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第29話 暴露の決意


「はーい、リオンのダンジョン配信、今日も絶好調でスタート! チーム『スターライト』、今日はめっちゃ大事な配信だよ! 冒険者ギルド静岡支部の会議室から、斎木さんの死の真相について、みんなにガチで話すよ! 応援よろしくね!」


 ドローンが冒険者ギルド静岡支部の会議室を映し出す。

 木製の長テーブルに、リオン、ミリア、マナミが座り、壁にはダンジョンマップが貼られている。

 サキとブルーファングのトオル、ルナも同席し、緊張感が漂う。

 視聴者コメントがメガネ型端末に流れ始める。


『スターライト、真相究明ガンバ!』

『リオンちゃん、今日めっちゃ真剣!』

『ミリアちゃんのミスリウム・ソード、かっこよかった!』


 ミリアが新しいミスリウム・ソードを手に、決意のこもった表情で言う。


「リオンさん、兄の死の真相、絶対みんなに知ってほしい。改革派とマギテックの癒着、許せないよ!」

「うん、ミリアちゃん。今日こそ、全部ぶちまけるよ! マナミ、資料とドローン操作、頼んだ!」


 マナミがマジック・バッグから書類の束を取り出し、ニヤリといつものように不敵に笑う。


「お兄ちゃん、任せて! 証拠の写し、ガッツリ用意したよ! ポーションもあるから、気合十分!」


 サキが意外にもかわいらしい私服のワンピース姿だが、真剣な顔で言う。


「リオン、ミリア、私たちブルーファングもマギテックの裏を探ってきた。クリスタル・オーガの魔石買い取りの話、改革派の幹部が絡んでる証拠、ちょっとだけ掴んだよ」

『ブルーファング、ナイス!』

『マギテック、絶対怪しい!』


 僕は深呼吸し、カメラに向かって話し始める。


「みんな、聞いて! スターライトとブルーファング、ルミナスも協力して、斎木直樹さんの死の真相を追ってきた。冒険者ギルドの改革派とマギテック社が癒着して、ダンジョン産のレア素材を独占しようとしてるんだ。それに、斎木さんがソロでアース・ドレイクの防衛任務に送られたのも、改革派の陰謀だった!」


 マナミが命令書の写しをドローンでアップに映す。

 そこには「斎木直樹、緊急につき単独で五階アース・ドレイク防衛任務」と書かれ、改革派幹部の署名がある。


「これが証拠! 斎木さん、こんな無茶な任務、普通ならパーティーで挑むのに、ソロで送り込まれた。改革派は不利になる保守派の強い冒険者を潰したかったんだ!」

『マギテック、クソくらえ!』

『斎木さん、かわいそうすぎる……』

『スターライト、暴露ガンバ!』


 視聴者数が一気に二万人を突破し、スパチャが殺到する。

 ミリアがミスリウム・ソードを握り、声を震わせる。


「兄は、改革派の闇を暴こうとしてた。だから、こんな危険な任務を押し付けられたんだ。私、兄の名誉、絶対取り戻す!」


 今でも思い出せる「犬死」の二文字。

 突然、会議室のドアをノックする音が響く。ドンドン! 重い音に全員がハッとする。


「誰!? 配信中だよ!」


 サキが立ち上がり、素手ではあるがドアへ向かう。ドアの外から、聞き慣れない男の声。

 配信で見せるためにミリアのミスリウム・ソードはマジック・バッグに入れてきて持ってきたが、他の人はダンジョン内ではないので、今は武装解除していて普通の服装だ。


「ギルドの点検だ! 会議室を開けろ!」


 ルナが冷たく言う。


「点検? こんなタイミングで怪しすぎる。マギテックの差し金だろ」


 トオルが素早くドアに近づき、鍵を確認。

 外で複数の足音が聞こえる。視聴者コメントがざわつく。


『やばい、邪魔しに来た!』

『スターライト、気をつけて!』


 そこへ、保守派のシルバー級パーティー「ルミナス」の小野田さんが、増田さんと海野さんを連れて廊下に現れた。ドローンの外部カメラがその様子を捉える。

 丸腰の小野田さんだが、その眼光がキラリと光り、相手を威圧した。


「お前ら、改革派の手先だろ? スターライトの配信を邪魔する気か?」


 男たちがたじろぐ中、増田さんの風魔法が廊下を吹き抜け、海野さんが体術の構えを見せて威嚇する。

 男たちは「ただの点検だ!」と言い訳しながら退散する。


『ルミナス、かっこよすぎ!』

『スターライト、守られた!』


 サキがドアを閉め、笑顔で戻る。


「小野田さん、ナイスタイミング! これで邪魔はなくなったね!」


 僕がカメラに向かって続ける。


「みんな、ルミナスのおかげで配信続けられるよ! 改革派とマギテックの癒着、もっと詳しく話すから、聞いてて!」


 だが、突然、視聴者コメントが異常な速度で流れ始め、画面がスパムで埋まる。

 次々と『配信やめろ』『嘘つき』『マギテックは正義』といった荒らしコメントが洪水のように押し寄せる。


「な、なにこれ!? マナミ、コメント欄、どうなってる!?」


 マナミが慌てて端末を操作するが、画面に「配信一時停止:不適切なコンテンツ」と表示される。

 配信がBANされてしまったのだ。

 ダンジョン配信の運営元は冒険者ギルドの関連会社が行っており、非常に関係が深い。


「うそ、BAN!? こんなの、マギテックの仕業に決まってる!」


 コメントは見えなくなったが、僕たちは肩を落とす。

 ミリアが剣を握り、悔しそうに呟く。


「せっかく、兄の真相をみんなに伝えたかったのに……」


 サキが拳を握る。


「リオン、ミリア、絶対これ、マギテックの圧力だ。こんな卑怯な手、許せない!」


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