しかし、誰も予想しなかっただろう。
非常階段の入り口に丸まり、白々しい照明の下に座っていたのは、
神谷慎一本人だったのだ。
彼は真っ黒なシャツとスラックスを身にまとい、肩幅が広く背筋が伸びていた。
しかし、今は珍しくもろい姿だった。
私が非常階段のドアを開けた時、彼はすでに鋭敏に振り返っていた。
彼のこめかみには激痛による汗が浮かび、
しかし私を見る目には、冷たさと警戒心しかなかった。
――私は、見るべきではなかった場面を目撃してしまったようだ。
私はその場に足を止めた。
それでも神谷慎一の視線に押され、覚悟を決めて言った。「……お医者様をお呼びしましょうか?」
神谷慎一は相変わらず冷たく私を見つめ、何も言わなかった。
私は仕方なく、顔にかけた白いマスクを押さえた。
顔の傷跡のせいで、お客様や子供を驚かせないように、
普段外出する時は、顔を隠す白いマスクを着けている。
彼の視線は威圧的で重かった。
私はもう後ずさりして逃げ出したかった。
しかし、彼のこめかみに激痛で浮き出た血管、青ざめた薄い唇を見て、
なぜか見捨てられない気持ちが湧き上がった。
だから私は一歩前に出て、ポケットから痛み止めの錠剤を取り出した。
この前の傷で、私は結局まともな病院に行けなかった。
耐え難い痛みに襲われると、痛み止めを噛みしめてやり過ごした。
カバンに常備していた痛み止めが、こんな時に役立つとは思わなかった。