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第8話:ダイナミックひったくり

 私の伯父が大学生時代に体験した話。


 当時、伯父は海外旅行が趣味だった。いくつかの国を訪問したが、その中でもインドで体験したエピソードがかなり記憶に残っているという。


ーーーーーーーーーー


 インドに滞在中、伯父はホテルを利用していた。


 ある日、ホテルを出て買い物に行こうとしていた時のことである。道を歩いていると、後方から女性の叫び声が聞こえた。


 何事かと思い振り向くと、2人の男性が乗ったスクーターが伯父を追い抜いて行った。


 スクーターの後ろにまたがっている男性が、血のついた大型の刃物と1本の腕を持っていた。腕はカバンを掴んだままで、二の腕あたりから切り落とされていた。


 一瞬状況がよく理解できなかった伯父だが、20mほど離れたところに、右肩を抑えて座り込む若い女性の姿を見て察した。


 女性の服は大量の血で真っ赤に染まっていた。


 スクーターに乗った男たちはひったくり犯で、女性の腕を刃物で切り落とし、カバンを盗んだのだ。


 ひったくり事件は日本でもよく発生するが、腕ごと切り落とすなんて聞いたことがない。


 伯父はその光景に戦慄した。


 スクーターは猛スピードで走り去り、行方はわからなくなってしまった。


 腕を切り落とされた女性の元には多くの人が駆けつけ、病院まで搬送された。


 それからインドを出るまで、伯父は外出するのが怖くてたまらなかったそうだ。

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