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それは、風も陽もやさしい秋の朝だった。

秋風はそよぎ、万物はどこか眠たげで。

私は空の中で、のびをした。

ようやく魂が自由になったことを、心から嬉しく思った。だって――

この一生、あまりにも苦しすぎたから。そして迎える来世、

私は、自分で生まれ変わる家を選べるのだという。空から、長い時間をかけて眺めた。

ようやく一組の両親に決めた。彼らは貧しく、どん底の生活を送っていた。

けれど――

心から子どもを愛していた。子どもの体調に気を配り、靴のサイズにまで気を配り、

雷雨の夜には、眠っている子どもをそっと抱き寄せていた。彼らは、あまりにも優しく、あまりにも善良だった。

なのに、その子は早くに命を落としてしまった。残された二人は、生きる力さえ失っていた。

「この人たちの子になろう。」私は言った。

そうして、新しい家へ走り出したそのとき――

後ろから、誰かが追いかけてきた。時川徹だった。

まさか……後追い自殺!?

なんてこと!本当に、もう……いやになる。

あんなに私を傷つけたくせに、

来世まで追ってくるつもり?うっとうしい!

私は必死で転生の門へと走った。

そのとき、神様があわてて呼び止めた。

「まだ願いをひとつ叶えられるぞ!金か?地位か?美貌か?それとも知恵か?お願いごとをしてから走れ!」

私は振り返ることなく、手を振った。

「そんなのいらない。」

「時川徹が、この先――どれだけ探しても、私を見つけられないようにして。」


FIN




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