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第6話 救出

秋斗視点


陸にぃに言われて、女の子と帰ることになった。俺は陸にぃと風太と一緒に帰りたいのに……陸にぃ酷いよ。

というか、この子とは帰る道が違うからすぐに別れることになるんだよな。


「 うふふー秋斗くん♡今日は、一緒に帰れて嬉しい! 」


女の子がそう言って、手を繋ごうとする。


「 あっ、俺こっちだから。また明日ね。 」


ほら、やっぱり、すぐ別れることになった。こんなにすぐに別れるなら一緒に帰る意味があんまり無いんじゃないかなぁ?

手を振って別れるとき、女の子は悲しそうにしていた。

帰り道、もう二人は帰っちゃったかな、なんて考えていると、道路のすみに、見知った物が落ちていた。


「 あれはっ! 」


駆け寄って落ちている物を確認する。


「 こっ、これっ!陸にぃのカバン! 」


陸にぃのカバンが落ちている。落として行ったのかな?でもあの陸にぃがカバンほどの大きな物を落として、気づかないわけが無い。とりあえず、届けてあげないと。


ピーンポーン


「 陸のカバン?陸と風太はまだ帰ってきてないよ。でもそろそろ遅いから早く帰って来ないと。 」


「 えっ? 」


陸にぃが帰ってきていない?そんなはずない、だって陸にぃは俺よりも先に帰っていたんだから。何かおかしい。一体何がおこっているんだ?


「 空さん!確か陸にぃと風太にGPS渡してなかったっけ? 」


俺は覚えている。ちょうどこの前陸にぃと風太にGPSを渡していたことを。もしもの時のために、空さんと海さんが二人に渡していたことを。


「 確かに渡していたけど。 」


「 今すぐ確認してください! 」


「 あれっ?風太が持っているGPSは隣町にある。 」


隣町?どうしてそんなところに、そもそも子供で行ける場所じゃない。


「 空さん!今すぐ警察に連絡して!GPSがあるところの周辺に陸にぃと風太がいるかもしてない!探しに行こう! 」



GPSがあったところに行ったら。風太のカバンは知らない車の中にあった。警察と一緒にくまなく周りを探して、やっと怪しい場所を見つけた。中で声が聞こえる。鍵がかかっていたが、警察の皆さんが蹴破って中に入ると、そこには、大人の男達に囲まれている真ん中で倒れている風太と、壁際に血だらけで倒れたまま、風太に手を伸ばしている陸にぃがいた。



































































目を覚ましたら、病院にいた。何があったんだ?体を起こそうとする。


「 うっ! 」


体に電流が走るかのような痛みが襲う。


「 陸! 」


そばに空と海がいる。悲しそうな顔をしている。心配かけてごめんなさい。そう言いたかったが、体が痛くて声が出ない。


「 陸!まだ動いちゃダメ!骨が折れているから。 」


骨が折れている?壁に打ち付けられた時かな?


「 空、今は陸を休ませてあげよう。あんなことがあったんだ、頭の整理もしたいだろう。 」


「 そうだね、ごめんね陸。僕が混乱しちゃって、陸の方が混乱しているのに……。 」


そう言って、病室から出ていこうとする二人。


「 ……ま…………待っ………て、風……太、は? 」


俺は途切れ途切れに、風太のことを聞く。


「 安心して、風太は無事だよ。陸が守ってくれたから傷一つないよ。今は別の部屋で睡眠薬がきれるのを待っているよ。 」


そう言って部屋から出た。良かった。風太は無事だったんだ。ちゃんと守れて良かった。いや、あの時警察が来てくれなかったら、そんなことを考えると、そんなこと考えたくない!

それよりも、俺……ずっと震えてる。そういえば、俺の体は6歳なんだった。6歳でこんな経験、俺じゃなきゃやばかったな。


風太が産まれた時に自分の中で風太を必ず守るという決意をしたのに、俺……あの時……男達の視線が風太に向いたとき、俺……ほっとした、ほっとしたんだ。6歳だから仕方がないという思いもあったけど、命よりも大切にしたいと思った弟が危険にさらされそうになっていたのにほっとしてしまった。それが俺は許せなかった。


「 陸、風太が目を覚ましたよ。 」


空が風太を連れて部屋に入ってくる。


「 おにぃーちゃん!だいじょーぶっ?怪我沢山。ままから聞いたよ、僕のために怪我しちゃったのでしょう?ごめんなさい!僕のせいで怪我して、僕気づかなくってごめんなさいっ! 」


謝ることは無い。怪我は仕方がなかった。それに自分がしたくてしたんだ、風ちゃんのせいなんかじゃない。そう言いたかったが俺の口から出てきた言葉は、


「 だ……い………じょう…………ぶだ……よ。 」


だった。その時ガチャっと部屋のドアが開き、先生や看護師さんが入ってきた。


ビクッ


「 ………………? 」


なんだ?身体が急にっ、震えがっ、酷っ、くっ、

ガタガタガタガダガダガタガタガタガダガタガタガタガダガダガタガタガタ。


「 どうした?陸?大丈夫か?しっかり! 」


ガタガタガタガダガダガタガタガタ


「 雨月さん。少し……。 」


そう言って、海と先生と看護師さんが部屋から出ていった。すると次第に震えは治まってきた。しばらくすると、海が戻ってきた。


「 陸、落ち着いて聞いて、実は陸は大人恐怖症になっているみたいなんだ。あの事件で、トラウマを抱えているみたいで、このままだと、家族以外の人と会うと大変なことになるって。 」


大人恐怖症?なんだそれ?俺は元大人だぞ。


「 そこで大人に慣れるために、リハビリを受けたらいいって。 」


なるほどカウンセリングか、このままだと外にも出られない。仕方ない。


「 わかったよ。受けるよリハビリ。 」


こうして俺にはトラウマができた。



































事件の次の日、幼稚園では……。


「 なぁなぁ、今日は風太と秋斗、休みだってよ。 」


「 えーっ!陸の兄ちゃんも休みじゃん。 」


「 じゃあ、今日遊ぶっていう約束はー? 」


「 そりゃ、陸の兄ちゃん休みだからないだろ。 」


「 そんなー、楽しみにしてたのにー!! 」


「 じゃあ次来たら遊んでもらおうぜ! 」


「 うん!そうだね。あー、早く陸の兄ちゃん来ないかなー?遊ぶの楽しみだなー。」

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