三井 幸一郎(みつい こういちろう:仮名)さんという男性が体験した話。
20年以上前、三井さんが中学2年生の頃にさかのぼる。
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当時、三井さんの家は家族3人暮らし。埼玉県の某市内に暮らしていた。
ある朝のこと。三井さんは学校に行く支度をしていた。朝食を食べ、制服に着替える。
時間に余裕があったので、リビングでニュース番組を見ることにした。
テレビのすぐ左側には窓があり、庭に出られるようになっている。この時はカーテンがかかっていた。
テレビを見ながら、三井さんはカーテン越しに人影が動いているのに気づいた。影は右から左へとゆっくり動き、カーテンの中程でピタリと動きを止めた。
家族の誰かが庭の掃除でもしているのかと思った。しかし、父親はすでに仕事へ出かけている。母親は2階で掃除機をかけていて、モーターの音が聞こえてくる。
だとしたら、カーテンの向こう側、庭にいるのは誰だ? 三井さんは少し怖く感じたが、思い切ってカーテンを開けてみることにした。
学ランを着た男がまっすぐ前を見て庭に立っていた。「気をつけ」の姿勢を保ち、瞬き以外微動だにしない。顔からして学生ではない。40〜50代に見えた。
三井さんは窓を開け、男に、
「何してるんですか……?」
と、尋ねた。
男は、
『反省してるんです!』
と、元気のある大きな声で答えた。
「反省って、何を……?」
『反省してるんです!』
その直後、男は三井さんから見て右側に体を90度回転させると、軍隊の行進のような歩き方で庭から出ていった。
最初「戦争で亡くなった人の幽霊」かと思った三井さんだったが、それにしてはしっかりと話ができていたし、庭に男の足跡がしっかりと残っていた。間違いなく生きた人間だったのである。
しかし、男がなぜ三井さんの家の庭に入ってきて、何を反省していたのか全くわからない。「幽霊の方がまだ道理にかなう出来事だった」と語ってくれた。