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第16話 戦利品の輝き


「はーい、リオンのダンジョン配信、ディメンジョン・イーター戦のクライマックス! チーム『スターライト』と『ブルーファング』の共闘で、レアモンスターの群れをガンガン倒すよ! みんな、最後まで応援してね!」


 ドローンが捉える洞窟内の激戦。ヒカリゴケの光の中、僕リオンとミリアがディメンジョン・イーターの群れに立ち向かい、サキのブルーファングが派手な攻撃で援護する。

 僕のショートソードが白いネズミを切り裂き、ミリアのファイアボルトが炎の弾丸で群れを焼き払う。

 マナミはたまにポーションを取り出しつつ、マジック・バッグに毛皮と魔石を次々と放り込む。


『スターライトとブルーファング、めっちゃ熱い!』

『リオンちゃん、剣技キレッキレ!』

『ミリアちゃんのファイアボルト、連発やばい!』

「リオンさん、残り五匹です!」


 ミリアが息を切らしながら叫ぶ。彼女のファイアボルトがディメンジョン・イーターを一匹仕留めるたび、視聴者コメントが『ミリアちゃん最高!』で埋まる。


「ミリアちゃん、すごいよ! マナミ、毛皮ちゃんと集めて!」

「お兄ちゃん、めっちゃ集まってるよ! これ、超お金持ちじゃん!」


 あわあわとマナミが毛皮を剥いでは収納していく。

 配信に映るマナミのコミカルな動きが視聴者を沸かせ、スパチャが急上昇。

 スターライトのスパチャ金額は百万ptに迫る。一方、サキのブルーファングは視聴者数九千人、スパチャ百五十万ptとリードを保つが、スターライトの勢いも負けていない。

 サキがダガーを振り回しながら叫ぶ。


「リオン、なかなかやるじゃん! でも、私の配信のほうが目立ってるよ!」

「サキさん、視聴者数は負けてるけど、スターライトのチームワークは負けないよ!」


 僕がカメラに再びウィンク。

 視聴者コメントが『リオンちゃん、強気!』『共闘最高!』で盛り上がる。

 ディメンジョン・イーターの群れは残り三匹。僕とミリアが連携し、ファイアボルトで一匹を焼き、僕が剣で一匹を仕留める。

 サキが最後のディメンジョン・イーターにダガーを突き刺し、派手な雷エフェクトでトドメ。

 戦利品の毛皮は山分けで、スターライトとブルーファングがそれぞれ五匹分のマジック・バッグ素材を確保。


「やったー! ミリアちゃん、サキさん、ナイス!」


 僕がハイタッチを求める。ミリアが照れながら手を合わせ、サキもニヤリと笑って応じる。


「リオン、悪くない戦いだったよ。視聴者もめっちゃ盛り上がってる!」


 視聴者コメントが爆発。


『リオン&サキの共闘キター!』

『スターライト、ブルーファング、どっちも最高!』

『マジック・バッグ素材ゲット! お金持ち確定!』


 ダンジョン村に戻り、ギルド亭で戦利品を整理。ディメンジョン・イーターの毛皮は一匹当たり前回は七百万DP相当だったが、スターライトはマジック・バッグをもう一つ作るか、売却するか検討中だ。

 マナミが興奮気味に言う。


「お兄ちゃん、これ売ったら大金持ちだよ! 新しい鎧買っちゃおう!」

「うん、マナミ、でもマジック・バッグもう一つも魅力的だよね。ミリアちゃん、どう思う?」

「リオンさん、私……兄の装備を揃えたいなって。売却して、ミスリウムの剣とか欲しいです」


 ミリアの言葉に、僕は頷く。


「ミリアちゃんの兄貴、斎木さんの遺志だね。よし、一つだけバッグにしたら、残りは売却して装備強化しよう! 視聴者のみんな、どう思う?」

『ミリアちゃんの想い、応援する!』

『ミスリウム・ソード、絶対カッコいい!』

『スターライト、もっと強くなれ!』


 配信を締めくくり、三人でトカゲ丼を食べながら休息。

 僕は思う。斎木さん、ミリアちゃんのファイアボルトと剣技、めっちゃカッコよかったよ。

 僕たち、もっと強くなって、斎木さんの誇りを守るよ!


