目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報
もう愛なんて信じない私に、御曹司の懺悔~ごめんなさい、私は子供と幸せになります~
もう愛なんて信じない私に、御曹司の懺悔~ごめんなさい、私は子供と幸せになります~
ココアのココア
恋愛現代恋愛
2025年06月13日
公開日
5.1万字
連載中
佳夢は古川理を二度救った。 一度は炎の中から背負い出し、一度は白血病を治すための骨髄を提供した。 それなのに返ってきたのは「お前を地獄より酷い目に遭わせる」という言葉だった。 理は佳夢が自分の最愛の人を殺したと誤解し、彼女が産んだ自閉症の息子を憎み、「古川家の妻」の座に居座ると罵った。 彼女が高層ビルから身を投げた瞬間、ようやく気づいた――生涯で最も愛したのは、実は彼女だったと。 生まれ変わった佳夢は名前と顔を変え、次々と男性が彼女を追いかける。 そんな中、古川理は人前で片膝をつき、彼女足先に唇を押し当てた…

第1話 お前が彼女を殺した


夜。土砂降りの雨。

江藤雨澄あめすみが死んだ。

古川佳梦カモンの目の前で。

雨が江藤雨澄の血まみれの体を洗い流し、辺り一面を真っ赤に染める。

黒い車が止まり、古川理が駆け寄ると、佳梦の首を強く締め上げた。


「お前が殺したのか!」

「違う、私じゃない…私が着いた時には、もう江藤は息絶えていたの…」

「言い訳するな!お前は前から彼女を心底恨んでいたんだろうが!」

「江藤の方から私を呼び出したの。着いたら、もう地面に倒れてる彼女が目に入っただけ!」

だが古川理は信じない。


その深い眼差しには陰険な光が宿っていた。

「佳梦…必ずお前を生き地獄にしてやる…雨澄の霊を慰めるために!」

佳梦は絶望的に眼前の美しい男を見つめた。


彼女こそが古川理の妻なのに、彼の心に触れたことは一度もなかった。

彼が心から愛していたのは幼なじみの江藤雨澄。その想いは、一片たりとも彼女に向けられたことはない。


四年前、理が白血病を患った時、佳梦の血液型と骨髄は彼にぴったり適合し、命を救えた。

古川家は彼女と条件を交わしたが、彼女は何も求めず、ただ彼と結婚することだけを選んだ。

佳梦は願い通り古川家の奥様となることができた。理の病気もまた回復した。


「バシッ!」


—重い平手打ちが佳梦の頬に浴びせられ、口元から血がにじみ出て地面に倒れた。


「雨澄がようやく昨日、妊娠したと教えてくれたばかりだ…それなのに今日、お前は手をかけた」

理の全身から冷たい気配が立ち込めている。

「佳梦…血の借りは血で返してもらうぞ!」


彼女は愕然として彼を見つめた。

「どうして…どうして彼女が妊娠したの?…古川理、私は一体何なの!古川啓人は何なの!」


古川啓人は彼女と理の息子だ。


あの年、理に輸血しすぎたため、佳梦の体は妊娠に適さず、無理に出産すれば命の危険があった。

それでも彼女は並大抵ではない苦痛に耐え、啓人を産んだ。

理は自分を気遣ってくれると思ったのに、彼は佳梦が子供で自分を縛ろうとしただけだと考え、それ以来、一度も啓人を抱こうとしなかった。


父子の情は冷め切っていた。

啓人はそのため自閉症を患っていた。


「お前たち?雨澄の靴を拭く価値もない!」理の薄い唇がわずかに動き、残酷な言葉を吐く。「者ども!彼女を女子刑務所に放り込め!」

「承知いたしました!社長!」


二人の護衛が佳梦を引きずっていく中、理は腰をかがめ、江藤雨澄のそばにしゃがみ込んだ。ハンカチを取り出し、彼女の顔についた雨粒を丁寧に拭い、半開きだった瞼を閉じ、そして慎重に抱き上げた。


まるで宝物のように。

その光景が古川佳梦の目を刺し、心が灰のようになる。

彼をこんなに長く愛してきたことが、いったい何だったのか。

誰も気づかなかった。路地裏にある人物が全てを静かに見つめ、ひそかに喜んでいることを。

彼女が江藤雨澄を殺し、佳梦に罪を着せたのだ…ならば…

古川理は自分のものになる!

何しろ彼女は江藤雨澄の双子の妹、瓜二つの顔を持っているのだから!



女子刑務所。

看守が彼女を監房に押し込み、だらりとした口調で言った。

「お前たち、新人をしっかり歓迎してやれよ」


佳梦が顔を上げると、周囲を取り囲む女たちがいた。


「来ないで…」

彼女は恐怖を抑え込んで言った。

「あんたたち…何をするつもりなの!」


「さっき親分から言われただろ?ちゃんと言うこと聞かなくちゃな」

先頭の女が指を鳴らしながら言った。

「このお姫様みたいな顔つき、お見事だなあ!」


佳梦は逃げようとしたが、監房の扉は固く閉ざされ、彼女は声を張り上げて助けを求めるしかなかった。

「叫べよ、いくら叫んでも助けは来ないさ」


彼女は平静を装って言った。

「私が誰か分かっているの?私は古川家の奥様よ!」

理がどんなに彼女を憎んでも、こんな女たちに手を下させるはずがない。彼は強引で横暴な男だ。殺すにせよ切り刻むにせよ、自分でやるはずだ。


「ハハハハハ…」予想に反し、女たちは一斉に笑い出した。

「古川家だって?今日ぶん殴るのはお前という古川奥様だぜ!」



この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?