その日、世界は終わらなかった。
だが、彼らの日常は唐突に終わった。
快晴の青空。高校の屋上で昼休みを過ごしていた5人の生徒は眩しい閃光に包まれた。
次に目を開けた時、そこは紛れもなく異世界だった。
「うわっ、ここどこだよ⁉︎」
真っ先にそう叫んだのはリーダー格の少年・蒼月 蓮。
鋭い眼差しに冷静な判断力を見せる彼は剣道部のエースだった。足元に広がる草原を睨み、仲間たちの様子を確認する。
「夢じゃないよね。これ。」
隣で立ち上がったのは金髪まじりの柔らかな髪を揺らす少年・日下部 圭。軽薄そうな外見に反して頭の回転は早く蓮の幼馴染である。
「夢にしては空気がリアルすぎる」
眼鏡を直しながらそう呟いたのは物静かな読書家
・一ノ瀬 優斗
五人の中で最も冷静な彼は隠れた博識さと観察眼を持っていた。
「だ、大丈夫?私たち、死んでないよね。」
怯えた声でそう言ったのは・藤崎 美奈
化学物所属で実験の腕には定評がある。普段は引っ込み思案だが、芯の強さを秘めている。
「みんな、無事ね。まずはよかった。」
最後に落ち着いた口調で話したのは5人の中で最も年上らしい雰囲気を持つ・如月 彩音
生徒会副会長で冷静沈着な判断力と周囲を見渡す視野を持っている。
五人は巨大な草原のど真ん中で佇んでいた。見知らぬ太陽。二つの月が空に浮かび、遠くには巨大な城壁都市がそびえている。
「やっぱり、異世界ってことか。」
蓮が口にした言葉に全員が無言で頷いた。そして一冊の本が空中に現れた。
■ラディアの召喚書──選ばれし五つ星の者たちへ
汝らは、神の意志によりこの世界“ラディア”へと導かれし者なり。
世界に迫る
与えられしは、それぞれの運命。
一人は剣の星──蒼月蓮。
一人は知の星──一ノ瀬優斗。
一人は風の星──日下部圭。
一人は癒しの星──藤咲美奈。
一人は導きの星──如月彩音。
汝らの力が、世界を救う鍵となる。
「星って・・・まさか俺たちのこと?」
圭が浮かぶ本を凝視しながら呟く。
「運命だの、災厄だの、まるでゲームみたいな展開だな」
蓮は眉をしかめつつも、腰のあたりに何かがあることに気づく。手を伸ばすとそこには光る剣が収められていた。
「武器・・・!」
他の4人もそれぞれの武具が備えられていた。
優斗は魔導書。圭は風を纏った双短剣。美奈は回復の杖。
彩音は指揮杖と呼ばれる儀礼的な武器を手にしていた。
その瞬間、空が赤黒く染まり、地面が割れた。
「何かが来るぞ‼︎」
蓮が叫ぶと同時に、地割れから現れたのは異形の獣。ーー黒い霧を纏う<<獣鬼>>
「この流れ的に戦えってことか。」
圭が歯を食いしばって立ち向かおうとしたその時ーー
「下がって。まずは私が援護する。」
彩音の声が響くと同時に空中に魔法陣が浮かび優斗が詠唱を始めた。
「《識解の輪》。行動予測、完了──弱点は額の赤い核だ!」
「任せろっ!」
蓮が飛び上がり、剣を振り下ろす。
「俺たち、思ったよりやれるじゃん。」
圭の短剣が風と共に舞い、獣鬼を切り裂いた。
ーーそして戦いが終わった。
「はあ、はあ、マジで異世界だったんだな。」
息を切らしながら座り込む美奈の肩に彩音がそっと手を置く。
「でも私たちならきっとこの先も進める。だって5つの星が揃ってるんだから。」
「だな。せっかく異世界に来たんだ。この機会はもう二度と無いんだし、どうせなら思う存分、楽しんで伝統になってやろうぜ。」
蓮が微笑み、皆もそれに続くように笑った。
こうして、五人の異世界冒険は始まった。
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あとがき
どうもSEVENRIGHTです。
僕の2冊目の小説です。ぜひ、2話以降も読んでください。
この小説は基本的に月曜、木曜に更新します。更新できる日は12時に更新します。
コメントといいねをよろしくお願いします🙏