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0803 添い遂げる

物心ついた時から彼女はずっとそばにいた。

一緒に育ち、一緒の時間を過ごし、時に喧嘩し時に笑い合い、時に悲しみを共有し合ったそんな家族。


これからもずっと一緒だと思っていた矢先俺の体に異常が起きた。

最初はちょっとおかしいな程度だったが日に日に体が言う事を聞かなくなり気づいた時には取り返しのつかない事になっていた。


自分が弱り始めてから彼女は以前にもまして献身的に自分を助けてくれたが体調は決して良くはならず段々と命の火が消えて行った。


そして本日、もう終わる事が分かり俺は最後に彼女の手の中で息を引き取った―――と言うのが前世の。犬としての健太の記憶である。


俺の魂は隣の家の息子さんの魂に移ったらしい。


記憶はあったが体は子供。

数年経ち人間の常識が完全に定着し、一人で動けるようになっても犬の健太としての記憶は消えなかった。


世の中には不思議な事がある物だが、こうなってしまったからには自分の思いを彼女に伝えたい。そう思った。


俺が齢10歳。彼女は17歳の高校二年生。

恐らく彼女は俺の言葉を戯言と思う事だろう。


しかし俺は彼女を前に伝えた。


「俺、ミイの旦那になるよ」


その言葉を彼女は戯言と受け取ったのか笑って「ありがとう。もうちょっと大きくなってからね」と一蹴した。

そんなの分かっていたので俺はそんなの気にしなかった。


俺が変わるのはこれからだから。


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