「待"って! 無理ッ! 死んじゃう!
死"んじゃうがら"ッ!」
なんでこんな浅い階層にワイバーンなんているのよッ!
ダンジョンって段階を踏んで強くなるんじゃないの!?
『なんの装備もしてなくてワロタwww』
『死んでもどうせ地上にリスポーンすんじゃん』
『めっちゃ逃げとるwww』
『涙目アイラたん萌え〜♡』
「うっせー! 死んだ時の痛み知らない癖にさぁ! 知ってたらそんな気楽なこと言えないから! あと萌えるくらいならスパチャ寄越せ!」
心臓が超痛い。
でも走るのをやめたら死んじゃう。追いつかれて食べられる。
タブレットに移るコメントはムカつくものばかりだし!
『スパチャあげようかと思ったけど暴言吐かれたしやめるわ』
「あ"あ"あ"あ"あ"!!!! 待って待って待って待って! ごめんなさいごめんなさい! テレポート代だけでもお願いじま"ずがら"ぁ"!!!!」
ガッ
「あっ……!」
ドシャッ
痛い。
何? 転んだ? 躓いた?
痛い痛い痛い……!
『転んだw』
『終わったな』
『タブレットばっかみてるから』
「お前らのせいだ…………ろ……」
フーッと背後で生ぬるい吐息を感じる。
背筋が凍って体温が一瞬で消える。
『志村ーっ後ろーっ』
『※注、ここから先はグロ映像です』
「うし……ろ……」
嫌だ嫌だ見たくない見たくない見たくない。
でも見なきゃいけない……。
恐る恐るあたしが振り向いたその先には…………
「フーッ…………」
ワイバーンの顔が目と鼻の先だった。
「ギャアアアアアアアアアア!!!!!」
『絶叫wwwwww』
『女の子の声じゃねぇわwww』
「お願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願い助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて!!!!!」
腰が抜けた状態で全力で涙を流して頼み込む。
『しょうがねぇなぁ。テレポート代やるよ【500ルピ】』
「おおぉあああああ! テレポートォ!」
スパチャが確認できるやいなや私はその金額で
「ハァッ……ハッ……生きてる……」
転移した先には一先ず魔物の姿は見当たらない。
一旦息を落ち着かせなきゃ。心臓超痛いし。息するのしんどい。
『(・д・)チッ生き延びたか』
『スパチャナイス 俺は1ルピも出す気はないけどw』
『助けてやったんだから感謝しろよ』
「はいはいはい。感謝してます。でも今度からはもっと早くしてほしいわ」
『助けてもらった言い草じゃねぇw』
『これは次は死んだな』
『涙目アイラたん萌え〜♡』
「てゆーかここどこ? わかる人居ない?」
『タブレットのMAP見ろよ』
『テレポートは同階層のどこかにしか飛ばないからまだ二層のはず』
「えっとねぇ……今は
辺りを見回してみるとたしかに庭っぽい雰囲気があった。なんか湿気てる気がするけど。
『まだ安置じゃない』
『次襲われたらアウトだぞ』
『とりあえず離れたら?』
「そうね。離れてみるわ。安置はどこ?」
『アンチは俺らだぞ』
『だからMAP見ろって』
「わかったわようっさいなぁ……」
ムカつくコメントを受けながらも私はとりあえず安全な場所で落ち着くために歩いていく。
『つかまじでなんで無装備なん?』
「有名ダンジョン配信とか見てたらさ、スパチャ使ってその場で魔法とか装備とか出してガンガンダンジョン進めていくじゃん。あたしもそういうふうにしたかったから」
『理由になってなくて草』
『有名配信者とかでも初めの頃は普通に装備つけてからダンジョン入ってたわ』
『これもうセルフ縛りプレイじゃん』
「うるさい! うるさい! あんたらが投げ銭してくれたらあたしは危険な目に遭わなくて済むの!」
『その危険な目に進んで行ってるんだよなぁ』
『逆ギレwww』
「いっぱい投げ銭してよ! それでダンジョン攻略するから!」
『(ヾノ・∀・`)ムリムリ』
『お金をドブに捨てた方が多分建設的』
なんなのコイツら!
人の配信見に来てる癖にさ!
協力しようって思わないわけ!?
協力してくれない
「……なんか変な臭いがする」
『画面じゃわかんねーよ』
『どんな臭い?』
『アイラたんの臭いカナσ(^_^;)?』
「なんか……腐った感じの臭い……あとあたしはそんな臭いじゃない」
進んでみると別れ道に出た。
「どっちがいいと思う? 臭いは右からするけど」
『右』
『右』
『絶対右』
『右手法というのがあってだな……』
「マジ?
『じゃあ聞くなや』
『ここで右選ばない時点で底が知れてる』
『右選んだらスパチャするかもなぁ〜』
「言ったな!? 約束したからな!? 絶対しろよ!? 助けろよ!?」
『なんか勝手に約束にされて草』
『必死やな』
あたしは覚悟を決めて