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女性しかいない異世界なのに暴力がすべてを支配している件
女性しかいない異世界なのに暴力がすべてを支配している件
羽黒楓
異世界ファンタジー冒険・バトル
2025年06月03日
公開日
19.3万字
連載中
生命保険営業マンだった俺は死んだ。そして生き返ったらそこは女しかいない異世界だった! 12歳のロリ女帝を営業トークで説得し、巨乳奴隷や幼女奴隷を手に入れた俺は、女帝萌えの女騎士とともに戦乱の中で生きることになる、のだが。 女帝様はドMな性癖持ってるし、女騎士は君主である女帝様をスパンキングするし、奴隷姉妹も姉は酒乱、妹は食いしん坊で妙に図々しい。 ここは男が産まれない世界。 魔王が魔物を率い、人間たちが相争い、女の子たちはみんな俺の前で服を脱ぐ。 触れただけで相手の精神を崩壊させる”攻撃的精神感応”を手に入れた俺は、この最強の能力で戦乱の中を戦い抜いていくのだった。

1 女騎士



 ふと気が付くと、俺は王宮の王の間にいた。

 金箔がふんだんに使われた装飾だらけのどでかい大広間。

 一段高くなっている上座には、豪華な宝石がいっぱいついたきらびやかな椅子。

 そこに座っている女は目に眩しいほどキラキラ輝く王冠を頭に載せている。

 王様、じゃなくて女王様だな、かなり若いように見えた。

 その玉座を中心として、武装した騎士っぽいのや、でかい杖をもった魔法使いっぽいのがずらりと並んでいる。

 俺がいるのは大広間の中央だ。

 そこにいる全員が俺に視線をむけている。

 ついさっきまで、商談のアポをもらうためにビジネス街のビルに飛び込み訪問していたはずなのに、俺はいったいどうしてこんな夢を見ているんだろう?

 夢を見ているってことは、仕事中に居眠りしたのか俺は。

 でも、そんな記憶はないぞ?

 ぽかんとして周りを見渡す。

 すぐに違和感に気づいた。

 そこにいる全員が若い女なのだ。

 男なんて一人もいない。

 やばい、俺、よっぽどの欲求不満なんだなこれ。

 とりあえず早いところ目を覚まさないと課長に怒られる。

 俺はいつどこで眠りこんでしまったんだろう?

 爬虫類のような目をした課長の顔を思い浮かべて、陰鬱な気分になった。

 あのハゲ、自分はおいしいとこだけとって、人にはつらい仕事ばかりさせやがって。

 俺が成績悪いのは認めるけど、そもそも俺がとったアポを成約させられないお前だってよっぽどじゃねえか。

 自分は既存の客をがっちり囲い込んで楽して、俺をいじめてストレス解消しやがってるんだあいつは。

 いつか復讐してやる。

 いやそれよりも。

 これは、夢、でいいんだよな?

 それにしては、王の間の壁も床も居並ぶ人々も、妙にリアルに目に映る。


「五年ぶりに呼び出せた戦士が、これ……?」


 俺と一番近い位置にいた女がそう言った。

 そいつは全身鎧で固めた、ええと、そう、騎士だった。

 女騎士ってやつか。

 ゲームとかにでてくるのとは違ってそんなに露出度は高くない。

 がっかりだよ俺。

 せっかくの夢なんだからもっとエロい格好で登場してくれよ。

 女騎士の鎧はどんな素材なのか見当もつかない質感の赤い金属でできている。

 肌色成分はほとんどない。

 ただし、全身を鎧で覆ったプレートアーマーとかじゃない。

 鎧と同じ緋色の衣服をまとい、胸当てとかすね当てとかの部分部分だけが金属で守られている。

 ひざ上のあたりだけ、ちらりと肌が見えた。

 うん、絶対領域のみが見えるというこの格好。

 これはこれでなかなかマニアックでよろしいかもしれん。

 それはそれとして、俺はいったいどうしたらいいんだ?

 俺が王の間の真ん中でぼんやりと突っ立っていると、女騎士が俺の前まで歩いてきてじろじろと俺を眺め回した。


「一応、男ではあるわね……成功したということでいいのよね。頭良さそうには見えないけれど、知能はあるのかしら」


 なんだか失礼なことをぬかしやがる。

 しかし、女騎士といったって、こいつ、十代半ばにしか見えない。

 金髪に青い目、ゲルマン系だろうか。

 なかなかの美少女ではある。

 日本語を喋っているが、まあ夢だからそんなものだろう。

 それはそれとして、俺さ、昔から思っていたんだよな。

 ゲームに女騎士とかよく出てくるけどさ、無駄に露出度が高くて防御力皆無に見える上に、そもそも、女で騎士って。


「女で騎士ってさあ、女の子を戦場に出しちゃ駄目だよなあ。スティーブン・セガールみたいな男じゃないと。あ、あれはコックか……」


 まあ夢だし。

 ついついそう呟いていた。

 だいたい女の子を戦場に出すとか、非人間的だと思うしな。


「女の子に殺し合いの戦闘させるとかさ、おかしいわ」


 目の前の女騎士を見ながら俺はそう言った。

 次の瞬間。

 女騎士の顔が紅潮した。ブロンドの髪の毛が逆立つ。

 よく見たらこいつ、俺好みの顔だよな、そりゃそうか俺の夢だし。

 などと思っていたら、女騎士は腰のロングソードを抜き払って言った。


「騎士を侮辱するの!? あんた、あたしの戦闘能力にケチをつけてるってわけ!? 我が名は先の戦にて先帝より直接領地を賜った、マイア・ア・ヴァル・イアリーの長女、ヴェル・ア・レイラ・イアリー! プロテシイの加護のもと生まれ、プルカオスと契約したターセル帝国の正統なる騎士である! さあ、あんたも名を名乗りなさい!」