 日本平支部へと戻ってくる。

 さて、どうしようか。

 僕たちが贔屓にしているのは、マジシャンズ・ハンドという地元の老舗企業だ。中小企業ながら一流ブランドだった。主に革製品を得意としているけれど、それに限らず鎧とかも作っている。

 ブルーファングはマギテック・アイテムズというダンジョン会社、DG会社にマジック・バッグの製造を委託するんだって。

 マギテック・アイテムズはここ五年で急成長した大企業マギテック・グループの子会社で、全国展開しており、近年よく名前を聞く。

 ダンジョンに関する装備はなんでも貪欲に作る総合製作会社で、冒険者で知らない人はない。

 斎木さんの実家の町工場は昔、マギテックが主要取引先だったらしいのだけど、取引を切られてしまい、会社を畳んだ直接的な原因になった相手企業でもある。

 だから僕たちにとっては、ちょっと因縁深いのだ。


「今回もマジシャンズ・ハンドに委託するけど、いいよね」

「うん。マギテック・アイテムズはちょっとね、色々あって、あはは」


 ミリアが珍しく苦い顔をする。

 そりゃあね、実家のご両親が失業した直接的原因でもある。

 当時、設備投資などの援助をマギテックに申しこんだものの、ナシのつぶてで、容赦なく契約を切られたという話で、その対応は相当冷たかったそうだ。

 もっと安い商品などはマギテック・アイテムズ製のものも、僕たちは普通に使っているけれど、オーダーメードともなると、さすがに遠慮したい。


 残りは売却したんだけど、静岡支部全体で一度に十個以上という数で、ほかのパーティーも何匹か狩ることに成功したのだそうだ。

 そのため相場が一時的に下落してしまい、今は七百万DPから五百万へと評価額が下がっていた。

 欲しい人は今が買い時だろう。

 売る側としては、ちょっともったいないが、相場が今後戻るか、さらに安くなるかは分からないという。


「少し安くなってしまいますが……しかたがないかと」

「マリコさん、残りは売却で」

「分かりました。それで、それで、この機会に保険とかどうです?」

「保険?」

「はい」


 月に二万DPの生命保険だ。死亡率が高いので、値段も高い。

 そのかわりケガや死亡時の支払金も高い。ケガなんか上限無制限だ。

 昔と違い、ある程度は魔法薬ポーションでなんとかなるとはいえ、やはり保険に入るか。


「ご契約、ありがとうございます」


 ということで僕たちは保険に加入した。

 それから、こちらも保険という意味で上級ポーションも一本お買い上げしておいた。

 誰が言い出したか「持ってて、よかった非常用」という言葉もある。


 ミスリウム・ソードも購入して、ほくほくだった。


「兄と同じのじゃないけど」

「あれはなんか、特別製で三倍以上するんだもん」

「だよね、あはは」


 三人分。ミスリウム合金製のミスリウム・ソードだ。

 ショートソードで、合金製は純ミスリウム製よりずっと安い。

 丸子魔法鉄工所の看板商品である。

 ここも地元企業で、魔法金属に精通している。


「えへへ、ミスリウム・ソード」

「レオンさん、いひひ」

「私のも! お兄ちゃん、ありがとう!」


 三人でお店で剣を掲げる。

 シルバーに輝く、ミスリウムの輝きは合金でも、綺麗だった。


「ミスリウムのブレストプレートも」

「うんうん」

「できるの楽しみ! お兄ちゃん、うれしい」

「女性用はオーダーメードだってさ」


 オーガ革の鎧をベースに特に胸部分だけミスリウムを使って強化してある。

 マジシャンズ・ハンドと丸子魔法鉄工所の合同防具ブランド「バトル・ジャーニー」シリーズだった。

 こうして僕たちは装備を強化したのだった。


 斎木さん、僕たち、もっともっと強くなって見せるね!


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