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第14話 キングオーガの試練


「はーい、リオンのダンジョン配信、引き続き絶好調! チーム『スターライト』、今、キングオーガとガチンコ勝負中! ミリアちゃんのファイアボルトで足止め、僕がトドメを刺すよー! みんな、応援してね!」


 今はマナミの投げた火炎瓶が両者の間に炎の壁を作っており、両者見合ったまま動かない。


 ドローンのカメラが、ヒカリゴケの黄緑色の光に照らされた日本平ダンジョン三階西地区を映し出す。

 キングオーガの巨体が唸りを上げ、僕リオンが魔鉄のショートソードを握りしめ、跳び込む。

 ミリアは後方でファイアボルトの魔力を溜め、炎の弾丸を準備。

 マナミは火炎瓶を投げ終えて、肩にかけたマジック・バッグから、新たに中級治療ポーションを手にして再びスタンバイ。

 視聴者コメントが熱狂的に流れ続ける。


『リオンちゃん、キングオーガやばい! 気をつけて!』

『ミリアちゃんのファイアボルト、頼むぞ!』

『スターライト、チームワークで勝て!』

「ミリアちゃん、今だ!」


 僕が叫ぶと、ミリアがファイアボルトを放つ。

 炎の弾丸がキングオーガの足元を直撃し、巨体が一瞬よろける。

 僕はその隙に跳び上がり、剣をオーガの肩に叩き込む。硬い皮膚に剣が食い込むが、完全には貫けない。

 オーガが怒りの咆哮を上げ、巨大な腕を振り回す。


「うわっ、危ね!」


 僕が後ろに飛び退き、マジック・バリアがバチッと光る。マナミが素早くポーションを投げ渡す。


「お兄ちゃん、飲んで! まだいけるよ!」


 僕がポーションを一気に飲み、傷が癒えるのを感じる。視聴者コメントがさらに盛り上がる。


『マナミちゃん、ナイスアシスト!』

『リオンちゃん、ブロンズなのにめっちゃ勇敢!』

『スターライト、ガンバ! サキに負けるな!』


 一方、ドローンが捉えるブルーファングの映像では、サキがミスリウムのダガーを華麗に操り、別のキングオーガを翻弄している。

 彼女の仲間が雷エフェクトの魔法で援護し、派手な演出で視聴者を沸かせる。

 サキの配信チャンネルは視聴者数七千人を突破し、スパチャ金額は八十万ptに迫る勢い。

 スターライトは視聴者数五千、スパチャ五十万ptと、差が開きつつある。


「サキさん、めっちゃ派手だね……でも、スターライトも負けないよ!」


 僕がカメラにウィンクし、視聴者にアピール。ミリアが再びファイアボルトを放ち、キングオーガの動きを封じる。

 僕はその瞬間を見逃さず、剣をオーガの首筋に突き刺す。


「えいやっ!」


 剣が急所を捉え、キングオーガがドサッと倒れる。マナミが素早く魔石を回収し、マジック・バッグに放り込む。視聴者コメントが爆発的に増えていく。


『スターライト、キングオーガ撃破! すげえ!』

『リオンちゃん、めっちゃカッコいい!』

『ミリアちゃんのファイアボルト、最高!』

『スパチャ投げた! スターライト、もっとやれ!』


 スパチャが一気に増え、六十万ptを突破。サキとの差が少し縮まった。

 僕はなんとか息を整えながら、ミリアとハイタッチ。


「ミリアちゃん、ナイスファイアボルト! マナミもバッチリ!」

「リオンさん、すごかったです! 私、ちょっとビビりましたけど……」

「お兄ちゃん、めっちゃかっこよかった! これで視聴者も増えるよね!」


 視聴者コメントが『スターライト最高!』『サキに追いつけ!』で埋まる中、僕は次のモンスターを探して進む。

 通路の奥から、ハイシープの群れが現れる。僕は機転を利かせ、狭い通路に誘導する作戦に出る。


「ミリアちゃん、ハイシープをまとめて焼き払っちゃおう! ファイアボルト、連発いける?」

「はい、リオンさん! 任せてください!」


 ミリアが連続でファイアボルトを放ち、ハイシープの群れを一掃。

 炎が通路を照らし、ドローンの映像がその迫力を捉える。

