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第44話 リオンとマナミの休日


 静岡市街地の賑やかな通り、青空が広がる十二月の日曜。

 商店街のアーケードには、色とりどりの看板が並び、家族連れやカップルで賑わっている。

 どこからともなくクリスマスソングが流れてきて、年末を彩った。


「お兄ちゃん、今日はダンジョンなしの完全休日! やったー!」


 マナミがアーケードの入口で両手を広げ、元気いっぱいに叫ぶ。

 オレンジの髪をハーフアップにし、フリルのついたピンクのブラウスとコート、ショートパンツが彼女の活発さを引き立てる。それにしても冬なのにその生足で寒くないのか、心配ではある。


「マナミ、めっちゃテンション高いね! でも、ほんと久々のオフだな。さて、何しようか?」


 僕はシルバーホワイトの髪を風になびかせ、シンプルなシャツとコートとデニムのパンツ姿で笑う。

 スカイブルーの瞳には、冒険者としての鋭さとは異なる、穏やかな光が宿る。

 僕とマナミは私服で歩き、姉妹のような雰囲気を漂わせる。

 今日は配信なしのオフレコ休日。プライベートな時間を満喫する一日だ。


「ポーターの私、街でも全力で楽しむよ! まず何する? 買い物? ご飯? それともスライムグッズ探し?」

「マナミ、いつもそんな元気どこから湧いてくるの! うーん、買い物でもしようかな。TS病で女の子になってから、服選びが……なんかまだ慣れなくて、めっちゃ恥ずかしいんだけどさ!」


 二人はアーケードのブティックへ向かう。

 ショーウィンドウには、すでに春物らしいミニスカートやワンピースが並び、色とりどりのアクセサリーがキラキラ輝く。

 リオンがスカイブルーのミニスカートをチラッと見て、頬を赤らめる。


「お兄ちゃん、そのミニスカート、絶対似合う! シルバー級の冒険者なんだから、街でも輝かなきゃ! ほら、試着してみて!」

「マナミ、簡単に言うけど……! うぅ、こんな短いの、脚丸見えじゃん! でも……試着だけなら、いいかな……!」


 店員の若い女性がニコニコしながら近づき「お姉さん、絶対可愛く着こなせますよ!」と後押し。

 リオンはスカイブルーのミニスカートと、シンプルな白いトップスを手に試着室へ。

 マナミは外でニヤニヤしながら、試着室のカーテンをチラチラ覗く。

 カーテンが開き、僕が恥ずかしそうに登場。

 スカートの裾を気にしながら、鏡の前でくるっと回る。


「ど、どうかな……? なんか、脚がスースーして落ち着かないんだけど! こんなの、街で歩けるかな……!」

「お兄ちゃん、めっちゃ可愛い! シルバー級の輝き、そのまま! ポーターの私、自信持って買い認定!」


 マナミが手を叩いて大はしゃぎ。すっかりポーターが板についてる。

 僕は頬を膨らませつつ、鏡で自分の姿をもう一度確認。

 店員が「TS病の方、最近増えてます! 自分らしいスタイル、楽しんでくださいね!」と笑顔で励ます。

 僕は決心し、レジでミニスカートを購入。

 店内に設置された鏡に映る僕の紙袋を手に持つ姿は、どこか誇らしげだった。


「よし、次はカフェ! スライムゼリー入りのカフェオレ、絶対飲みたい! ポーターの胃袋、準備OK!」


 二人は商店街の人気カフェ「スライム・ハウス」へ。

 木目調の店内には、スライムの形をしたクッションが並び、壁にはダンジョン風の装飾が施されている。

 カウンターには、ダンジョン産の素材を使ったスイーツやドリンクのメニューがずらり。

 リオンとマナミは窓際の席に座り、スライムゼリー入りカフェオレと、クリムゾン・シュリンプの粉を使ったモンスター柄のドーナツを注文。


「お兄ちゃん、このカフェオレ、ゼリーがプルプル! ポーターの胃袋、癒される~!」

「マナミ、ほんと食い意地すごいね! でも、このドーナツ、クリムゾン・シュリンプの粉使ってるんだって。サクサクで美味い!」


 二人はカフェオレをすすり、ドーナツを頬張る。リオンのスカイブルーの瞳が柔らかく輝き、窓の外を行き交う人々を眺める。


「マナミ、最近、冒険ばっかだったから、こうやって二人で過ごすの、なんか新鮮だね」

「お兄ちゃん、シルバー級、めっちゃカッコよかったよ! でも、今日は休日! 次の冒険のために、充電だ!」


 マナミがドーナツをもう一つ注文し、僕が笑う。

 カフェを後にし、二人は大型書店「マオマオ・ライブラリー」へ。

 店内の一角には、冒険者向けコーナーが設けられ、専門書やダンジョン攻略ガイドがずらりと並ぶ。

 僕の目が、武器特集の雑誌に止まる。


「お、マナミ、これ! 『最新ミスリウム武器カタログ』! ミリアちゃんの剣のメンテナンスに役立つかも!」

「お兄ちゃん、さすがシルバー級! 素材の保管方法のコーナー見てくる!」


 リオンは雑誌を手に、ミスリウムの強化法や新モデルを熱心にチェック。

 マナミは素材管理のガイドブックをパラパラめくり、メモを取る。二人は本を数冊買い、満足げに本屋を後に。


「お兄ちゃん、ミニスカート、カフェオレ、本屋、最高の休日! ポーターの私、街でも大活躍!」

「マナミ、ほんと楽しかった! 次は冬の冒険者祭り、ガンガンいくよ!」


 夕暮れの静岡市街地を歩きながら、僕がマナミと手をつないで笑う。

 マナミがスライムゼリーのキーホルダーを振り、ニコニコ。

 買ったものはすべて、マジック・バッグに入れて持ち歩いていた。

 二人の絆は、ダンジョン以外の日常でも輝く。アフレコの声で、リオンが締める。


「スターライトの休日、楽しかったぜ! 冬の祭りで、また熱い冒険を!」


 静岡の街並みが、スターライトの新たな一歩を優しく照らす。


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