね、家にひとり残されちゃって。そしたら二人組の泥棒がやってきたんだ。だから身の回りのもので仕掛けを作って退治したんだ!すごいでしょ!こんな私だけど、なんとかどうにかして私と付き合ってくれない?」


「うおおい!」(ツッコミが入る)


「そんな告白で付き合うか!この展開からラブコメは始まらねぇだろ。例えそんなラブコメコミックが出版されても俺は読まんぞ。何とかどうにかして付き合ってくれって、ヒロインが必死!それに、話の内容はホーム・アローンそのままじゃねえか。それはラブコメじゃなくてホームコメディだ。途中まで良かったのに。全然できてないよ。学園ラブコメだからね」


「俺がラブコメを見せてやる!」


「なに!?」(他のボケ全員)


(ボケがふたり、裏からバンジョーを持ってきて前に出る)


「(ジャンジャジャカジャン!)なあ、聞いてくれよ相棒。芸名を考えたんだ」


「なんだい、兄さん…………バンジョー玉三郎かい?」


「ジャンジャジャカジャン!(図星)」


「うおおい!」(ツッコミが入る)


「ついにラブも学園も女の子要素も無い!ただのコメディ……コントだろ!それにお前、また『悪役令嬢』お題にしてないか?『悪役令嬢(レイジョー)』だから『バンジョー』って事にしてない?悪役令嬢がお題だったとしても『バンジョー』は無理あるよ。違う違う。全然できてない。学園ラブコメだからね。頼むよ」


「俺が学園ラブコメをやる!」


「なに!?」(他のボケ全員)



〉俺の名前は学園太郎。風をときめかせて自転車のサドルとさすらう、ごく普通の高校生だ。俺の学園は他の学校とは変わっているところがある。それは、『女の子とパーティーを組んでダンジョンを攻略する事で女の子をトップアイドルへと育成、デビューを目指す』ことが授業になっているという事。つまり、これを、簡単に、バックボーンを説明すると、突如令和現代に現れた地下ダンジョンに女の子五人でパーティーを組んで攻略。レベルを上げ、スキルをあげ、気持ちも劣情もあげてエッチらオッチらしたりして親睦を深めてParameterの上限を解放し、新たな必殺技を手にして次のダンジョンへ。アイドルレベルを上げてアイドル界に自慢の女の子を送り込み参戦。いざ参らん。こうして在学中に何人もの女の子を次々に卒業させてデビューへ導く。まあ、つまりだな、俺は学園の生徒というよりコーチに近いのかもしれないな。どうだい?変わった学校、カリキュラムだろ?絶対に楽しいと思うんだ。そう思って入学したんだ。


「今日はよろしくお願いします!学園太郎さん!」


「ああ、よろしく」


 今日のパーティーメンバーは五人の女の子。俺は風をときめかせ、さらさらとした笑顔で挨拶を交わす。女の子たちの各自己紹介を聞いたところ、右から順に


〉炎属性のキョウコ

〉水属性のサヤカ

〉光属性のマミ

〉闇属性のホムラ

〉光属性のマドカ


 可愛い子たちじゃないか。どこかで聞いたことがある名前の並びだけど、個人情報やプライベートを探るのは時代錯誤。俺の任務は育成だ。深入りはナンセンス。


「じゃあ、行こうか。今回は比較的安全な任務だから大丈夫だと思うよ。徐々に実力を付けてレベルを上げていこう」 


 彼女たちは大きな声で返事をする。煌めいた瞳は希望と魔法に満ちている。良いな。青春だな。


 俺たちは予定通り順調にダンジョンをどんどん突き進む。ザコ敵を次々に狩りまくり。経験値を積んでレベルアップ。順調、順調。


 攻略は進み、やがてダンジョン最深部。最後の的目前。ボスエリア前の空間で回復アイテムなどを使って準備を整える。さあ、このメンバー最初のダンジョン最後の敵だ。難なくクリアして次のステージに上がろうぜ。