「え……、あ、ああ、俺は、ええと、あ、そうだ!」

「ん?」


 まあどうせ夢だし、目が覚めたらこれからまた仕事だし、夢の中でもちょっとイメトレしていくか、と俺は思ったのだった。

 営業の世界ではロープレ、ロールプレイングという。

 RPGゲームのことではない。

 演劇を演じるように、二人一組となって営業の練習をするのだ。

 よく見たら俺、普通にスーツ着てるし、仕事用のカバン持ってるし、ちょうどいい。


「私、株式会社三日月生命、法人営業部、田中鋭史たなか えいじと申します。いつもお世話になっております。あ、カバン、下に置かせて頂いてよろしいでしょうか?」

「え? ああ、うん」

「恐れいります」


 そしてぺこりとお辞儀。

 それからカバンを下に置く。


「ありがとうございます」


 もう一度お辞儀。

 これが大事。

 これをびっくりするほどきっちり丁寧にやって、応対者の毒気を抜くのだ。

 カバンを下に置いていいか訊(き)かれてダメだというやつはめったにいないから、フット・イン・ザ・ドア・テクニックの一つでもある。

 最初に小さなことでイエスと言わせろ、というアレだ。

 実際ヴェルは一度構えた剣を下ろし、怪訝(けげん)そうな顔で俺を見ている。

 さて、名刺を取り出して、


「ありがとうございます。改めまして、私、株式会社三日月生命、飛魚島支店、法人営業部の田中鋭史と申します。いつもお世話になりまして、ありがとうございます」

「はあ? お世話してないわよ? なにその紙切れ?」

「あ、実はですね、本日はですね、ぜひ社長様にお会いしてですね、お伝えしたいことがありまして、えーと、ベ……ベルラ? 申し訳ございません、もう一度お名前頂戴してよろしいでしょうか」

「ヴェル・ア・レイラ・イアリー」


 言いにくっ!

 舌噛むわ!


「べろあいらいらいらりい様に、ぜひ教えていただきたいことがございまして」

「なによ」

「あの、どのようにしたら社長様にアポイントメントをいただけますでしょうか? ぜひべらいらいらい様にそれを教えていただきたく思いまして」

「シャチョーってなに? あとあたしの名前間違ってんだけど。ヴェルよ、ヴェル」

「あ、失礼いたしました、ヴェル様。あのー、社長様というか、ここで一番偉い人は……」


 ここで一番偉い人は玉座にまします女王様に決まっているけど、まあロープレだし一応ね。

 と、女騎士はきれいな顔を歪めてさらに怒り始めた。


「あたしでは話にならないっていうの!? 屈辱! あたしが使い物になるかどうかは、この剣に訊いてみるがいいわ!」


 そして俺の喉元につきつけられる剣先、真っ二つになる名刺。


「うお! あっぶねー!」


 思わず飛び退く。

 ほんと、危なかった、これまじで死ねるぞ。

 なんだよこの受付嬢。

 たまにある、受付嬢かと思ったら社長の奥さんとか娘で専務だったパターンか?

 いやそもそもこいつ受付嬢じゃないけど。

 女騎士だけど。

 どうせ夢なんだしさあ、もっと簡単なパターンで頼みたい。

 真ん中から綺麗に二枚に分かれた名刺が、ひらりと大理石の床に落ちる。

 あーあ。名刺を無駄にするとまたあのハゲ課長に怒られるんだよなあ。

 そう思いながら女騎士と対峙する俺。

 女騎士と、スーツを着た企業戦士。

 なんだこれ。

 かなり間抜けな絵面だぞ。


「さあ、あたしと決闘してみなさい! 耳を削ぎ、私のコレクションの一部にしてやるわ」


 なんだか物騒なことをいいやがる。

 しかし、こうして立って対面してみると、こいつ、案外小柄だな。

 俺の身長が一七二センチとして、頭ひとつ分、俺より低い。

 はっきり言って、入社二年目の俺をいびりまくってるあのハゲ課長の方がよっぽど迫力がある。

 あいつ目つきちょっとおかしいしな。


「うーん、やっぱりこんな女の子を戦場に出すとか駄目だろ、可哀想だよ」

「あんた! まだ言うの! 騎士に対して戦場に出すのが可哀想なんて、これ以上ない侮辱! いいわ、その身をもって知りなさい、我が法術、受けてみよ!」


 大きな瞳で俺を睨(にら)みつつ、女騎士――ヴェルとか名乗ってたっけか――が、口の中でもごもごとなにやら唱え始めた。

 と、ヴェルが持っていた剣が紅(あか)く輝き始めた。

 まるで炉で焼かれた鉄のように真っ赤になった剣は、それ自体が熱を持っているらしく、数歩離れた俺のほっぺたまで熱く感じ始めた。

 あ、これ、まじでやばいかも、夢だけど。

 これで殺されて目が醒(さ)めるパターンだな。

 あれ、夢の中で殺されるのって、縁起がいいんだっけ、悪いんだっけ?

 そう思いながら、ブロンドを振り乱して俺に襲いかかってくるヴェルの顔を、俺はポケーっと見つめていた。

 夢の中でも、斬られると痛いのかな?

 そう思った時。




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