ドローンが五階の薄暗い通路を映し出す。

　視聴者コメントが早速殺到する。

『スターライト、五階の奥キター！』

『リオンちゃんのハンドガン、そろそろ見たい！』

『ミリアちゃん、ファイアボルトでガンガンいけ！』

「リオンさん、この階、なにか嫌な気配がします……」

「ああ、ミリアちゃん、その気配がわかるのが、一人前になる一歩だよ」

　ミリアが剣を握りしめ、緊張した声で呟く。

　彼女のファイアボルトはアクア・サーペント戦で大絶賛され、スターライトの視聴者数は一万五千人に迫っている。

「うん、ミリアちゃん。斎木さんがここで何かを見つけたかったんだ。スターライトとルミナスのチームワークなら、どんな敵も怖くないよ！」

　またマナミが大丈夫とジェスチャーして、マジック・バッグを叩いてニヤリとする。

　コメントが沸く。

『マナミちゃん、元気すぎw』

『ポーターなのにめっちゃ目立ってる！』

　ルミナスのリーダー、小野田さんがミスリウム製のロングソードを構えて近づく。

　後ろには魔法使いの増田さんとダガーの使い手、海野さんが控える。

　保守派のシルバー級パーティーとして、ルミナスは斎木直樹の信念を共有する仲間だ。

「リオン、ミリア、五階の奥は危険だ。マギテックが隠してるレア素材の証拠、斎木さんが追い求めてたものがあるかもしれない。油断するなよ」

「小野田さん、ありがとう！　スターライトとルミナスで、絶対真相を暴くよ！　視聴者のみんな、めっちゃ盛り上げてね！」

『スターライト＆ルミナス、激アツ共闘！』

『マギテックの闇、絶対暴け！』

　通路を進むと、突然地面が激しく揺れ、低い咆哮が響き渡る。

　岩壁の奥から、巨大なクリスタル・オーガが姿を現す。

　体は透明な結晶で覆われ、ミスリウム製の巨大なハンマーを振り回す。

　ブロンズ級には圧倒的な脅威だ。

　さらに、その周囲にはゴブリン・ウォリアーが数匹、硬い木の棍棒を手に待ち構えている。

「ミリアちゃん、ファイアボルトでゴブリン・ウォリアーを！　小野田さん、クリスタル・オーガの動きを止めて！」

「了解、リオン！　ルミナス、フォーメーションC！」

　小野田さんがロングソードで突進し、クリスタル・オーガのハンマーを受け止めるが、衝撃で後退。

　ミリアがファイアボルトを連発し、ゴブリン・ウォリアーを焼き払う。

　僕がショートソードでオーガに斬りかかるが、結晶の体は硬く、刃が弾かれる。

　マジック・バリアがオーガのハンマーの一撃を防ぐが、衝撃で体が吹き飛ばされ、岩壁に叩きつけられる。

「うっ、リオンさん！」

　ミリアが叫び、増田さんの風魔法がゴブリン・ウォリアーを吹き飛ばす。

　海野さんのダガーが残りを仕留めるが、クリスタル・オーガのハンマーが再び振り下ろされ、小野田さんが膝をつく。

　マジック・バリアがバチバチと火花を散らし、限界が近い。

　視聴者コメントがざわつく。

『ヤバい、クリスタル・オーガ強すぎ！』

『リオンちゃん、ピンチ！』

『スターライト、逃げて！』

「みんな、ダメだ！　このままじゃマジック・バリアが持たない！　一旦撤退！」

　小野田さんが叫び、僕たちは後退を開始。

　マナミが火炎瓶を投げて時間を稼ぐが、クリスタル・オーガの咆哮が背後で響く。

　なんとか安全地帯まで逃げ込み、岩壁の窪みで小休憩。マナミが中級ポーションを配る。

「お兄ちゃん、ミリアちゃん、飲んで！　まだいけるよね！」

　ポーションを飲み、傷が癒える。ミリアが息を整えながら呟く。

「リオンさん、このオーガ、兄が戦った敵より強いかも……でも、絶対倒したいです」

「うん、ミリアちゃん。斎木さんの想いを継ぐためにも、負けられないよ。小野田さん、もう一回行ける？」

　小野田さんが頷く。

「リオン、さっきの攻撃パターン見えた。ハンマーの振り下ろしに隙がある。次はフォーメーションBでいくぞ」

「了解！　視聴者のみんな、スターライトとルミナス、絶対クリスタル・オーガ倒すから、応援して！」

『スターライト、ガンバ！』

『リオンちゃん、逆転キター！』

　休憩を終え、再度クリスタル・オーガのエリアへ。

　そこへ、サキのブルーファングが別の通路から駆けつける。

　サキのアダマンタイト製の青い軽鎧が光り、レッド・メタルのダガーが輝く。

　トオルさんとルナさんが雷と氷の魔法を準備。

「リオン、ピンチみたいじゃん！　ブルーファング、助けに来たよ！」

「サキさん、ナイスタイミング！　一緒にクリスタル・オーガ倒そう！」

「いいね、リオン！　ブルーファング、参戦！」

　サキのダガーがオーガの結晶に切り込み、トオルさんの雷魔法が動きを一瞬止める。

　ルナさんの氷魔法が結晶の表面を凍らせ、動きを鈍らせる。

　僕とミリアも攻撃を再開。ミリアがファイアボルトを放ち、オーガの腕を焼く。

　僕がショートソードで横から斬りかかるが、結晶の硬さに再び弾かれる。

　小野田さんのロングソードがハンマーを弾き、増田さんの風魔法が援護。

　視聴者コメントが加速。

『スターライト＆ブルーファング、共闘キター！』

『サキちゃんのダガー、めっちゃ鋭い！』

　しかし、クリスタル・オーガのハンマーが再び振り下ろされ、マジック・バリアが限界に近づく。

　サキが叫ぶ。

「リオン、このままじゃヤバい！　何か切り札ないの！？」

「ミリアちゃん、ファイアボルト連発でいける！？　僕と小野田さんで動きを止める！」

　ミリアが頷き、魔力を集中。だが、オーガの反撃が速く、僕たちは防戦一方。

　視聴者数が一万六千人に達し、コメントが『スターライト、ピンチ！』で埋まる。

　戦闘は膠着状態だった……。