そのたびに喧嘩になる。
けれど喧嘩のあとには決まってユキナが泣いて「ごめんね」と謝ってきた。
そしてレンはいつもその涙に負けて優しく抱きしめた。
「好きなんだよ。ほんとに、大切なんだ」
そう言うとユキナは決まって顔をくしゃくしゃにして泣きながら笑った。
そんな日々を重ねて交際はあっという間に二年目を迎え
レンの転勤をきっかけにふたりは同棲を始めた。
小さなマンションの一室。
家具を一緒に選んだり、休日にカーテンをつけたりする時間はまるで新婚生活のようだった。
朝はレンの出勤を見送って、夜は一緒に晩ごはんを食べて、映画を観て眠る。
小さな幸せがそこには確かにあった。
ユキナはよく「早く子どもが欲しいな」と言っていた。
「女の子だったら付けたい名前があるの」
「男の子ならレンに似てたらいいな」
レンは照れながらも頷いて、そんな未来を想像することが多くなった。