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132 ケーテの家を取り戻そう

 ケーテの背から飛び降りると、一気に宮殿の入口に向かって走る。


「Pipipi」


 まだ、結構距離があるのに魔装機械は俺に反応した。

 魔装機械の感知能力は高いらしい。


「……あとは攻撃力と防御力を知りたいな」


 俺は小さな声で呟きながら、一直線に走っていく。


 上空から見えていた魔装機械は三機。

 三機とも上部の一か所が緑に発光していたのだが、それが赤色に変わっていた。

 警戒色のようなものだろう。


「Pipipipi」


 魔装機械の鳴き声はどんどん大きくなっていく。


 ——ダダダダダダダダダ

 俺に向かって、目にもとまらぬ攻撃を繰り出しはじめた。

 ケーテの言っていた小さな金属塊を撃ちだす攻撃だろう。


 咄嗟に横に飛ぶ。

 ——ヒュン

 耳のすぐ横を、何かが高速で通り抜けた。


 ジグザグに、体を動かしながら、入り口へと接近する。

 九割はかわせた。だが、一割は俺の体をとらえる。


 魔法障壁で飛んでくる金属塊を食い止めるしかない。

 食い止めた金属塊を見る。それは中指の先ぐらいの大きさだった。

 魔力は感じない。


「これだけ速く飛ばされると、ただの金属でも怖いものだな」


 魔装機械の攻撃力は、かなり高いと判断した。

 広い屋外ならともかく、狭い室内では、エリックやゴランでもかわしきれまい。

 ゴランたちが降りてきたら、魔法で防御したほうが安心だろう。


 入口に飛び込もうとしたその時、建物の奥から魔装機械がわらわらと湧いてきた。


「中に入る手間が省けて楽になったとも言えるのだが……」


 独り言をつぶやいて、先頭の魔装機械に軽く魔力弾マジック・バレットを撃ち込んだ。


 ——ガィン


 魔装機械の前面が大きくへこむ。だが、止まらない。


「やはり頑丈だな」


 同じところにもう一度、軽い魔力弾を撃ち込むと沈黙した。

「この威力の魔力弾で、二発必要なのか……」

 一発で沈ませるためには、かなり気合を入れた魔力弾が必要だろう。


「まだ、中には居るっぽいよな」

 出てきたのは十機程度。ケーテによると三十機はいるらしい。

 残り二十機はいると考えたほうがいいだろう。

 室内で、大量の魔装機械は相手にしたくない。


「……攻撃しておびき出すか」


 ケーテは火炎ブレスを使ったと言っていた。

 おそらく中にあるものは火には強いのだろうし、大丈夫なはずだ。

 それに魔装機械は火炎に強くとも、ゴブリンたちやヴァンパイアには有効だろう。


「これでも食らえ!」


 わざと大きな声をあげ、ここに敵がいるとアピールする。

 そして魔装機械の頭越しに、ケーテの宮殿の中に全力の火球ファイアーボールを放り込む。


 ——ゴオオオオオオオ


 ケーテの宮殿、その窓という窓から、火炎が噴き出した。


「む? やりすぎたかな?」

「なんてことするのだ!」


 上空からケーテの抗議の声が響く。

 火炎には強いはずだから大丈夫だと思う。


 魔装機械の攻撃をかわしながら、しばらく待った。

 だが、建物の中から魔装機械は出てこない。


「……また、ケーテは見栄を張っていたのだろうか?」


 自分を撃退した魔装機械の数を多めに言っていた可能性はある。 

 それならば、いま外にいる十機がすべてだ。


「ケーテ。数は少ないが暴風ブレスを……」

 ケーテにブレスを要求しようとしたその時、


「Pipipi」


 宮殿の屋根部分を乗り越えて、魔装機械が出現する。

 宮殿の裏手からも、俺たちの後方からも続々と集まってきた。


 ふと気づけば、周囲を魔装機械に囲まれている。

 どうやら、宮殿の外に大量の魔装機械はいたようだ。


「全部で何機だ?」


 即座に数えられないが、五十機ぐらいだろうか。


「ブレスいくのである!」

「ケーテ、待ってくれ!」

「わかった」


 もう少し敵を密集させた方がいい。


 俺は魔力弾で魔装機械を倒していく。

 一撃で倒すにはそれなりに強めに打たなければならない。


 剣がどのくらい通用するかも試したい。

 魔神王の剣で、魔装機械を斬りつけた。


「硬いが、斬れないわけではないな」

 魔力弾で三機、剣で三機を倒したころには、魔装機械は俺に向かって殺到していた。


「ケーテ、いまだ! 俺めがけて撃ってくれ」

「わかったのである!」 


 ——ゴオオオオオオオオオオ


 暴風というより空気の壁。空気がまるで巨大な鈍器のようだ。

 魔法障壁を張って魔法の影響を遮断。踏みとどまる。


 巨大な金属の塊である魔装機械たちがやすやすと巻き上がる。

 発生した竜巻に次々と吸い込まれ、互いにぶつかりものすごい音が鳴る。


 ケーテの暴風ブレスはただの竜巻ではないらしい。

 強い魔力のこもった風の刃が竜巻の中を暴れている。


 魔装機械の四足は次々ともぎ取られていった。本体の装甲自体も切り裂かれている。

 装甲が裂かれたうえで互いにぶつかるのだ。

 頑丈な魔装機械でもひとたまりもない。


「なんていう威力だよ」


 俺は思わずつぶやいた。

 ケーテはやはり、強力な竜だった。


 暴風ブレスがやんだ後、ケーテが地面に降りてくる。

 同時に宙に舞い上がった魔装機械が地面におちて大きな音がなった。


「ケーテすごいな」

「ロックも……我のブレスを食らってよく無事だったのだ」


 俺とケーテが談笑していると、エリックとゴランがケーテの背から降りてきた。


「我らの出番が……」

「いや、出番がないのはよいことなんだけどな……」


 エリックとゴランはそんなことを言っていた。

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