-京都府警察本部地下二階-
私が現在いるのは、京都府警本庁の地下にある一般の方が立ち入ることができないフロアになります。
天井が高く照明も明るく暖色で、地下なのにあまり息苦しさは感じません。
とても気に入っている場所なのですが、ここにいられるのもあと数週間でしょう。
現在、鬼が大量に増加傾向にあり、現在の組織体系では対処が難しいと判断されました。
その為、明日鬼霊対策室の人員強化と組織内部の再編成に伴う会合が行われます。
それ以上の事は私も詳しくは把握していません。
私が所属する
専門の祓い屋による処理解決を行うことを目的とした、特殊機関となっています。
西方というのは、中部地方から沖縄までの、西日本地域の管理を担当しています。
東方は、逆に中部地方から北海道までの、東日本地域の管理となっています。
現在は、この双方の部署によって鬼障対策を行っています。ですが、これからは……
ガチャリと対策室の扉が開かれ、一名の対策員がが入って来ます。
「白井戻りました」
「おう」
「おかえりなさい」
白井さんが、警察庁から収集した西日本方面の事案の情報を精査し戻ってきました。
この方は対策室の中でもベテランで、いつもニコニコしている印象の方です。
情報収集の技術に長けており、代々受け継ぐ結界術の専門家でもあります。
守護結界や、鬼祓い時の人払いなどで活躍されています。
「濱元、儂と白井にお茶頼むわ」
「わかりました」
「濱元君ありがとう」いえいえ
「で、どうや白井。なんかおもろい事案あったか?」
天鳳室長は、現在西方鬼霊対策室の責任者であり、京都を代表する祓い屋一族の当主でもあります。
白井さんが自分のデスクにカバンを置き、中から資料を取り出して答えます。
「ええ、とてもめずらしい鬼障事案が一件ありましたよ」
「ん? 最近は鬼障ぐらいめずらしないやろ。なんや獄鬼でも出たか?」
室長が珍しそうに身を乗り出します。
「いや、鬼障案件でうちや東方が関わってないのに、もう既に解決済みになってたんですよ。めずらしくないですか?」
白井さんが、鞄から取り出した報告資料を室長のデスクに広げる。
私も話を聞きながら、天鳳室長のデスクへ二人分のお茶を置く。
デスクに置かれた報告書の表紙には既に解決処理済みの判が押されている事に気づきました。
「解決済みになってますね? 自然解決したって事ですか? もしくは未所属の祓い屋が関わったとか?」
「いや、私も最初はそう思ったんだけどね。報告書には祓い屋との情報は書いてないんだよ。一応元は祓い屋みたいな事をやっていた家系らしいけど、今はIT屋さんらしいよ、内容としては……」
今回の一件の報告書の内容を、簡単に説明してもらいました。
「ではその男性は、京都観光中に鴨川で鬼を発見して三条大橋から飛び降りたと?」
映画スターか何かですか? ジャッキーですか? そういえばここ数年ジャッキーチェン見ないですね。
「そうやね」白井さんが頷く。
「そして、溺れた要救助者を救助しながら憑依した鬼を、祓ったということですか?」
器用すぎませんか? なんでIT屋さんしてるんですか?
「でね、すごいのが報告書によると、男性と一緒に観光していた友人に対して鬼を食ったと言うたみたいなんですよ」