 この程度の敵はイージーレベル。スムーズィに終わるはずだった。警報音が鳴るまでは。


〉ぶー、ぶー、ぶー、


「な、なんだこれは……まさか、トラップ!」


 ああ、間違いない。トラップだ。なぜだ。何か条件が偶然揃って該当、罠が発動したのか。くそっ。これはまずいぞ。


「学園太郎くん。て、敵が……!何百、何千と次々に現れました。か、囲まれました!」


「くそっ。見たところレベルゼロ未満のザコばかりだが、数が多すぎる。俺ひとりなら何とかなっても、まだ未熟な五人は……。くそっ。どうしたら」


「ど、どうしましょう、学園太郎さん」


「お前ら……いいか、こうなったら契約するしかない。今すぐ俺と契約してくれ。残念だが、アレを倒すには全員チカラ不足。お前らが契約者になって打破するしかない。こうも囲まれては逃げるに逃げられない。このダンジョンは初心者向けで間違いないのだが、初級から上級までのダンジョン全てに即死トラップが実装されていると聞いたことがある。発動する可能性は『六億円の宝くじが当たってそれに気が付かず2年間過ごしていたらある日「あなたは当選していたのですよ。バカですね」と通りすがりの人に教えてもらう偶然』が起こるぐらいの可能性だと言われている。発動したこのトラップはレベル999だ。くそっ、なんでこんなトラップがここにあるんだ。くそっ、ザコ敵に続いてすぐにレベルの高い敵が現れるだろう。もう一度言う。俺ひとりではお前たちをカバーしきれない。このままでは全員が死ぬ。頼む!今すぐに契約してくれ!」


「契約って……あの契約者ですか?」


「ああ、そうだ。噂通りの契約者の事だ。時間がない。迷っている暇はないぞ」


 五人は沈黙。迷うのも無理はない。契約者になるとは人間であることを放棄して超常的能力を手にし、ずっと任務の駒として使われ続ける事を意味する。ひとり、ホムラが淡々と早口で説明を始める。己の精神から生み出した少ない魔力を振り絞って作る脆弱なダンジョン用魔法とは違うのだ。


「契約者は心を失い、合理的な判断だけで行動する。契約と共に偽りの空に星が生まれ、消失と共に星が流れる。契約者は神にも達する能力を手にする代わり、それを使う度に代償を払わなければならない。石を積むとか、指を折るとか、折り鶴を折るとか」


 続ける。どうやらホムラは既に俺の指す〝契約〟が〝契約者〟の中でも異質な〝魔法少女〟である事を理解しているらしい。賢い女の子だ。


「契約者の中でも魔法少女は特異で、代償は一度だけ。悪い代償ではなく、願い事をひとつ叶えてもらうという希望が代償。なんでも、ひとつ。希望の隣は絶望だから。魔法少女は普通の契約者とは違い、人間の感情が残る。契約者……契約者(魔法少女)と契約した人間(契約者の契約者)の命令には逆らえなくなる点を除けば、寧ろ短絡的に脅威の魔法能力を手にできるのだから、お得と言えばお得かしら。人間らしさを失わずに契約者に、魔法少女になる。それに、普通の契約者と違って魔法少女は誰でもなれるわけじゃないわ。この人が言うのなら、この五人全員にその素質があるってことでしょ?」


「よく分かっているな、ホムラ。その通りだ。しかし、今はそんな説明を悠長に理解している時間はない。咄嗟に張った防御結界はもう限界だ。選べ。ここで俺と死ぬか。魔法少女になって生き残るか。石はここにある。手に取れば変身できる。さあ!」


 俺は自分の魔術で理(ルール)に従って契約石を作り、女の子たちに提示。


 敵の攻撃は止まない。防御結界は本当にもう限界だ。


「わたし……わたし、やるよ。私、魔法少女になる」


「マドカ!」


「大丈夫。絶望なんてさせないから。もう絶望なんて、させない!」


「ま、マドカ……!おまえ、それは『宇宙のルール』を書き換える願いだぞ。そんなことしたら、そんなことしたら魔法少女は存在そのものが変わってしまう!お前は、お前でなくなってしまう。そんなことしなくても、普通に魔法少女のチカラを手にすればそれで打破できる!願いを変えろ!マドカ!」


