私は夢から目覚めた。
涙が目尻に残り、振り向くと私のそばにいる神谷慎一の姿が見えた。
彼は軽く眉をひそめ、私を見つめていた。目には少し不安が浮かんでいた。
私は一瞬、何も言えなかった。
ただそっと体を向き変え、彼の胸にこの世界に入った。
手を伸ばして、彼の背中を抱きしめた。
「慎一」私は小声で彼の名前を呼んだ。
抱きしめられた彼の体が微かに震えた。
十年の時を隔てても、私たちの絆は変わらなかった。
私がそっと呼んだだけで、
彼はもう理解した――私が全ての記憶を取り戻したのだと。
神谷慎一はゆっくりと手を伸ばし、私を抱き返した。
彼は両腕をぎゅっと締め、まるで私を自分の体に溶け込ませようとするかのように。
「望」彼は私の耳元でささやいた。「本当に、お前が恋しかった」
「望」
この十年遅れの応えは、ようやく届いた。
私は彼の温かい胸に寄りかかり、小声で答えた。
「うん、ここにいるよ」