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親友からもう一度〈語り・博孝〉

最初の最初の出会いからやり直すことはできないけど

友人からもう一度やり直したい……


凌央のお墓に行った一週間後、僕は

椿紗を何時も待ち合わせに使っていた場所に呼び出した。


『美村先生、突然呼び出して悪いね』


椿紗の顔を見て一瞬、なんて呼ぼうか迷って

出会った頃のように、あるいは、

職場にいる時のように苗字で呼んだ。


『大丈夫です』


見間違えじゃなければ椿紗は動揺した表情かおをしたよね?


何で……?


『博孝、貴方は“友人関係”までやめたつもりですか?』


僕ははっとした。


また、やってしましたらしい(苦笑)


『ごめん“椿紗”』


名前で呼ぶと少しだけ和らいだ表情(かおになった。


『いえ、いいんです。


私から別れを告げたのに

“友人”でいてほしいなんて我が儘ですよね……』


違う、違うよ椿紗……


思わず抱き締めてしまった。


『最初に謝らせてほしいんだ……


僕は君に言われるまで気付いていなかったんだ。


本当にごめん』


この二年、椿紗はどんな思いで“恋人”でいたんだろうか……


『貴方が私を通して違う人を見ていることは

付き合い出して最初の方で気付いていたのです』


はぁ~


やっぱり、そうだったんだね……


『それでも私は貴方を愛していたので

胸の奥の小さな痛みに目を背け“恋人”として

傍にいたのですが日に日に積もった痛みは

目を背けられない程膨れ上がって悲鳴を上げたんです』


だから、あの日別れを告げられたんだね……


椿紗の性格からして僕に訊けなかったんだろうね。


でも、心の奥の痛みは日に日に増していく……


僕なら二年も耐えられない。


『ねぇ椿紗、もう一度君に好きになってもらえるように

頑張るから“親友”としてやり直したいんだ。


そして、何時か、また“恋人”になってほしい』


抱き締めたままだから椿紗が今どんな表情かお

しているのかはわからないけど頷いたことはわかった。


『ありがとう』


こうして、僕達は“親友”からやり直すことになった。

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