「ううん。大丈夫だよ、先生。何となく分かっていたんだ、こうなること。だから、この絶望的な状況も、このトラップのピンチも希望に変えて見せる」


 マドカは石を手に取る。そして、眩い光属性の光に包まれ、魔法少女に変身した。これを見た他の四人も石を手に取って変身した。他の四人は何を願ったのだろうか。


「先生。私たちは学園太郎先生専属の魔法少女になったよ。結界が消えた時、私たちがどうすれば良いか命令して。他の誰でもない、先生が」


「ああ、分かったよ。みんなの希望ねがいは受け止めた。これからよろしく。全員戦闘態勢、攻撃魔法用意!」


 このイージーィダンジョンに挑んだ初ダンジョンでの出来事。最初にして最大の危機で俺たちは永遠の絆、約束を結んだ。これから俺は魔法少女をプロデュースしていくんだ。歌って踊れて世界を救う魔法少女。始めよう。俺達の物語を。


 タイトル。


「属性違いの女の子と地下ダンジョンを攻略してレベルアップ!目指せトップアイドル〜俺と契約して魔法少女になって世界最強の魔女を倒したら英雄扱いにされた件〜」



 …………。



「うおおい!読みふけったぞ!ツッコミどころ多いわ!とりあえずタイトルがダサいって!なんでラノベはどいつもこいつも長文で、タイトルだけで内容を全部説明しちゃうんだよ!そんな小説読む意味ねぇだろ!なかなか面白かったのは俺だけか!?」


「タイトル長いのが流行りなんすよ」


「そうか、なるほどな……って、いやいやいや。待て待て。今回のネタは学園ラブコメをやるぜと言って、全然ラブコメじゃないじゃん!頼むよ!ってオチを繰り返すネタなんだよ。まともにラブコメのような文章書いてどうする」


「たまにはこういう答えもあるってことで。次行きましょう」


「ああ、そうだな」


「気を取り直して。俺が学園ラブコメをやる!」 


「なに!?」(他のボケ全員)


〉この物語は悪と正義をラブリーチャーミーで断罪する女性向けラブコメ作品である。


「やあ、ラブリー。今日こそ俺の正義に抱かれてくれよ」


 正義が壁ドンして良い声でセリフを吐く。


「えー、なんてダサいセリフ。少女漫画でも採用されないわよそんなの。却下」


「どけよ、正義」


 今度は悪が壁ドンをして良い声でセリフを吐く。


「ハーイ、ラブリー。今日こそ俺の悪に染まってドライブしない?」


「は?こっちの方が意味わかんないんですけど。少女漫画舐めてるの?やり直し。日本語勉強し直してください。却下」


「どけよ悪魔。そんな染め方じゃ綺麗な模様は出てこないよ〜。代われ」


「やあ、ラブリー。今日こそ俺の正義くんを思う存分に舐めても、良いんだぜ?」


「下ネタじゃねぇか。正義だろ、お前。ダッサイ下ネタ。面白くないし、なんか意味わからんよ。ラブリーが感想も言わなくなっただろ。代われ」


「ハーイ、ラブリー。今日こそ俺の悪がお前を返さないぞ。エッチらオッチらして夜を明かそう」


「下ネタじゃねぇか。エッチらオッチらってなんだよ。上の小説でも使っただろ。エッチらオッチらはエッチじゃないからな。そもそも下ネタなのかよ、これ。代われ」


「やあ、ラブリー。今日こそ俺の正義の為に、愛と正義を振りかざすラブリーチャーミーな敵役をやろうぜ!」


「は?なにそれ。敵役って言ってるじゃん。私、敵とか嫌なんだけど。そもそも、ここまで女性向けじゃないから。コントだから。代われ」


 悪と代わる。


「ハーイ、ラブリー。今日こそ俺の悪から逃れられない悪によって悪を包みこんでその悪をしゃぶりつくしてアーックスを」


「言わせねぇよ。いや、アーックスって言ってるし。ダメダメ。これもっと健全なコントだから。何となく分かるような言葉、下ネタはもうやめよう。せいぎも辞めるから。代われ」


