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第33話 東京迷宮大学での議論


「はーい! リオンのダンジョン配信、東京特別編、三日目スタート! チーム『スターライト』、今日は東京迷宮大学でTS病と魔力結晶の噂をガッツリ追うよ! もう荷物運びだけじゃない、真実を暴くミッションだ! みんな、応援よろしくね!」


 ドローンが東京迷宮大学の賑やかなキャンパスを映し出す。

 近代的なガラス張りのビルとツタに覆われた講義棟が混在し、バックパックを背負った学生や白衣の研究者が行き交う。

 リオン、ミリア、マナミはマジック・バッグを肩にかけ、大学の正門をくぐる。

 視聴者コメントがメガネ型端末に流れ始める。


『スターライト、東京の大学キター!』

『リオンちゃん、今日も可愛い!』

『ミリアちゃん、ミスリウム・ソード見せて!』


 ミリアが純魔銀製のミスリウム・ソードを一度取り出して見せてマジック・バッグに再びしまい、大学構内の地図を手に持つ。

 彼女の目は真剣で、兄、直樹の死の真相に繋がる手がかりを求める決意が滲む。


「リオンさん、昨日聞いた魔力結晶の話、兄が何か知ってたかもしれないって思うと、ドキドキします。マギテックが隠してるなら、絶対許せない!」

「うん、ミリアちゃん。斎木さんが改革派の闇を暴こうとしてたなら、ここで何かヒントが見つかるはず。マナミ、資料の準備と情報収集、頼んだよ!」

「お兄ちゃん、任せて! ポーションもおにぎりもバッチリ詰めたし、ポーターとして情報もガンガン集めるよ!」

『マナミちゃん、ポーターなのにスパイみたい!』

『スターライト、真相究明ガンバ!』


 マナミがマジック・バッグを叩いてニヤリと笑う。

 冒険者ギルドの紹介状を手に、スターライトは大学のダンジョン研究棟へ。

 受付でエルフの女性研究者が迎える。

 彼女の尖った耳がピクッと動き、柔らかい笑顔で対応する。

 エルフの女性は年を取らないという噂だが、ダンジョンができてまだ二十五年。早い人でも二十五歳なので、不明である。

 ダンジョンや異種族の存在は謎で、一説には異世界とこの世界の時空間が衝突した結果だという論文もあるが、詳しくは分かっていない。


「スターライトの皆さん、ギルドからの調査協力ね。TS病と魔力結晶の研究討論会に参加するわよ。会議室はこっち、ついてきて!」


 会議室に入ると、研究者や冒険者、ギルド職員が円卓に座っている。

 壁には魔力結晶の分析データやダンジョンマップが投影され、緊張感が漂う。

 僕がドローンを操作し、配信を続ける。


「視聴者のみんな、ここが東京迷宮大学のダンジョン研究棟! TS病と魔力結晶の謎を解く討論会だよ。スターライト、ガンガン質問して真相に迫るから、応援して!」


 討論会が始まり、研究者の一人がスライドを指しながら説明する。


「新宿ダンジョンで採取された高濃度魔力結晶は、異常な魔力波を放出します。この波長がTS病の原因と関連している可能性が、最近のデータで浮上しています。しかし、データの一部はマギテック社により制限されています」


 ミリアが手を挙げ、兄と同型のミスリウム・ソードを握る手がわずかに震える。


「その制限、マギテックが意図的に隠してるってことですか? 私の兄、斎木直樹は、改革派の陰謀を暴こうとして死にました。魔力結晶の暴走と関係があるなら、教えてください!」


 研究者が一瞬たじろぐが、別の冒険者が口を開く。

 シルバー級の男性で、保守派である冒険者同盟のバッジを胸につけている。


「斎木直樹のことは知ってる。彼は魔力結晶の危険性をギルドに報告しようとしてた。マギテックが新宿ダンジョンで非公開の実験を行い、TS病の症例を隠蔽してる噂は本当だと思う」


 僕はドローンを寄せ、声を拾う。


「視聴者のみんな、聞いた!? マギテックがTS病の症例を隠蔽!? 斎木さんが追ってたのは、こんな危険な秘密だったんだ!」

『マギテック、超怪しい!』

『スターライト、暴け!』


 突然、会議室のドアが開き、スーツ姿の男が現れる。

 マギテックのロゴが入った名刺を手に、冷ややかな笑みを浮かべる。


「討論会、盛り上がってますね。マギテック社の代表として、誤解を解きたい。TS病と魔力結晶の関連は未証明です。我々の実験は安全で、データ制限は企業秘密の一環です」


 サキがブルーファングの仲間と共に後ろの席から立ち上がる。

 彼女のアダマンタイト製の軽鎧は脱いでいるが、眼光は鋭い。


「マギテックさん、都合良すぎるよ! ブルーファングも新宿ダンジョンで調査したけど、魔力結晶の買い取り条件、めっちゃ怪しいよね? 特定の結晶だけ高値で集めて、TS病の研究に使ってるでしょ?」


 男が一瞬顔を強張らせるが、すぐに笑顔に戻る。


「ブルーファングのサキさん、ですね。憶測はご自由にどうぞ。証拠がない限り、我々は法的に問題ありません」


 マナミがマジック・バッグから書類の写しを取り出し、テーブルにバンッと置く。


「お兄ちゃん、ミリアちゃん、これ見て! 新宿ダンジョンの魔力結晶の分析データ、調査員がこっそり渡してくれたやつ! 異常な魔力波、TS病の症例と一致してるって!」

『マナミちゃん、ナイス!』

『スターライト、証拠キター!』


 視聴者数が二万二千人に急上昇。コメントが加速する。

 僕がカメラに向かって叫ぶ。


「みんな、マギテックの隠蔽、絶対許さない! スターライトとブルーファング、このデータ持って、真相を暴くよ!」


 研究者が書類を手に取り、眼鏡を光らせる。


「これは……確かに異常なデータだ。マギテック、このデータをなぜ公開しなかった? TS病の被害者を増やす気か?」


 男が冷や汗をかきながら退出する。

 討論会はさらにヒートアップし、保守派の冒険者たちがマギテック批判を強める。

 ミリアが立ち上がり、声を張る。


「兄は、こんな危険な秘密を暴こうとしてたんだ。私、スターライトと一緒に、絶対真相をみんなに届ける!」


 配信終了後、スターライトとブルーファングは会議室を出る。

 マナミがプリンを頬張りながら笑う。


「お兄ちゃん、ミリアちゃん、サキさん、めっちゃ大勝利! ポーターもガンガン応援するよ!」

「リオン、共同配信の視聴者数、ぶち抜いたね! 次はお台場ダンジョンで実地調査だ。マギテックの闇、もっと深掘りしよう!」


 サキがリオンにウィンクする。

 僕が拳を握る。


「うん、サキさん! 視聴者のみんな、スターライトとブルーファング、東京迷宮大学で大スクープゲット! 次はお台場ダンジョンでガンガンいくよ!」


 視聴者コメントが『スターライト、最高!』で埋まり、討論会の熱気は冷めやらぬまま、次の冒険へと繋がる。


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