 マナミがフワフワの毛皮と魔石を回収し、楽しそうに叫ぶ。


「お兄ちゃん、ミリアちゃん、めっちゃ強い! 私たちいけるよ!」


 視聴者コメントが『ファイアボルト連発キター!』『マナミちゃんのテンションw』で盛り上がる。

 スパチャも増え、七十万ptに到達。

 サキのブルーファングは依然としてリードしているが、スターライトの勢いも負けていない。

 その時、ドローン越しにサキの声が聞こえる。


「リオン、いい感じじゃん! でも、視聴者数もスパチャも、私の勝ちだから! 置いてかれないように頑張りな!」


 サキの配信では、彼女がハイシープの群れをダガーで切り刻み、仲間が派手な魔法で援護。視聴者数が八千人に迫り、スパチャは百万ptを超えている。

 僕は悔しそうに唇を噛むが、すぐに笑顔で応じる。


「サキさん、確かに派手だけど、スターライトはチームワークで勝負! 視聴者のみんな、最後まで見ててね!」


 ミリアが少し不安そうに呟く。


「リオンさん、サキさんの配信、すごい勢いです……私たちのファイアボルト、もっと目立たないと……」

「大丈夫、ミリアちゃん! 僕たちの配信は、みんなの心を掴むよ! ほら、ミリアちゃんの剣技、ちょっと見せてみて!」


 ミリアが頷き、ショートソードを構える。その動きは、兄、直樹の剣技を彷彿とさせる流れるようなフォームだ。僕がカメラに解説する。


「みんな、ミリアちゃんの剣技、実は斎木直樹さんの影響を受けてるんだよ! ミリアちゃん、ちょっとだけ見せてあげて!」


 ミリアが剣を軽く振り、素早い突きと斬撃を披露。動きはまだ初級だが、直樹の力強い剣技の片鱗が見える。

 視聴者コメントが一気に沸き立つ。


『ミリアちゃん、剣技カッコいい!』

『斎木さんの妹、めっちゃ才能あるじゃん!』

『スターライト、チームワークだけじゃなく個人技もすごい!』

「兄はよく家の庭で素振りをしていて、ずっと私も見てたから……」


 ミリアの剣技が注目を集め、視聴者数が急上昇。六千人に迫る。

 スパチャも八十万ptに達し、サキとの差がさらに縮まった。マナミが興奮して叫ぶ。


「お兄ちゃん、ミリアちゃん、めっちゃバズってる! この調子なら追いつけるよ!」


 僕はカメラにウィンクし、視聴者に呼びかける。


「みんな、スターライトの応援、ありがとう! サキさんのブルーファングもすごいけど、僕たちはチームワークと心で勝負! 最後までガンガンいくよー!」


 時間は残りわずか。スターライトはさらにモンスターを倒し、魔石と素材を回収。

 サキのブルーファングも同様に猛進する。

 最終的に、魔石の数はスターライトが四十個、ブルーファングが三十六個で僅差の勝利。

 しかし、視聴者数はスターライトが七千人に達し、サキの八千人とほぼ互角。スパチャはスターライトが九十万pt、ブルーファングが百十万ptで、惜しくも敗れる。


 ダンジョン村に戻り、配信を終了。サキが近づいてくる。


「リオン、視聴者数でほぼ互角とか、やるじゃん。スパチャは私の勝ちだけど、次はもっと差をつけるよ!」

「サキさん、めっちゃ楽しかったよ! 次は絶対、スターライトがスパチャも勝つから!」


 サキがニヤリと笑い、ブルーファングの仲間と共に去っていく。ミリアがホッとしたように息をつく。


「リオンさん、サキさん、すごい人気ですね……でも、私たちの配信も負けてなかった!」

「うん、ミリアちゃんの剣技とファイアボルト、めっちゃバズったよ! マナミの応援も最高だった!」

「お兄ちゃん、私、ただ荷物持ってるだけなのに、コメントで『かわいい』って言われまくったよ! えへへ!」


 三人で笑い合い、ダンジョン村のギルド亭でトカゲ丼を食べながら休息をとる。

 僕は思う。斎木さん、ミリアちゃんの剣技、ちゃんと受け継がれてるよ。

 僕たち、もっと強くなって、サキにも負けない配信してみせるから!


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