「いや、もうコントって言ってるじゃん。少女漫画路線に戻せよ、良い声使ってるんだから。声優さん泣くぞ」


 これに正義が泣きそう(今日はテストで赤点を取って留年が決まった事で落ち込むラブリーを励まそう、笑わせようと思って友人の悪と企画したのに……と意図が伝わっていないことに悲しくなって泣いている)になり、いや、泣くのを堪えながら次のセリフを吐いた。


「やあ、ラブリー。今日こそ俺の正義で、俺の、俺のせ、俺の正義で、おせっく」


「言わせねぇよ。おまえ、泣いているからってド直球は少女漫画じゃなくてもアウトだろ。全部お蔵入りなるから。そこで泣いてこい。時間稼ぐから。代われ」


 正義が泣いている。ラブリーは正義をたぐり寄せ、優しく撫でる。これを見た悪はさすがに壁ドンをやめてセリフを吐くことにした。 


「ハーイ、ラブリー。もう、分かったろ。元気出せよ。学年違っても俺たちはずっと友達だから」


「わーってるよ。まったく男子ってバカばっかり」


 こうして正義と悪とラブリーの友情が青春の1ページを彩ったのでした。おしまい。



 ……。



「うおおい!コントの中でコントをするな!それに、ただでさえ文字ってるのにさらに文字ったらさすがにどっかから怒られるって。オンエアではカットするから。もっと分かりやすいボケ持ってきて」


「それじゃあ、俺が学園ラブコメをやる!」


「なに!?」(他のボケ全員)


「ツンデレちゃん!」


「おい!」(他のボケ全員) 


「清楚ちゃん!」


「おい!」(他のボケ全員)


「幼馴染ちゃん!」


「おい!」(他のボケ全員)


「詰めて、詰めて」


「おーい、おい、おい」(他のボケ全員)


「美少女ちゃん!」


「おい!」(他のボケ全員)


「おっぱいちゃん!」


「おい!」(他のボケ全員)


「ケモミミ、ボクっ娘、ツンデレ、無双、最強、追放」


「おい!おい!おい!おい!」(他のボケ全員)


「ぜーぶ詰めて、詰めたら、ラブコメです!」


 ……。


「そんなんで出来るかあ!ラブコメ出来るわけないだろ、そんなんで。ラブコメなんだと思ってるの。キャラ渋滞だよ。なろうテンプレタイトル激長中身スカスカおっぱい女の子しか出てこないアニメのワンクールには必ず一作は出てくるラブコメレベルじゃ、そんなの。それと、ツンデレ二回言っただろ。無双、最強で被ってるし、チートも女の子の属性じゃない。違う、違う。学園ラブコメだからね。頼むよ。もっと物語がないと女の子との青春学園ラブコメ出来ないから」


「俺が学園ラブコメをやる!」


「なに!?」(他のボケ全員)


「新球場を作るぞ!市と北広島が手を挙げた!土地と予算。球団が選んだのはどっちだ!両者共に必死に呼び込む!そしてギネスに認定されたガラスウォール球場が完成した!」


「うおおい!」(ツッコミが入る)


「いや、それはラブコール!ラブコまでは合ってるけど、エスコンじゃねえか。」



「俺が学園ラブコメをやる」


「なに!?」(他のボケ全員)


「お前がラブコメなんてできるわけ無いだろ」


(ひとりが前に進み出て来て、背中に手を回してから歌い始める)


「らーぶ、らーぶ、らぶ!」


「リンゴ!」(他のボケ全員が声を合わせて合いの手を打つ)


「らーぶ、らーぶ、らぶ!」


「ポール!」(他のボケ全員が声を合わせて合いの手を打つ)


「らーぶ、らーぶ、らぶ!」


「ジョージ!」(他のボケ全員が声を合わせて合いの手を打つ)


「らーぶ、らーぶ、らぶ!」


「レノン!」(他のボケ全員が声を合わせて合いの手を打つ)


「うおおい!」(ツッコミが入る)


