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外科医のリモートワーク
外科医のリモートワーク
ぼんげ
現実世界仕事・職場
2025年06月02日
公開日
491字
完結済
第18回空色杯500字未満の部応募作品

外科医のリモートワーク

「手術中」のランプが灯る手術室。


 扉の外側には、患者の家族たちが祈るような面持ちで控えている。


 扉の内側には、患者以外に誰もいない。ただロボットが一台あるのみだ。


 20xx年。医療現場の負担軽減のため、全自動外科手術ロボットが導入された。事前カンファレンスにてオペの流れをプログラミングしておけば、全工程を自動でこなしてくれる優れものだ。


 手術成否が外科医の腕前に左右されず、人力よりも手早く終わるため患者負担も少ない。人材不足に嘆く外科医たちにとっては、まさに夢のような存在だった。


 アームの軋む音と剪刀の音だけが響く、静寂の手術室。がんの摘出はわずか10秒で終わり、この日の手術もつつがなく終了……するはずだった。


 突如鳴り響くバイタルアラート。しかし、ロボットは微動だにしない。




 患者は誰にも看取られず、静かに息を引き取った。




 ***


「え、オペ失敗!?」


「ああ。縫合の入力漏れだ」


「うわ、マジだ」


「……オペ中は外出んなっていつも言ってるだろ」


「俺、縫合なんかできないし、いても変わんないっすよ」


「……そうだったな。あとで家族のところに謝罪ロボ送っとけよ」


「うわ、だりー」




 医療ミスはむしろ増えたという。 


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