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第12話 静岡ダンジョン祭り、トーナメント戦


 僕リオン、ミリア、マナミの三人は、祭りの目玉イベントであるダンジョン内トーナメントに参加するため、日本平ダンジョンに集まっていた。

 トーナメントは三階西地区で行われ、配信者としての人気と実力を競うものだ。

 もちろん、一攫千金のディメンジョン・イーターが出てくることを期待しての場所指定でもあるが、これは難しいだろう。

 僕は革鎧に魔鉄のショートソードを手に、ドローンを浮かべて準備を進める。


「よし、今日のトーナメント、気合入れるぞ! でも、まず大事なこと……チーム名、決めなきゃ!」


 ミリアが少し緊張した顔で提案する。


「リオンさん、チーム名、なんかカッコいいのがいいですよね?」

「うん、絶対カッコいいのにしよう! マナミ、なんかアイデアある?」


 マナミがマジック・バッグを肩にかけ、目をキラキラさせて言う。


「お兄ちゃん、星とか輝く感じはどう? なんか、冒険っぽくて、配信映えしそう!」

「星か、いいね! じゃあ……『スターライト』はどう? 輝く星みたいに、ダンジョンで目立っちゃおう!」

「スターライト、素敵です! 私、気に入りました!」

「よーし、決定! チーム『スターライト』、これからバッチリ冒険していくよ!」


 ミリアが頷く。マナミも同意する。

 三人で拳を合わせ、気合を入れる。僕はカメラに向かって笑顔で宣言する。


「はーい、リオンのダンジョン配信、今日は静岡ダンジョン祭りの特別編! チーム名が決まったよ。『スターライト』です! ミリアちゃんとマナミと一緒にトーナメントに挑戦だよー。みんな、応援してね!」

『スターライト、めっちゃいい名前!』

『リオンちゃん、今日もかわいい!』

『トーナメント、ぶちかませー!』

『ミリアちゃん、マナミちゃん、がんば!』


 コメント欄が一気に盛り上がる。

 そこへ、派手な青い革鎧の女性が近づいてくる。

 サキ、チーム「ブルーファング」のリーダーだ。金髪をなびかせ、ミスリウムのダガーを腰に差した彼女は、自信満々の笑みを浮かべている。後ろには、青い装備の仲間二人が控える。


「へえ、リオン、チーム名なんて可愛い感じにしたんだ? でも、トーナメントじゃ視聴者数でガチ勝負だよ。負けて泣かないでね?」


 僕のメガネ型端末に、サキの配信チャンネルの視聴者数が映る。五千人超え。リオンのチャンネルは三千人ちょっと。サキの派手なパフォーマンスは確かに人気だ。


「ふふ、サキさん、視聴者数は勝負じゃないよ。ダンジョンでどれだけカッコよく戦えるか、でしょ? スターライト、絶対目立っちゃうから!」

『リオンちゃん、強気!』

『サキvsリオン、激アツ!』

『ブルーファング、派手すぎw』


 トーナメントのルールは、三階西地区のエリアで、制限時間内に倒したモンスターの魔石の数を競うもの。

 スターライトとブルーファングは同時スタートで別ルートを進む。

 僕たちはマジック・バッグを活用し、魔石と素材を効率よく集める作戦だ。


「スターライト、行くぞ!」


 ダンジョン三階西地区。ヒカリゴケの薄暗い光の中、ドローンのカメラが三人を追いかける。

 僕が先頭、ミリアが剣を構えて横に立ち、マナミが後ろでマジック・バッグを管理。

 ブラック・マウスの群れが現れる。


「ミリアちゃん、右から! 僕、左を抑える!」


 僕がショートソードを振り、ブラック・マウスを一匹仕留める。

 魔石をサクッと回収。ミリアも剣を振り下ろし、一撃で倒す。


「リオンさん、魔石、こっち!」


 マナミがマジック・バッグを開き、魔石を次々と放り込む。視聴者コメントが熱を帯びる。


『スターライト、動きバッチリ!』

『マナミちゃん、荷物係なのに目立ってるw』

『ミリアちゃん、剣さばきキレッキレ!』


 一方、ブルーファングはサキのミスリウム・ダガーが光を放ち、ハイシープを瞬時に切り裂く。炎や雷のエフェクトを多用した配信で、視聴者数が伸びていく。


「リオン、置いてかれないように頑張んなよー!」


 サキの挑発がドローン越しに聞こえる。僕はカメラにウィンク。


「サキさん、派手なのはいいけど、魔石の数で負けないよ! スターライト、応援して!」


 両チームはモンスターを倒し続ける。

 スターライトは僕の機転でブラック・マウスの群れを狭い通路に誘導し、一網打尽。

 ミリアが新技のファイアボルトを放ち、炎の弾丸が敵を焼き払う。

 そう、ミリアには魔法使いとしての才能もあったのだ。

 斎木さんはもっぱら身体強化を使っていた。あれも一種の魔法なので、血筋なのかもしれない。


「ミリアちゃん、ファイアボルト最高! めっちゃ映える!」

『ミリアちゃん、魔法カッコいい!』

『スターライト、チームワークやばい!』

『ファイアボルト、配信映えバッチリ!』


 マナミが魔石を詰め込みながら叫ぶ。


「お兄ちゃん、ミリアちゃん、めっちゃカッコいい! この調子なら勝てる!」


 終盤、キングオーガの重い足音が響く。ブロンズ級には厳しい相手だが、僕は目を光らせる。


「ミリアちゃん、マナミ、準備! マジック・バッグ、フル活用するよ!」


 僕はバッグから中級治療ポーションを取り出し、飲んで準備。

 ミリアのファイアボルトがキングオーガの動きを止め、僕が剣で弱点を突く。

 マナミはポーションをスタンバイ。僕が剣を振り下ろし、キングオーガが倒れる。


「やった!」


 魔石を回収し、視聴者が大盛り上がり。


『キングオーガ撃破!』

『リオンちゃん、ブロンズなのにすげえ!』

『スターライト、優勝狙える!』


 時間切れの合図。

 スターライトは魔石三十個、ブルーファングは三十五個で僅差の敗北だが、視聴者数はスターライトが上回る。サキが悔しそうに近づく。


「チッ、リオン、視聴者数で負けたか。次は絶対勝つから!」

「サキさん、いつでも受けて立つよ! でも、今日、ちょっと楽しかったよね?」


 サキが微かに笑う。


「まぁ、悪くなかった。次はもっと派手にいくよ!」

『リオンちゃん、サキちゃん、最高!』

『スターライト、ブルーファング、共闘希望!』

『次も見たい!』


 休憩も兼ねて一度ダンジョン村に顔を出した。

 ここも配信映像がディスプレイに写っていて、何人もの冒険者が見学していた。


「リオンさん、兄は、こんな祭り好きだったかな……」

「斎木さん、きっと見ててくれるよ。スターライト、もっと強くなって、斎木さんの分まで冒険する!」


 僕がミリアの肩を叩く。

 マナミがダンジョン村でトカゲ丼を頬張り笑う。


「お兄ちゃん、ミリアちゃん、明日も配信するよね? ポーター、がんばるよ!」

「みんな、明日もスターライトの冒険、楽しんで! 目指せ、シルバー級!」


 僕がカメラにウィンクする。

 コメントが『スターライト最高!』で埋まり、祭りの喧騒の中、チームの絆が深まった。


 こうして静岡ダンジョン祭り、トーナメントは幕を閉じた。


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