「それはビートルズ!らーぶはLOVEだ、ラブコメじゃない!ロックバンドに学園も属性違いの個性的な女の子も出てこないだろ!全然出来てないからね。やり直して」


「俺が学園ラブコメをやろう」


「何!?」


「LOVE米!LOVE米!マツコ・デラックスも絶賛!みんなで食べよう!」


(どう反応していいか迷う。とりあえずツッコむ事にする)


「うおおい!それは北海道米のシーエム!北海道のお米は少し前までは美味しくないってイメージが根強かったからイメージ払拭のシーエム!ブランド米も庶民の味方も美味しいよって。ラブコメってそういう意味じゃないから。今は米騒動で大変だから。センシティブ。本家は最近良く時事ネタばかりやっているけど。全然違う。出来てないからね。頼むよ。センキューが嘆いているんだから。センキューも嘆いているのにボケ側に回ってボケているんだから。何してんのセンキュー。お前がやったら他のやつやる意味ないじゃん!頼むよ。色んな女の子と学園ラブコメだからね」


「じゃあ、俺が学園ラブコメをやるぜ!」


「なに!?」


「お前らが学園ラブコメなんてできるわけ無いだろ」


「天龍八部衆の一尊、金翅鳥(こんじちょう)か……」


(ツッコミが資料歴史書を持ってきて調べる。10秒後、名前を見つけてツッコむ)


「うおおい!辞書で調べてからツッコむなんて初めてやったわ!打ち合わせに無いボケをするな。10秒で調べた俺を褒めろ。つまり、この、迦楼羅仏像(かるらぶつぞう)で『かる、らぶ、つぞう』って言いたいんだろ?強引すぎるし、らぶって言えば良いわけじゃない!もう分かるだろ、ここまで長々やってきたんだから。せめて女の子出てきて。なんやそのヒロイン!みたいなボケにして。全然出来てないからね」


「それなら、この俺が学園ラブコメを見せてやる!」


「なに!?」(他のボケ全員)


「そうか。君が噂の女子風紀委員、真っ赤っ赤髪の明上(あかがみ)朱月(あかつき)か」


「あんたは誰よ」


「俺は縹色(はなだいろ)のTシャツを毎日着ている図書委員の青木だ」


「おうおう、これはこれは。うちの学校の有名人が二人もいるじゃありませんか」


「なんだ、貴様は……いや、まさか!」


「その通り。この私こそ躑躅色(つつじいろ)の先駆者、躑躅森(つつじもり)シュンだ」


「ふん。この場に顔出すとはいい度胸じゃねえか」


「やれやれ、ボクを忘れてもらっちゃ困るな」


「な、なに!お前、いつの間に。いや、そうかお前は……!」


「そうさ、風紀委員。ボクは影の使者、深影(みかげ)ゆい。ロリっ子だからロリコンに受けが良いのさ」


「くそっ。人気ステータスは一歩上か」


「気をつけろ!上から来るぞ!俺はこの赤い扉を選ぶぜ!」


「図書委員は何を言っているんだ?」


「やあ!俺は通りすがりの一般生徒。この緊迫を目にしてしまったわけだけども、まさにこれがうちの学校『NEW四天王』!今ここに誕生。さあ、序列は如何に。このラブコメの結末はどうなる!」


「ちょっと待てうおおい!」(ツッコミが入る)


「なんだこれは!最後思い出したようにラブコメって言っただろ。NEW四天王って。喧嘩上等学園ドラマでも出て来ないぞ。途中デスクリムゾン出て来なかった?四天王としての属性は違うかもしれないけど。色違いだし。いや、違う違う。色んな属性の女の子と学園ラブコメをする、がお題だから。誰も可愛い女の子出てきてないからね。ライトノベルとか読んだこと無いのか、お前たち。文字数的にそろそろラストだよ」


「俺に任せろ!俺が学園ラブコメを見せてやる!」


「なに!?」(他のボケ全員)


「頼むよ」



〉ねえ!結局どっちと付き合うの!


