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第11話

書店で働き始めて約一ヶ月。

私の傷がだいぶ癒えてきた頃、

私は再び、偶然神谷慎一と出会った。


夜の11時、書店の店主が、まとめた本の束を向かいのビルに届けるよう私に言った。

警備員の幾重もの審査と尋問を経て、

ついに初めてあのビルの中へ足を踏み入れた。

本を注文主に渡し、私は帰ろうとした。


夜のオフィスビルは静かで、ほとんどの社員はもう帰宅していた。

だからエレベーターを待っている時、

廊下の奥からかすかな物音が聞こえてきた。


それは、人が極度の苦痛に襲われた時に発する音のようだった。

エレベーターがなかなか来ない。

私は首をかしげて、廊下の奥を見た。


目の前の文字は、余計なことに首を突っ込むなと叫んでいた。

彼らはむしろ、この機会に地下駐車場に降りて、

退社する神谷慎一を待ち伏せするよう、私にアドバイスしてきた。


しかし、あのかすかで苦しげな嗄れ声を聞きながら、

その場に立ち尽くし、しばらく黙っていたが、結局振り返って廊下の奥へ向かった。


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