5月28日(その3)
今日の日記が3ページになってしまった。腹が立って仕方ないので、またワニンゴをビンタしたけど気が晴れない。
先月はそうでもなかったけど、今月はかなり重いみたい。これから1週間はイライラしっぱなしかと思ったけど、試しに自分に回復魔法を掛けたら、ロキ●ニンより効いた。男を殴るよりこっちの方が早かった。HP減ったことないから盲点だった。
大部屋に戻ると、カレキとカラテしかいなかった。他の連中はアワビを食い終わって風呂に行ったらしい(ブータロウは馬車だろう)。
カレキが途方に暮れていた。親指の爪をかじって、「ブータロウ……」とか呟いている。
カラテはカラテで、何やら写真を見ていた。何を見てるのか確認しようとしたら隠そうとしたんでビンタして写真を取り上げた。
写真はメガネだった。今のガキの姿じゃないメガネだ。これが本来の姿らしい。
カラテは大きな肩を縮こまらせて、「実は組織なんて関係ないんです。あれは魔王の呪いで…」みたいな話をしてきたんだけど、そんなことより「メガネが好きなんか?」って聞いたら、繋がった1本眉毛を掻いて、頬を赤らめて頷いた。
それから恋バナをした。
カレキはブータロウに──
カラテはメガネに──
それぞれ“恋”をしている。恋の訪れはいつも唐突だ。
カレキにブータロウのどこが好きなのと聞いたら、「抱擁力と…優しさかのぅ」と呟いた。
カラテにメガネのどこが好きなのと聞いたら、「知的でミステリアスなラビリンス的なロマンスだからでごわす…」とか言って、鬼の角みたいに飛び出た2本の髪を弄ってた。なに言ってんだコイツ?
2人とも恋に恋して悩んでいる。こんなに甲斐甲斐しくしてるのに、自分の気持ちが伝わらないのがもどかしいと。
私は2人をビンタした。「愛を押しつけるな。愛は受け入れることだ」と言った。
カレキに「例の進捗は?」と聞いたら、「85%といったところで…」と答えたので、「人参から大根へ変えろ」と言ったら「え? だ、大根?」と驚いていた。
なんの話か分からないカラテはキョトンとしていたけど、「コイツにも“やり方”を教えてやれ」とカレキに命じた。
まずは受け入れられる“器”がなきゃどうしようもない。
それからアワビの殻の枚数を数えている私に、カレキが「何をしてるんで?」と聞いてきたんで、「明日のためだ」と答えておいた。