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追放殿下は隣国で、セカンドライフをおくります! 〜良い人過ぎてセルフ追放。だけど良い人だったので、ケモミミもふっ子と楽し
追放殿下は隣国で、セカンドライフをおくります! 〜良い人過ぎてセルフ追放。だけど良い人だったので、ケモミミもふっ子と楽し
野菜ばたけ
異世界ファンタジースローライフ
2025年06月13日
公開日
1.3万字
連載中
「いっその事、私を『ただの平民』にしていただきたい」  婚約者の不正を告発した王太子の俺・アルドは、逆に悪者呼ばわりされた挙句に臣籍降下を言い渡された。  だから「飼い殺しにされるくらいなら」と思い、敢えてそう申し出たのだ。  ――せっかく自由の身になったんだし、これからは自分のやりたい事をやろう。  そう思い立ち、目指す事にしたのは多種族国家・ノーラリア。  道中の馬車で平民と『今まで史上最も近い距離での交流』を果たしつつ進む旅は、意外と楽しいものだった。  そんな旅も、魔物襲撃からたまたま助けたキツネの獣人少女・クイナをお供に加えたところで、更に賑やかになっていき――?  たまには予期せぬトラブルに見舞われる事もあるけど、笑い合えば100万馬力。  きっとコイツと一緒なら『ずっとやりたかった事』を達成していくセカンドライフも、楽しくなる事間違いなし! ※第1,2話はストレス展開ですが、あとはほぼ平和です。 ※閑話である『一方その頃~』には一部、軽い「ざまぁ」要素が含まれます。

プロローグ



 獣人少女のモッフモフなキツネ尻尾が、すぐ目の前でパタンコパタンコと揺れている。


 背中で分かるご機嫌さだ。

 しかし俺はそんな彼女に、思わず苦笑してしまった。



 今はたまたま二人だけだが、乗っているのは乗合馬車。

 きっと次の停留所からは人が乗ってくるだろう。


 この国には『人族ひとぞく以外の入国禁止』という法律がある、この子が見つかるのはマズい。

 だというのに、危機意識が足りなさすぎる。

 「よくもまぁこれで、昨日までたった一人で生き延びてこられたものだ」と逆に感心してしまうレベルだ。


「おーいクイナー? ごきげんなのは良い事だけどな、周りの目も一応気にしろよー? もし悪いヤツに見つかったら、お前のお母さんが言ってた通りぞ?」


 本当はそんな事なんてあり得ない。

 だけどこれは獣人の彼女を魔の手から護るために母がいた、愛の籠った優しい嘘だ。



 それを借りて俺が言うと、背中越しにその小さな肩と黄金色の耳としっぽが揃ってビクンと飛び跳ねた。


 俺が昨日買ってやったばかりの可愛らしい赤コート。

 そのフードを慌てて被り込んだ彼女は、俺の言葉を微塵も疑ってないようだ。


 その純粋さと慌て加減が妙に可愛らしくって、俺は思わずフードの上からその頭をクシャリと撫でた。

 するとその重みと乱暴さに、なのだろうか。

 薄紫の、抗議の瞳が向けられる。



 王太子だった俺がその地位を追われたのが、僅か5日前の事。

 その後ひょんな事からクイナという旅のお供が加わって、今は2人、それぞれに秘密を抱えながらも割と気ままで楽しい旅をしている。


 その辺の細かい経緯を話すとなると、ちょっとばかし長くなる。

 が、まずはそこから話さなければ、この物語はきっと始まる事さえ出来ない。



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