神谷慎一の登場で、事態の流れは一瞬で変わった。
システムも文字たちも、数えきれないほど神谷慎一の恐ろしさを私に伝えてきた。
しかし、神谷慎一の残忍さと独裁をこの目で見るのはこれが初めてだった。
彼は目の前の女性の説明を一言も聞かなかった。
ただ淡々と手を上げて、SPを呼び寄せた。
女性をその階から引きずり出させたのだ。
誰も異を唱えず、誰も私たちを一目見ようともしなかった。
目の前の神谷慎一は危険で、理解不能だった。
私はその女性が階から消えていくのを目の当たりにした。
そっと顔を上げると、神谷慎一の口元に、わけのわからない笑みが浮かんでいるのを見た。
その笑みは、私に向けられていた。
彼の冷たい指先がそっと私の手首を撫でる。
同時にうつむいて私に言った。「さっき、君を助けてやった」
彼はゆっくりと言葉を続けた。「どうやってお礼するんだ?」