「手術中」のランプが灯る手術室。
扉の外側には、患者の家族たちが祈るような面持ちで控えている。
扉の内側には、患者以外に誰もいない。ただロボットが一台あるのみだ。
20xx年。医療現場の負担軽減のため、全自動外科手術ロボットが導入された。事前カンファレンスにてオペの流れをプログラミングしておけば、全工程を自動でこなしてくれる優れものだ。
手術成否が外科医の腕前に左右されず、人力よりも手早く終わるため患者負担も少ない。人材不足に嘆く外科医たちにとっては、まさに夢のような存在だった。
アームの軋む音と剪刀の音だけが響く、静寂の手術室。がんの摘出はわずか10秒で終わり、この日の手術もつつがなく終了……するはずだった。
突如鳴り響くバイタルアラート。しかし、ロボットは微動だにしない。
患者は誰にも看取られず、静かに息を引き取った。
***
「え、オペ失敗!?」
「ああ。縫合の入力漏れだ」
「うわ、マジだ」
「……オペ中は外出んなっていつも言ってるだろ」
「俺、縫合なんかできないし、いても変わんないっすよ」
「……そうだったな。あとで家族のところに謝罪ロボ送っとけよ」
「うわ、だりー」
医療ミスはむしろ増えたという。