「はーい、リオンのダンジョン配信、今日も絶好調でスタート! チーム『スターライト』、ミリアちゃんとマナミと一緒に、日本平ダンジョン三階西地区の奥に突入だよー! みんな、応援よろしくね!」
ドローンがヒカリゴケの薄暗い光に照らされた洞窟を飛び、僕リオン、ミリア、マナミの三人を映し出す。
僕のオーガ革鎧の確かな存在感が心強い、魔鉄のショートソードが準備万端。
ミリアはファイアボルトの魔力を溜め、ショートソードを握りしめる。
マナミはマジック・バッグを肩にかけ、ポーションと素材回収の準備を整えている。
視聴者コメントが早くも盛り上がりを見せていた。
『スターライト、今日もかわいい!』
『ライバルのサキちゃんと共同配信!? 激アツ!』
『ミリアちゃん、ファイアボルト連発頼む!』
「リオンさん、サキさんたちと一緒に戦うなんて、ちょっと緊張します……」
ミリアが少し不安そうに言う。彼女のファイアボルトと剣技が前回の配信でバズり、視聴者からの期待が高まっている。
「大丈夫、ミリアちゃん! サキさんたちも強いけど、スターライトのチームワークは負けないよ! マナミ、荷物管理バッチリ?」
「お兄ちゃん、いつでもOK! ポーションもガッツリ持ってるよ!」
マナミがマジック・バッグを叩いてニヤリと笑う。
ダンジョン三階西地区の奥は、モンスターの出現率が高い危険エリア。
いわゆる東地区方面とは反対側だ。
僕たちの近くでは、サキのブルーファングも配信を始めていた。
サキの派手な青い革鎧とミスリウムのダガーが光り、彼女の仲間二人が雷と氷の魔法で援護する姿がドローン越しに見える。
ルナさんと、サキさんの彼氏トオルさんだ。珍しく、二人とも魔法中心の戦闘スタイルをもつ異例のパーティーだった。
冒険者のほとんどは剣士なので、魔法使いは少ない。
身体強化を使える人はそこそこいるもののの、魔法は希少なのだ。
そんな魔法使いを二人も抱えていて、サキ本人も補助魔法を使えるという。
サキが僕に近づき、ニヤッと笑う。
「リオン、私の視聴者、八千人超えてるから、置いてかれないように頑張ってよ!」
「サキさん、視聴者数は負けてるけど、スターライトの配信は心で勝負! めっちゃ盛り上げるよ!」
視聴者コメントが一気に加速。
『リオンちゃんvsサキちゃん、共同配信キター!』
『スターライトとブルーファング、夢のコラボ!』
『ミリアちゃん、マナミちゃん、ガンバ!』
両チームは並んで進む。通路は狭く、ヒカリゴケの光もまばら。
モンスターの気配が濃厚に漂う中、突然、甲高い鳴き声が響く。
白い毛に覆われた大型のネズミ、ディメンジョン・イーターの群れだ! 普段は単体でしか現れないレアモンスターが、十匹以上の群れで現れる異常事態。視聴者コメントが爆発する。
「リオン、ディメンジョン・イーターの群れだ。共闘するぞ」
『共闘キタコレ』
『ディメンジョン・イーターの群れ!? マジ!?』
『これは一攫千金チャンス!』
『リオンちゃん、サキちゃん、絶対逃すな!』
「リオンさん、こんなにいっぱい……!」
ミリアが目を丸くして呟く。マナミも興奮気味に叫ぶ。
僕も大金の気配に、さすがに緊張からゴクリと喉を鳴らす。
一千万、二千万……五千万……全部で何匹だ。まさに当たりクジとはこのことだろう。
「お兄ちゃん、これ全部マジック・バッグの素材じゃん! 大金持ちだよ!」
「よし、ミリアちゃん、マナミ、準備! サキさん、左右で分担して倒すよ!」
「了解、リオン! ブルーファング、右側いくよ!」
僕とサキが素早く作戦を立て、スターライトは左側、ブルーファングは右側に分かれる。
僕がショートソードを構え、ディメンジョン・イーターに突進。
素早い動きで逃げようとするネズミを剣で捉えるが、数が多すぎる。
ミリアがファイアボルトを放ち、炎が一匹を焼き払う。
「ミリアちゃん、ナイス! もっと撃って!」
ミリアが連続でファイアボルトを放ち、ディメンジョン・イーターの動きを封じる。一方、サキのダガーが光り、雷魔法の援護で次々とネズミを仕留める。
ブルーファングの派手な演出が視聴者を沸かせ、コメントが『サキちゃん無敵!』『ブルーファングやばい!』という風に次々流れていく。
スターライトも負けじと奮闘。マナミがマジック・バッグからマナ・ポーションを取り出し、ミリアに渡す。
「ミリアちゃん、魔力切れそうなら、これ飲んで!」
「マナミは、素材回収頼むよ!」
「任せて、お兄ちゃん! 毛皮、ガンガン集めるよ!」
マナミが素早く倒されたディメンジョン・イーターの毛皮を回収。
視聴者コメントがスターライトのチームワークを称賛する。
『スターライト、連携バッチリ!』
『ミリアちゃんのファイアボルト、めっちゃ映える!』
『マナミちゃん、回収スピード速すぎw』
ディメンジョン・イーターの数は減っていくが、群れの奥からさらに数匹が現れる。サキが叫ぶ。
ちなみにわりと弱いとされるディメンジョン・イーターだが、実は生きているときもマジック・バッグと同等の能力があり、異次元に食べられてしまうと、大変危険だ。
「リオン、この数、ヤバいね! でも、視聴者盛り上がってるよ! 負けないで!」
「サキさん、こっちも負けないよ! スターライト、フルパワーで行く!」
僕とミリアが息を合わせ、ファイアボルトと剣技でディメンジョン・イーターを次々と倒す。
マナミの回収スピードも上がり、マジック・バッグが毛皮でパンパンになっていく。
視聴者数がスターライトとブルーファング合わせて一万五千人を突破し、スパチャも急上昇。
『リオン&サキの共闘キター!』
『ディメンジョン・イーター祭り!』
『スターライト、ブルーファング、どっちも最高!』
戦いは佳境に。僕とサキの共闘は続くが、ディメンジョン・イーターの群れはまだ残っている。
次話で決着か!?