レイレイ
恋愛現代恋愛
2025年06月05日
公開日
2万字
完結済
――彼を愛した記憶を失くした私。
でも、彼はその事実に狂った。
鹿野鳴と鹿野遥は双子の姉妹。
姉の遥は聡明で華やか、妹の鳴は平凡で目立たない存在だった。
だが、鳴が姉の恋人・時川徹を好きになってしまったことで、運命は大きく狂い始める。
嫉妬に駆られた遥は、鳴を精神病院に送り込み、「改造」と称して彼への想いを消し去らせた。
愛を忘れた鳴は、昏睡の中でこれまでの人生を追体験する――
両親の冷淡、時川徹の裏切り、そして病院での過酷な日々。
真実を知った時川徹は、すべてを仕組んだ遥への復讐を決意。
そして、自分が初めから鳴に惹かれていたことを認める。
しかし、その想いが届いたときにはもう遅かった。
鳴はこの世を去り、徹はその後を追うように命を絶った――
プロローグ
私は、恥知らずにも時川徹を四年間も追いかけ続けた。
彼は私にうんざりしていた。
そしてとうとう――たったひとことの圧力で、家族は怯えながら私を国外へ追いやった。
「どんな手段を使ってもいい。あいつを俺の前から消してくれ」
「さもなければ、容赦はしない」
薬物、催眠、電気痙攣療法……
どれも驚くほど効果的だった。私は彼を愛していた感情を、きれいさっぱり忘れてしまった。
彼の姿や声、記憶の輪郭さえも曖昧になった。そして彼は、ようやく私の帰国を許した。
彼が現れる場所は、私はすべて避けた。
だって、母が言っていた。
「時川徹というあの男は、決して怒らせてはいけない。」
ある日、彼が姉とキスしているところを見てしまった。
思わずスマホを取り出して、シャッターを切った。
そのとき――彼の瞳が、刃のように鋭く、凶暴に光った。
私は恐怖で壁際にへたりこみ、口ごもる。
「ご、ごめんなさい……ただ、あまりにお似合いで、推しカプとして……」
なぜだろう。
いつも感情を表に出さない彼の目が、その瞬間だけ、激しく揺れたのだ。