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6月29日(その1)

6月29日(その1)


 “嘆きの洞窟”に到着する。


 アナルゴとフグリ田は戦闘メンバーじゃないので外で待機だ。クズなホストくずれたちは家に帰した。


 私、ワニンゴ、カレキ、ロリコで入っていく。魔物も出るが、ワニンゴとカレキが戦うから問題ない。そこまで強い敵も出ないし。


 ワニンゴが「勇者さんは戦わねぇんで?」とか揉み手をしながら聞いてきたんで、「女の子の日だからな」と嘘をついた。「へへ、さいでっかw」みたいな怪しい感じだったが、ワニンゴがおかしいのはいつものことだから気にする必要もないだろう。


 洞窟はどんどん狭くなっていく。


 奥に何があんだこれ? お宝とかあんのかしら。


 真実を映し出す鏡とかで、整形している女優や、国籍偽ってる政治家の本当の姿が見れるとかなら嬉しいな。


 いや、違う。涙を流すことが目的だったわ。そのために正統派ヒロインになったんだからな。


 しかし、ブータロウのためにここまで面倒くさいことをしなきゃいけないとは。だんだん腹が立ってくる。


 カレキが「む? どうやら行き止まりのようですな」とか言い出す。確かに洞窟はここで終わりみたいだ。その先はなく、どん詰まりだ。


 なんだ。なにもねぇーじゃんと思ってたら、ロリコがいきなり泣き出して「ず、ズビバゼェン! は、話しじゃいまじだぁーー!」とか言い出す。


 「なにを?」と聞いたら、「勇者ざまがレベル1なことでずぅー!!」とか。


 そして、私の背後で音がして来た道が封鎖される。ちらっと見えたのは、アナルゴとフグリ田か?


 「ハーッハッハ! かかったな! 勇者よ!」と、いつの間にかなんか台座みてぇなところに立ったワニンゴが、いつ着替えたんだかフル武装(E.超鋼鉄の爪、E.超分厚い拳法着、E.テ●ガ)で、邪悪な笑みを浮かべていた。


 「弱くなったのは好都合だぜ! 今まで調子くれやがって! 恨みのすべて、ここで晴らさせて貰うぜ!」とか言っちゃってる。


 やべーな。


 これ、やべーよ。


 あー、やべー。


 カレキが驚いた顔で「ゆ、勇者殿…」とか言うてる。


 なんか、涙出て……あ。涙でたじゃん。


 これ、化粧水を入れる空ケースに入れておこう。


 よかった。目的は果たしたな。


 ワニンゴが哀れすぎて涙が出てくるとは、これは盲点だったわ。


 よし。目的は果たしたし、頃すか。

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