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第40話

私は夢から目覚めた。

涙が目尻に残り、振り向くと私のそばにいる神谷慎一の姿が見えた。

彼は軽く眉をひそめ、私を見つめていた。目には少し不安が浮かんでいた。

私は一瞬、何も言えなかった。

ただそっと体を向き変え、彼の胸にこの世界に入った。

手を伸ばして、彼の背中を抱きしめた。


「慎一」私は小声で彼の名前を呼んだ。

抱きしめられた彼の体が微かに震えた。

十年の時を隔てても、私たちの絆は変わらなかった。

私がそっと呼んだだけで、

彼はもう理解した――私が全ての記憶を取り戻したのだと。

神谷慎一はゆっくりと手を伸ばし、私を抱き返した。

彼は両腕をぎゅっと締め、まるで私を自分の体に溶け込ませようとするかのように。

「望」彼は私の耳元でささやいた。「本当に、お前が恋しかった」

「望」

この十年遅れの応えは、ようやく届いた。

私は彼の温かい胸に寄りかかり、小声で答えた。

「うん、ここにいるよ」

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