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​第10話​

しかし、希望があろうとなかろうと。

私はやはり神谷慎一を攻略しなければならない。

これがシステムが私を蘇らせた目的であり、

私が生き続けられる唯一の方法でもあるのだから。


でも、神谷慎一を攻略するためには。

まず、差し迫った生存問題を解決しなければならない。

私はあれこれ手を尽くし、神谷グループ本社ビルの下にある書店で、

店員の仕事を見つけた。

深夜0時まで夜勤だ。


向かいのビルの灯りはまだ煌々と輝いている。

私は書店の外の階段に座り、冷め切った弁当を開いた。

0時7分、神谷慎一の黒い乗用車が目の前を通り過ぎた。


窓は黒いスモークフィルムで、私の視線はすべて遮られていた。

神谷慎一が車の中にいることはわかっていた。

なぜなら、目の前の白い文字たちが、沸き立つように議論していたから。

彼らは私よりもう一対の目を持っているかのようで、窓ガラスを通して中の神谷慎一の姿を見ることができ、

それを元に私への冷やかしを展開していた。


【システム完全に投げたな、この姉さんも諦めてるみたい…】

【他の攻略者はこの世界に入ったら、必死で悪役さんの前に出ようとするんだよ、存在感アピールでも突破口探しでも。】

【彼女は逆に、のんびり仕事探し始めて、自分の生活を送ってる。】

【最初に会った時、悪役さんのSPに殴られて怖くなったんじゃない?】

【彼女が毎日本棚整理してるのを見てるだけ?】

【そんな役立たずなら、最初からシステムの攻略任務なんて引き受けるなよ…】


私はうつむいて、感情的な文字たちを見るのをやめた。

すると、野良犬が一匹、しっぽを振りながら、じっと私のそばに寄ってきたのに気づいた。

弁当の中のわずか二切れの肉をはさんであげた。

彼と一緒に、闇夜の中でその弁当を分け合った。


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