神谷慎一の視線を浴びながら。
私は錠剤を一枚、彼の横に置いた。
振り返って去ろうとした時、不意に彼に手首を掴まれた。
彼の掌は冷たく、寒気を感じさせる。
私はうつむいて彼を見ざるを得なかった。
至近距離で、視線が交差した。
「誰だ?」彼はようやく嗄れた声で尋ねた。
照明は明るくない。
それでも彼の黒い瞳の中に、何か光のようなものが一瞬走るのを見た。
彼の動作は速く、私の同意など全く待たなかった。
すでに私の顔にかけたマスクを、すっと外していた。
神谷慎一の瞳は真っ黒で、私の顔にはっきりとした傷跡が映っている。
近すぎる。
だから彼の目が、かすかに震えたのを見た。
私のこの顔は、やはり怖すぎるのだろう。
私は手を伸ばしてマスクをかけ直した。
彼の掌から、突然力が抜けたように、銀色のネックレスがぶら下がっているのが見えた。
――さっき彼が冷たい掌でぎゅっと握りしめていたものだ。
ネックレスには銀色の時計盤が下げられていた。
時計盤の中央には、かすかに笑う少女の顔が浮かんでいる。
私は視線をそらし、これ以上見なかった。
錠剤を残し、その場を後にした。
今度は、神谷慎一は私を引き止めなかった。
去る間際、入り口で最後に振り返った。
神谷慎一は相変わらず元の場所に座っていた。
彼は全身冷たい黒ずくめだったが、
全身が落胆に包まれていた。