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悪役令嬢に転生したら言葉の通じない隣国の王子様に好かれました…
悪役令嬢に転生したら言葉の通じない隣国の王子様に好かれました…
市瀬夜都
異世界恋愛悪役令嬢
2025年06月12日
公開日
2万字
連載中
公爵令嬢、イリス・アルクアン・シエルは自らが前世でプレイしていた乙女ゲームの悪役令嬢であることをシナリオスタートの時点で思い出すことになる。 悪役令嬢のお約束である破滅を望まないイリスはヒロインに優しくしてなんとかフラグから回避をするべく敵対せず、大人しく、かつ当たり障りなく過ごしていた。 そんな中、突然語学留学生としてやってきた隠れ攻略キャラクターの美形な隣国の王子様は何故か悪役令嬢の私を気に入って──!? 国を隔てる言語の壁に私は戸惑うばかり!王子の話す言葉が理解出来ないほんのちょっぴりおバカな悪役令嬢と通じなくてもグイグイ話しかける隣国の王子様と陰謀愛憎渦巻くラブコメディ!

00 隠しキャライベントは突然に


「本日より、隣国のウィスタリア王国から語学留学として第二王子であらせられるウィリアム・ルノール・ウィスタリア殿下がこのクラスに転入します。これから我が国の言語を学ばれるのでお話が上手くできずとも失礼のないように。我がオルドローズとの国交問題になるやもしれません、そして不敬罪にあたりますのでくれぐれもよろしくお願いします皆様。」


担任教師の緊張した面持ちと声色がその事の重大さを語っている。

そんな担任の隣に並ぶ紅紫の髪の青年はどこか見覚えのある品の良い微笑を浮かべながら、クラスを見渡して担任が話終えるのを待っているようだった。


───私、イリス・アルクアン・シエルはこの状況に酷く頭を抱えていた。


とうとう隠しキャラまで引き当てたよヒロイン!!!


えー、状況を最初からお話しましょう。

私、イリス・アルクアン・シエルはオルドローズ王国のアルクアン・シエル公爵家の娘として生まれ────そして同時に、乙女ゲーム『七色の花姫』における悪役当て馬令嬢なのです。

それはもう典型的なヒロインの邪魔をするためだけに生まれてきた、わがままで子供っぽくヒロインに嫌がらせをしまくり断罪───がお約束の破滅キャラクターに私が転生してしまったんです。

私という元一般人の意識が覚醒したのはなんと、ゲーム開始直前の入学式。

これは幸運な事だと共にいる侍女にすら心配される程、それはそれは淑やかに目立たぬ様に生活した。

出来るだけヒロインであるリナリアを遠ざけ、避ける勢いで関わらないようにして取り巻きに誘導されてもいじめないように立ち回って来た並々ならぬ努力のおかげで、今のところは断罪イベントの影は薄い。

しかしそんな努力もなんのことやらと、ヒロインは色々とフラフラして頂いちゃって誰かひとりに絞らずに時間は経ち、果てには隠しキャラのウィリアム王子ご登場というところにまで来てしまった。

普通に誰か一人を攻略していれば登場はまず無いキャラクターな為か、国規模で波乱を起こす火種と言ってもおかしくないキャラなのである。

ちなみに彼を攻略し損ねるバットエンドでは我がオルドローズ王国は滅びます。


…………なんということでしょう!!!!


私の破滅云々うんぬんなんて言っている場合では無いのではないだろうか。

もちろん、今からでも他のキャラクターを攻略することは可能だけれど彼が登場した時点で火種は既に投げられているのです。

燃え上がるか否かは彼の好感度にかかっている、というかヒロインが全く好かれないアウトオブ眼中であればそのままフェードアウトして貰えるし、好かれてしまったらとことん攻略して頂かねば国が滅ぶ。

完全にリナリアという一人の少女にこの国の命運がかかっている。


……ん?王子なにやら私の方を指差して担任に何か言っているような…。


担任がそれに頷くとこちらを向いた担任と目が合う。

なんだか生暖かい視線を送られると手招かれたので教壇へ歩いていくと、申し訳なさそうな声で担任は言った。


「イリス様、突然の事で大変申し訳ないのですが…ウィリアム殿下が留学中、貴女と行動を共にしたいと仰っています」


「…………………………はい?」


「席も隣を希望されているので空いている席に席替えして頂くことになるかと……」


「え……あの………言葉…通じないんですのよね…?」


「ほんの少し、カタコト程度でならお話出来るみたいなんですけど…」


「よろ、しくネ?」


カタコトながらそう言って圧倒的なまでに綺麗な笑顔で手を差し出されてしまっては断れない。


「よ、よろしくお願いしますわ……」



私が一生懸命回避したはずだった悪役令嬢生活、スタートのようです……。



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