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第5話 トラウマ

「 ヘッヘッヘ、ようやく手に入れることがてきたぜ、やっぱりこりゃあ上玉だなぁ、いい値になりそうだぜ。 」


なっ、何が起こってるんだ……?


「 ねぇ、早くしてよぉー、ほらっ誰かに見られるかもしれないし〜。 」


後ろを振り向いたら、そこには複数の大人の男の人と女の人がいた。全員派手な格好だ。真ん中にいるボスみたいな男の腕に、顔色が悪い風太がいる、腕がだらんとなってピクリとも動かない。胸が上下に動いているので、気絶しているのだろう。


「 風ちゃん……? 」


わかってはいるが返事はない。大人達が風太を見てゲスな顔をしている。それを見て俺は何かがブチりと切れた。持っていたカバンをほおりだして、風太を連れている大男に向かって殴り掛かる。


「 弟を離せえええええぇ! 」


「 ん? 」


「 あっ! 」


いつの間にか俺の後ろにいた他の男に捕まれ、ハンカチを口と鼻に当てられる。


「 うぐぐ……っ、んー! 」


大人の男と子供の俺では圧倒的に力の差がある。必死で腕を殴ったり、叩いたり、自身のお腹にがっしりと捕まれている腕を剥がそうとしたり抵抗したが、相手はまったく気にしていない。そんなことをしていると、段々と意識が刈り取られていく。ねっ眠い……。このハンカチ、睡眠薬が仕込んであるっ。力が入らない。ダメ……だ、眠……い、風太……。


「 なぁ、こいつどうする? 」


「 うーん、目的はこっちの白い子だし、そっちはぶっちゃけどうでもいいけど……。

ん?……そいつなかなかいい顔してるじゃねぇか、確かこの二人兄弟だっけ?顔はいいし、白い子ほどでは無いけど、いい値がつきそうだな……。よしっ!そいつも持っていくぞ! 」


最後にそんな会話が聞こえた。











うっ、うーん、ここは……?目を覚ますと知らない場所にいた。倉庫みたいな、コンクリートの壁で覆われている部屋だ。確か、大人達が風太を連れていこうとして、殴りかかって、それから……。

はっ!風太は!体を起こして周りをキョロキョロと見回すと灯りが着いている。その近くに寝かされている風太がいた。風太はまだ目が覚めていないみたいだ。


「 目が覚めたのか?おかしいな〜?まぁいいや、おはよぉ?君がこの白い子のお兄ちゃんかな? 」


ボスみたいな大男が声をかけてくる。ソファーに座りながら、女性に囲まれている。大男


「 お前たちは誰だ!弟に手を出したら許さないぞ! 」


「 おおーw怖いね〜。 」


大人達は笑って俺の言葉を流す。その間に俺は風太の元へと駆け寄る。


「 風ちゃん!風ちゃんっ! 」


俺は風太を呼ぶ。揺すっても呼びかけても起きない。ただぐっすりと気持ちよさそうに眠っている。


「 何やっても無駄だよぉ〜。君の弟君には、君に吸わせた睡眠薬と同じやつを吸わせたからね。しばらくは起きないよ〜。 」


「 なぁなぁ、売る前にちょっと味見してもええか?もう我慢できないわ、こんな綺麗な男の子滅多に現れないで。 」


取り巻きの男が風太を見て舌なめずりをした。俺は背筋が震えた。風太を守ろうと、寝ている風太に被さる。


「 おいおい、そんなんしたら触れないやんけ、どけよ。 」


「 嫌だ!絶対に触らせない!どんなことがあっても守る! 」


俺は必死に風太を守ろうとする。すると大男は目を細めて言った。


「 そんなに触りたいなら自分で何とかしてな、あっ、顔は傷つけるなよ。 」


そう言って大男は女性と戯れる。その話を聞いた他の男達は、目の色を変えて手をボキボキと鳴らしながら、近づいてくる。俺は手足に力を入れる。


「 オラッ 」


ドカッ


「 そらっ! 」


ボカッ


「 ぐっ……ゲホッ 」


痛い。初めは俺を風太から剥がそうとしていたが、段々と楽しんで風太のことなど気にしないで俺に暴力を降ってきた。横腹を蹴られ、背中を押さえつけられ、手を踏まれ、頭を捕まれ、叩かれる。だが、顔だけは傷つけなかった、言いつけを守っているのだろう。俺は風太に当たらないように、身を呈して守った。



痛い……痛い、痛い、痛い、痛い、痛い。



全身が傷だらけだ。ところどころ血が出ている。



怖い……怖い、怖い、怖い、怖い怖い怖い怖い、痛い、怖い、痛い、怖い、痛い、痛い怖い痛い怖い


「 がはっ……。 」


男が俺の横腹を蹴りあげる。力が入らなくて、壁際まで吹っ飛ばされる。壁に強く背中を打ち付ける。


「 そろそろ飽きてきたな。遊びは終わりにして、本命にいこうや。ちょうど、邪魔も居なくなったしな。」


そう言って、俺に向けていた視線を風太に向ける。まずいっ!離れてしまった。今の風太は丸腰だ!


「 がふっ 」


近づきたいのに体が動かない。口の端から血が流れ出る。血の味がする。体が痛い。体が痛いから動かないのか?それもあるだろう。

俺の体は震えていた。体の震えが止まらない。ブルブル、ブルブル。

そうしている間に男達は風太に近ずいていく。動けっ!動けっ!俺の体!風太に危険が迫っている!動け俺の体!


「 や……め……ろ、やめ……ろ、触……るなっ 」


「 ぐぇへへ 」


男達が風太に触れようと手を伸ばす。


「 やめろ!やめてえええええええ! 」


ドカッ!と音がして扉の形に壁が開く。そんなところに扉、あったんだ。


「 警察だ!大人しくしろ! 」


け……警察…?良かった。これで助かった。あぁ安心したら意識が……。


「 陸にぃ!風太! 」


最後に風太の寝顔とオレンジ色の髪を見て、俺は意識を手放した。

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