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第13話

神谷慎一の視線を浴びながら。

私は錠剤を一枚、彼の横に置いた。

振り返って去ろうとした時、不意に彼に手首を掴まれた。


彼の掌は冷たく、寒気を感じさせる。

私はうつむいて彼を見ざるを得なかった。

至近距離で、視線が交差した。


「誰だ?」彼はようやく嗄れた声で尋ねた。

照明は明るくない。

それでも彼の黒い瞳の中に、何か光のようなものが一瞬走るのを見た。


彼の動作は速く、私の同意など全く待たなかった。

すでに私の顔にかけたマスクを、すっと外していた。


神谷慎一の瞳は真っ黒で、私の顔にはっきりとした傷跡が映っている。

近すぎる。

だから彼の目が、かすかに震えたのを見た。


私のこの顔は、やはり怖すぎるのだろう。

私は手を伸ばしてマスクをかけ直した。

彼の掌から、突然力が抜けたように、銀色のネックレスがぶら下がっているのが見えた。

――さっき彼が冷たい掌でぎゅっと握りしめていたものだ。


ネックレスには銀色の時計盤が下げられていた。

時計盤の中央には、かすかに笑う少女の顔が浮かんでいる。

私は視線をそらし、これ以上見なかった。

錠剤を残し、その場を後にした。


今度は、神谷慎一は私を引き止めなかった。

去る間際、入り口で最後に振り返った。

神谷慎一は相変わらず元の場所に座っていた。

彼は全身冷たい黒ずくめだったが、

全身が落胆に包まれていた。


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