1ヶ月後、香織は東京へ戻る準備をしていた
実家でゆっくりと過ごし、心の整理もついた
新しい仕事も見つかった
今度は、自分のやりたいことを仕事にする決意だった
「本当に大丈夫?」
母親が心配そうに聞いた
「大丈夫。今度は違うから」
「そう・・・頑張りなさい」
父親も見送りに来た
「体に気をつけろよ」
「うん、ありがとう、お父さん」
駅には、修二が来ていた
「見送りに来たんだ」
「ありがとう」
「これ、餞別」
修二が差し出したのは、地元の塩飴だった
「懐かしい」
「高校の時、よく食べただろう?」
2人は笑い合った。もうわだかまりはなかった
「元気でな」
「修二君も、きっと良い人が現れるよ」
「そうだといいけど」
電車が来た
香織は乗り込み、窓から手を振った
修二も手を振り返した
車内で、香織は携帯を見た
俊介からメッセージが来ていた
『新しい人生の門出を祝う。香織ならきっと上手くやれる。いつか、お互いに成長した時、また会おう』
香織は微笑んだ
そして、窓の外を見た
故郷の景色が流れていく
たくさんの思い出を残して、香織は前に進む
一人で、でも独りじゃない
多くの人の想いを胸に、新しい物語を紡いでいく
電車は海沿いを走っていた
晴れ間から光が差し込み、海面がキラキラと輝いている
過去は過去
美しい思い出として心にしまっておこう
香織は深呼吸をした・・・そして、手帳を開いて、新しい生活の計画を書き始めた