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王宮で皇太子クラウスがヴェルナー対策会議をしていた、ちょうどその頃。
ラインフェルデン皇国王都の一角で、別の会議が開かれていた。
七人の者たちが険しい顔を付き合わせている。
いや、七人というのは正確ではない。人族だけではないのだから。
彼らは「光の騎士団」を名乗る秘密結社の最高幹部達だ。
「目障りなケイがいなくなった今がチャンスではあるのだが……」
「ケイには弟子がいるだろう? あいつが邪魔だ」
「あの弟子はクビにした」
「仕事がはやいな」
「ああ、こういう時のために、ゲラルド商会を通じて、学院長や魔道具学部長に金を握らせていたんだからな」
幹部たちが順調に計画が進んでいることに邪悪な笑みを浮かべる。
光の騎士団は、非合法な秘密結社である。
だが、合法的な公然部門もしっかりと存在していた。
それは「神光教団」という名の急成長中の新興宗教である。
光の騎士団は、神光教団の秘密の最高指導部でもあるのだ。
その「神光教団」には予言があった。予言の内容は、
『悪しき者たちが跳梁跋扈し、この世界は戦乱や災害、疫病によって覆われる。
だが、心配してはいけない。
近いうちに神の光が世の中を包み、信者は救われるのだ』
その予言を実現させるため「光の騎士団」は、この世の中に戦乱を巻き起こそうとしていた。
その目的のためには、凶悪な魔物とも手を結ぶし、井戸に毒をまくこともある。
非常に危険な集団だった。
「ケイの指導下の研究室にて、開発中だった魔道具の全ては魔道具学部長が手に入れた」
「おお、これでケイの魔道具が、我らが手に入れられると言うものだな」
幹部の一人が、ぽつりと言った。
「だが懸念点がある」
「なんのことだ」
「近年、ケイは魔道具を作っていないらしいという話を聞いた」
「それはないだろう? 実際に八年前の戦争で使われた爆弾が……」
「作ったのが誰かはわからぬ。だがケイではないらしい。確度の高い情報だ」
そして幹部の一人がぽつりと言う。
「私は爆弾の開発者のことを『隠者』と呼んでいる」
凄まじい魔道具を開発しているのに、名前が出てこない。
ケイに近しいらしいことはわかっているが、正体が掴めない。
「ケイの弟子が作っていた可能性はないか?」
「それはない。弟子はまだ二十歳。爆弾が作られたとき、まだ十二歳の子供だぞ」
「そうだな。さすがにそれはあり得ぬか」
「ケイがどこに行ったかつかめていない以上、弟子を調べるしかなかろう」
「『隠者』に繋がる手がかりを手に入れるには、それしかないな」
そして光の騎士団の者たちは、会議を続ける。
「隠者」の正体を探るため、ヴェルナーの動きを見張る。
同時に、魔道具学部長の手によってケイ研究室の魔道具を完成させる。
その二つを同時に実行することにした。
「隠者を自由にさせている限り、光の神の国は訪れぬであろう」
光の騎士団の最高幹部たちは、隠者の正体を暴き、抹殺することに全力を尽くすことを決めた。
「神の国のために!」
「「「神の国のために!」」」
高らかに宣言されて、会議は終わった。