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111 子供達の夜

 その日の夜。あたしはサラとスイ、ロアと一緒に眠る。

 もちろんサラは自分の部屋をもらっているが、慣れるまでは一緒に寝ることになったのだ。

 今夜のダーウはあたしたちの足元で眠り、コルコは窓際、キャロはヘッドボードにいる。

「ルリア〜。ぎゅっとして欲しいのである」「りゃあ〜」

「どうした? スイちゃん、ロア、そんなに頭をこすりつけて」

 布団の中に入ると、スイとロアがあたしに抱きついて甘えてきた。

 あたしは、ぎゅっとスイの頭を抱きしめる。ロアのことも一緒に抱きしめた。

「いいこいいこ」

 サラもスイとロアのことを撫でてあげていた。  

「あんまり遊んでくれなかったから、スイはさみしいのである」

「作法の勉強がいそがしかったからなー」

「つまらないのである!」

 スイはあたしの近くで作法の勉強をみていたが、つまらなかったらしい。

「りゃむりゃむ」

「ロアもさみしかったかー」

 ロアはあたしの服の袖をハムハム噛んでいた。

「あたしが陛下にあうまでのしんぼうだ」

「むう〜。スイが陛下とやらをしばきまわしてやるのである!」「りゃむ?」

「だめだよ。とうさまのとうさまだからね?」

「む〜……」

 スイもロアもとても眠そうだ。

「ルリアちゃん、国王陛下は怖いってきいたよ」

「マリオンから?」

「んーん。男爵閣下から」

 サラは実の父のことを男爵閣下と呼んだ。

 きっと父と呼ぶことを許されていなかったのだ。

「あいつは、なんて言ってた?」

 サラを虐めて、マリオンに呪いをかけていた前男爵など、あいつで充分である。

「えっと、血も涙もない、れいこくひどうな王だって」

「ほーそうなんだ」

「…………怖い奴なのであるな? でもスイは強いから怖くないのであるが?」

 半分寝ながらスイはそういって、尻尾をもぞもぞ動かす。

 ロアはもう眠っていた。あたしの袖を咥えながら寝息を立てていた。

「大貴族でも王族でも、さからったらひどいめにあうって」

「……王族ってルリアもであるな? 大丈夫であるか?」

「ルリアは孫だけど……王族かな?」

 確か父は臣籍に降下したと聞いた気がする。

 でも、父も兄も、それに姉とあたしもかなり高位の王位継承順位を持っているらしい。

 継承順位は高いのに、臣籍。難しい問題だ。

「国王陛下は家族でもようしゃないらしいよ?」

 サラは意外と詳しかった。

 きっと、男爵はしばしば王について語っていたのだろう。

「むむ〜。やっぱりスイが……なんとかするのである……すぅ……」

 語りながらスイは寝落ちした。

 そんなスイのことを撫でながら、あたしは尋ねる。

「しょばつされた逆らった貴族ってなにしたの?」

「獣人をどれいにしたらしいよ? それぐらいでばっするとか良識がないっていってた」

「…………ん? 他にはなにかいってた?」

 すこし風向きがおかしくなってきた。

「えっと、たみと貴族はちがうのに、貴族をたみとおなじように処罰するって」

「だかられいこくなの?」

「男爵閣下はそういってた。遊びで民を殺した程度で縛り首するなんてなんて非道すぎるとか」

「………………それは別に非道ではないのでは?」

 あたしがそういうと、サラは頷いた。

 スイは完全に眠っていた。とても寝顔がかわいいので、サラと一緒に頭を撫でる。

「ママも国王陛下じゃなかったら、こんなにあっさり、みとめられなかったかもって」

「サラがだんしゃくをつぐこと?」

「そう」

 あたしはともかく、サラが王宮に出向くのは男爵位の継承についてだ。

「そんなに、怖くなさそうだな?」

「わかんない。だけど、きびしい方なのは間違いないって」

 あまり油断はできないが、恐れすぎる必要はないかもしれない。

「ルリアちゃん、大丈夫? つらくない?」

「ん? さほうのおべんきょう?」

「そう。おばさまもきびしいし……」

「そうかな? そんなに厳しくないかも?」

 あたしは褒められることの方が多い気がした。

「それにけっこうたのしいかも」

「そうなの?」

「うん! なんでも新しくしれるのは、楽しいな」

「そっか、ルリアちゃん、すごいね」

 そんなことを話ながら。あたしとサラは眠ったのだった。

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