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第4話 封印の遺跡と星を裂く刃

王都ミレスタの地下には、かつての古代文明である遺構が埋まっている。ーーそれはラディアの一部の知識層のみ知られている秘匿の事実だった。


「この国の始まりの下に失われた星が眠る。これは精霊図書館にあった古文書の一節だった。」


優斗は王都図書館で手に入れた古代言語の断片を解析しながら仲間たちに告げた。


「これってつまり、王都の地下に何かが眠っているってこと?」


美奈は不安げに覗き込むと圭が肩をすくめて言った。


「まさか地下迷宮か?これってもう完全にダンジョン攻略じゃん」


「実際に遺跡の入り口があるみたいだ。ただ、王族の許可なしでは立入禁止区域だな。」


蓮が腕を組んで考えていると、王太子リデルが現れた。


「やはり、君たちがその文に気づいたのか。・・・ならば頼みがある」


リデルは五人を王城の地下へと案内した。封印された石の扉、その中心には五つの星を象った紋章が刻まれていた。


「ここは始まりの遺跡。だが、この封印は誰にも解けなかった。君たちの力がなければ開かぬだろう。」


五人は与えられた指輪をそれぞれ扉に掲げた。

ーーーゴゴゴ

すると扉が音を立てて開き、地下へ続く深い階段が現れる。



地下遺跡は、静かで冷たい空気に満ちていた。壁には古代文字がびっしりと彫られ、ところどころに魔法の罠や仕掛けが散りばめられている。


「優斗、これ読み取れるか?」


「まだ完全じゃないけど、これは警告だ。“ここに星を裂く者、裏切りの影現る”……?」


「裏切り……?」


美奈の声が震える。だがその時、階段の中心部で一人の人物が彼らを待っていた。その男は五人の誰よりも若く見えた。だがその存在は場の空気を一変させる。


漆黒の装束、そして──銀色の仮面。


「また、あの仮面の男?」


彩音が身構える。だが、先日の男とは異なる雰囲気を持っていた。


「私の名は影星(エイセイ)ーーかつて六番目の星としてこの地に召喚された者だ。」


その言葉に一同は息を呑む。


「六番目だと??」


「君たちと同じようにかつて私はこの地に呼ばれた。だが、選ばれし星は五つ。私の存在は余分だった。」


「それで、、裏切ったの?」


美奈が問うと影星は淡々と答える。


「否。拒絶されたのだ。私は救う意志を持ちながらお前には救う資格がないと言われた。だからこそ私はこの世界を選び直す。」


「選び直す??」


「君たち五つの星を壊し、消し、再び6つの均衡を築く。

それこそが真の救済だと、私は信じている」


影星はその手から黒い星の刃を出現させ、五人に向けて構えた。


「来い。選ばれし星たち。私を否定するならその刃で証明せよ。」



刹那、空間が歪む。

影星の一撃が蓮に迫るが剣で受け止めた。だが


「・・・重い」


蓮が踏ん張る。だが、相手の剣は単なる物理攻撃ではなかった。星の力そのものを裂く──そんな圧を持っていた。


「優斗、援護を!」


「展開する、《光輪結界》!」


 魔法障壁が味方を守るが、影星の動きは速い。

 彩音が全体を把握し、叫ぶ。


「この剣、触れただけでスキルの加護が削れる……! みんな、接触は最小限に!」


 圭が横から奇襲を仕掛けるが、それすら読まれていた。


「チッ……予知まで使えるのかよ!」


「違う……これは、未来視じゃない。俺たちと同じ、戦闘経験から来る“感覚”だ!」


 蓮が歯を食いしばりながらも、決して退かない。

 優斗が封印文字を読み上げ、床に陣を発動する。


「……解け、星の秩序。術式星律陣・束!」


 その瞬間、影星の動きがわずかに鈍る。


「今だ、蓮!!」


 美奈が全力で回復を送り、彩音が号令を飛ばす。


「全員で一点突破! 左肩を狙って!」


「いくぞ──!」


 蓮の渾身の一撃が影星の仮面をかすめ、ついにその表情が露わになる。


 ──そこにあったのは、まだ十代に見える少年の顔だった。


「若い……?」


 その顔に、美奈は驚きと同情を隠せなかった。


「君は……なぜそんな道を──」


「語る必要はない。……だが、今日の戦いでわかった」


 影星は静かに後退した。


「今の君たちは、まだ私には届かない。だが……いずれ、また会おう。次こそは“運命”を決する日になる」


 彼は《星刃》を空に掲げ、光とともに姿を消した。


「裏切りの星……。こんな存在が、かつていたなんて……」


 優斗が記録をまとめながら呟く。


「否定された星が、世界そのものを恨んでる……そんな奴が、敵として立ちはだかるのか」


 蓮が剣を収め、息を吐いた。


「……でも、ただの敵とは思えない」


 彩音の言葉に、ミナがそっと頷く。


「彼も、誰かを救いたいって……言ってた」


 沈黙のなか、圭がぽつりとつぶやく。


「俺たち五つ星ってのも、もしかして……本当に“完璧”じゃないのかもな」


 遺跡の奥、扉の先にはさらに深い階層が広がっていた。


 そこには、次なる謎と、かつての星々の記憶が眠っている。


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どうもSEVENRIGHTです。

次話予告 第五話古き星々の記録と召喚の代償

王都の遺跡を越えた先で、彼らが知るのは、“選ばれなかった星たち”の記録。

召喚とは祝福か、それとも犠牲か──五人の心が試される、新たな真実が明かされる。






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