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どうしてこの世界は
どうしてこの世界は
椿
文芸・その他純文学
2025年06月10日
公開日
713字
連載中
高校生の胡桃(くるみ)と凪咲(なぎさ)が帰り道で、この世界の汚さや、生きずらさについて語る。 なぜこうも汚く生きずらいのか___その疑問について触れる。

どうしてこの世界は

「どうしてこの世界は、こんなにも汚いのかな。」

学校帰り、田んぼの脇の細い道を、自転車を押しながら胡桃がつぶやいた。


妬み、屈辱、強欲、承認欲求、独占欲、執着、憎悪___

この世界は、あまりにも気持ち悪すぎる。


それを聞いた幼なじみの凪咲が、少し笑ってこう言った。

「人間はね、世の中の“仕組みを知りすぎたんだよ。」


「仕組みって?」

胡桃が首をかしげる。


「例えばさ、どうすればみんなに注目されるか、どうすればお金が稼げるか、どうすればあの子に勝てるか、どうすれば権力を持てるか.......

それって全部、“自分が満足する人生”を送るための計算だよね。その答えを、みんなもう知っちゃってるんだ。」

「知りすぎた、ってこと?」

「うん。たとえば、"目立ちたい”と思ったとき、どうすればいいか。

運動神経がずば抜けてるとか、めっちゃイケメンとか、面白いとか、

"こういう人が注目される”って、みんなもう分かってるの。

その条件に近づこうと必死になる。

だから汚い感情がむき出しになるんよ。」


胡桃は静かに頷いた。

「たしかに。条件をクリアしないと、“価値がない”みたいに扱われるもんね。」

「そう。だからこそ、みんな自分のことばっかり考えて、誰かと関わるときも、“目的”がなきゃ関わらない。」


「ほんと、生きづらい世の中だよね。」

「うん。」

凪咲は遠くを見つめていた。

その目には、もう希望なんて残っていないようだった。


この世界は、汚れている。

泥水よりも、ずっと濁っていて、醜い。

人との関わりさえ、打算でできている。

誰かの視線の奥にはいつも「自分のため」が見える。

結局、みんな自分のことしか考えていない。

そんな世界に失望しながら、それでも私は、今日も必死に生きている。

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