目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第15話 次は私の番

 司会の声に、会場は大盛り上がりだ。

 二位の候補者の後、雛乃ちゃんがトロフィーを貰う。そして彼女が椅子に向かう時、私と視線が合う。私は「おめでとう」の気持ちを込めて微笑むと、彼女もまだぎこちなさはあるが、笑みを返してくれた。

 そんな私たちのやり取りを司会も、観客も、真くんも見ていて、会場にほんわかとした空気が流れた事に私は気づいていなかったが。


 彼女が席へ座ると、次は私の番だった。


「さて、今年のミスコンは、華の姫が三冠を達成いたしました! 素晴らしい快挙です! ですが……皆様! 今年のミスターにも注目してくださいね〜? 学園で人気を二分する白の王子と黒の王子……二人は一年生、二年生のミスターコンでは同率一位でした! 皆さんも、この二年間『えー!』と驚いてきたのを覚えておりますか?」


 司会の声に、観客全員が頷いたような気がした。


「で、す、が! みなさん、今日は必見ですよ! 今年は、な、なんと! 同率ではありませんでした!!」


 司会の言葉に観客からも声が上がる。今や会場の盛り上がりは最高潮に達した。

 私は今、人生で一番緊張している気がする……いや、気のせいではないな。緊張している。


 同率ではない……つまり、一位がいるという事なのだ。

 手足が小刻みに震える。情けないが、結果を知るのが怖いのだ。


 私は大きく息を吸って、ゆっくり吐き出した。


 大丈夫だ。

 雛乃ちゃんの隣に立つために――やるだけの事はやってきたのだから。


「ミスと同様に、一位の方にはこちらの王冠を頭に乗せます! みんな〜、準備はいいかぁ〜?!」


 大歓声だ。

 その声で後ろに誰かが立ったような気がした。チラリと見れば、運営の人が王冠を持って私と真くんの後ろにいる。

 震えている私とは対照的に、真くんは鼻歌を歌っている。やはり正反対……黒と白に例えた人は、その観察力が凄いと思った。


 太鼓の音が周囲に響き始めた。


 王冠を持っている方が私たちの後ろを行き来している気配を感じられる。皆が王冠の行方に注目しているため、会場には太鼓の音だけが鳴り響く。

 皆が固唾を飲んで王冠の行方を見守っていた。


 先程雛乃ちゃんの発表の時には短く感じられた音が、今は永遠と続くように感じていたが……太鼓の音にも終わりはきた。

 最後に勢いよく鳴らされた太鼓の音。それと同時に司会は声を上げた。


「さて! 栄冠を掴むのは〜、どちらだっ!」


 その言葉と同時に、王冠を持った人が私と真くんの間に立った。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?