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383 狼商会での子供たち

 クルスは暖炉の前でフェムとモーフィと一緒にぼーっとしていた。

 一方、タントは商人とお話している。


「木材ですと、こちらの種類なら、ご希望の数をご用意できます」

「おお、それでお願いします。いつごろの入荷になりますか?」

「そうですね。明日には入荷いたします」

「すばらしい、よろしくお願いいたします」


 タントは思いのほか立派に店番を務めていた。

 タントの後ろの方では、年長の子供たちがせわしなく動いている。

 商人はミリアと俺たちに気づいて、軽く挨拶してから帰っていった。


「おかえりなさい!」

 タントや子供たちが笑顔で挨拶してくれる。


「みんな立派に店番しているんだな」

「はい、すごく助かっています」


 ミリアが笑顔で言うと、タントが照れる。


「まだまだです、頑張らないと」

「ゆっくりでいいんだからな」

「はい」


 俺はクルスを見る。

 クルスは暖炉の前に座ったまま、語り掛けてくる。


「アルさん! おかえりなさい!」

「わふぅ」「もっも!」


 フェムとモーフィはこっちに走ってきた。とりあえず撫でてやる。


「ただいま。クルスも留守番お疲れさま」

 そして、俺が代官について説明しようとしたとき、年少組の子供が走ってきた。


「獅子のクルスねーちゃん、ここわかんないの」

「ん? どれどれー? あーこれはねー」

「ありがと!」


 どうやら、クルスは暖炉の前でボーっとしていただけではないようだ。

 小さな子供に勉強を教えつつボーっとしていたらしい。

 ちなみに、まだ獅子の仮面をかぶっている。


 俺はミリアに言う。

「こっちでも勉強を教えているんだな」

「はい、ステフさんがトムさんの宿屋の方でまとめてみてくれるとおっしゃってくださったのですが……」


 少し前から勉強を始めたトムとケィと孤児たちは学習の進度が違う。

 だから、差が縮まるまで、こっちでも勉強を教えることにしたとのことだ。


 ヴィヴィが自慢げに胸を張る。


「いつもはわらわが教えているのじゃ」

「おお、それは助かる。ありがとうな。ヴィヴィ」


 ヴィヴィは学者タイプだ。勉強はかなりできるはずである。

 教師を務めるのに不足はなさそうだ。

 だが、クルスが勉強を教えられるとは思わなかった。


「クルスも勉強教えられるんだな?」

「もちろんですよー。子供向けの教材ですからねー」

「クルス、助かったのじゃ。あとはわらわが教えるとするのじゃ」

「うん、おねがいねー」


 そして、ヴィヴィは子供たちのいる裏の方へと行く。


「勉強しておるかや?」

「うん! ヴィヴィねーちゃん、このぐらいやった!」

「偉いのじゃ!」

「えへへ」


 ミリアもタントたちに話しかける。

「店番ありがとうございます。交代するので休憩してくださいね」

「はい!」


 タントたちは年少組と合流する。休憩していいと言われたのに、勉強するようだ。


「タントたちはしばらく休憩していていいのじゃ」

「でも、勉強時間がもったいないし!」


 向学心あふれることだ。素晴らしい。だが、休憩しないのも困る。

 ヴィヴィもそう思ったのだろう。


「よし、子供たち、みんなおやつにするのじゃ」

「やったー」

「わーい、お茶入れてくるね!」


 年少組とタントたちをまとめておやつの時間にしたようだ。

 子供たちも大喜びだ。ヴィヴィの好判断と言えるだろう。


「りゃっりゃー」

 シギショアラも大喜びで俺の懐から顔を出す。

 そして、パタパタとヴィヴィのところに飛んでいった。


「え? おやつ? やったー」

 クルスも子供たちのもとに走る。

「もっもー」「ぴぎぃ!」

 モーフィとチェルノボクも向かった。一方フェムはすましてお座りしている。


「フェムもおやつ食べに行っていいぞ?」

『フェムは子供ではないのだ』

「だが、フェムも行ったら子供たちが喜ぶぞ?」

『そうであるか? 仕方ないのである』


 そして、フェムも「わふ」と言いながら、走っていった。

 それから俺は暖炉の前に座ると、おやつを食べているクルスに事情を説明する。

 代官の話や、ジールの話もしておいた。

 ジールの話は獣たちや子供たちも興味を持ったようだった。


 そして、クルスからは子供たちの話を聞く。

 子供たちはまじめで優秀なようだった。


 会話しながら、暖炉で温まってから、俺はミリアに言う。


「さて、そろそろ、リンドバルの森に行ってくる」

「あ、はい。お任せして大丈夫ですか?」

「ああ、任せてくれ」


 リンドバルの森で、ヴァリミエから木材を買うためだ。

 ヴァリミエ相手なら、別に交渉とかそういうのもない。

 商人ミリアがいなくてもなんとかなる。


「では石材とか購入しておきましょうか?」

「うーん。木材だけでも何とかなるかな」

「了解しました」


 俺がトムの宿屋に向かおうとすると、ティミショアラが言う。


「我も行くのだ」

「おお、頼む」

「ぼ、ぼくも!」「わふ!」「もっも!」「りゃあ?」「ぴぎっ」


 クルスと獣たちは、俺についてきたいようだ。だがおやつも食べたいのだろう。

 明かに葛藤しているのがわかる。


「すぐ戻るから、クルスはおやつを食べながら待っていてくれ」

「は、はい! わかりました!」

「もっ!」「わふ!」「ぴぎっ」「りゃっりゃ!」


 だが、獣たちは俺たちについて来たいらしい。

 大急ぎで俺たちのもとに来る。


「わらわも行くとするのじゃ」

 リンドバルの森はヴィヴィの生まれ故郷だ。

 行きたいという気持ちはよくわかる。


「じゃあ、一緒に行くか。別に遊びに行くんじゃないんだがな」

 そして、俺とティミは獣たちと一緒にトムの宿屋へと向かうことにした。

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