「いつも素直な君に素直に言えなかった一言」


俺は学園太郎。今は完全な修羅場。美少女転校生からの好意と幼馴染の儚くもささやかな願いに近い好意に対し、今日まで曖昧な態度で誤魔化して来たがさすが誤魔化せなくなってしまった。どうする?


発端は今から2時間前。この状況を打破するために遡ってみよう。


「いやー、今日の授業も良く寝たな。さて、そろそろ帰るかな」


「待ちなさい!学園太郎!もう、また居眠りして。今日はノート貸さないからね」


「いや、そんな冷たいこと言うなよ美少女転校生ちゃん。またアサイーボールパフェスペシャルクレープ奢るからさ」


「えー。仕方ないなぁ、もう」


「ええと、学園太郎くん。その、いつまでも人に頼ってばかりなのは、その、良くないかなって」


「ああ、いつも心配してくれありがとう幼馴染。お前だけだよ、俺にハニカンで困った純真な笑顔を見せてくれるのは」


「あんた、また甘い言葉をすぐに言う!そんなこと言っているから女たらしだってクラスのグループラインに書かれるのよ。自覚持ちなさい!」


「大丈夫、大丈夫。俺は相手を褒めることで生き延びる処世術で日々をやり過ごす人間なんだって、みんなもわかってるって」


「そ、そうだね。学園太郎くんは優しいから」


 幼馴染はまた少し困ったような純粋で素直な心からの笑顔を、首を少し傾けて笑う。これはさすがに少し抱きしめたくなる。健気なやつめ。


 2時間後。


「結局どっちと付き合うの!答えなさい!」


「ま、まあ落ち着けよ。美少女転校生、話せば分かるって」


 振り返っても何の成果も得られなかった。一体俺はこの2時間で何をして何を言ったのだ。良く覚えていない。良く覚えていないから修羅場なのだ。分かっていたら素直に謝って終わるのに。いや、そうか。謝ろう。


「ごめんなさい。俺が悪かった」


「何が悪かっただ!この子をこんなに泣かせておいて。また逃げる気!?いい加減に腹をくくりなしゃい、このスカポンタン!」


「す、スカポンタン?」


 こうして幼馴染と美少女転校生は教室を出て行ってしまった。翌日、俺はふたりと言葉を交わすことが出来なかった。急な転校だった。ふたりとも親の都合だった。きっとふたりとも直前まで言えずに、気づいて欲しかったのだと今になって分かった。ふたりともサインを出していたのに、気がついてやることが出来なかった。なんて鈍く、なんて情けない男なんだ。


 残された俺は失った存在の大きさに、失ってから初めて気がついたのだった。


fin



……。



「なんか、切ない話だったな。素直に褒めて言葉にしていたはずだったのに、一番大切な素直な言葉だけ言えなかった。切ない。……じゃあ、そろそろ終わるか。最後にいつものやって俺たちも終わろう。じゃあ、うちの学園太郎くんよろしく」


「了解!それじゃあ、最後に今から俺たち全員で『様々な属性の女の子と学園ラブコメ』をやるぜ」


「まあ、最後以外全然出来てないからね」


(ひとりずつ前に出てきて手を挙げ、以下のセリフを言う。また、2人目以降は1人目の後ろに並んで縦の列を作る)


「俺が女の子と学園ラブコメをやる!(追加1人目)」


「俺が女の子と学園ラブコメをやる!(追加2人目)」


「俺が女の子と学園ラブコメをやる!(追加3人目)」


「俺が女の子と学園ラブコメをやる!(追加4人目)」


「俺が女の子と学園ラブコメをやる!(追加5人目)」


(縦に並び終わる。この時点では、先頭のボケの姿だけが見えている)


「そしてこいつが……」


(このセリフを合図に各メンバーが右左交互に顔だけを避け、一番うしろのメンバーの姿だけが見えてオチになる)


「そしてこいつが、ラブリーコウメ太夫!」


(一番うしろのボケが急いで白塗りの顔マスクを被り、急いで両手でハートを作ってボケる)


(ラブリー→ラブ、コウメ→コメ、太夫→?)



「以上、俺たちが超新宿!次のネタもお楽しみに!サンキュー!」




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