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一日目 ⑤

『まあ、なったもんは仕方がないな。ガハハ! それより緊急ミッションだ!』


『風呂上がりに緊急ミッションとか鬼畜かよ』

『ワクワクでござる』

『もう、寝かせてくれよ』


『ハッハッハー! 今日は恋愛要素薄めだからな! せめて最後くらいは、っと』


 ツタエ・マスオがまたしてもパソコンを弄った。


『参加者全員の個別チャンネルを用意したぜ! ここに今日の日記を書いてもらう! 今日の感想とファーストインプレッションだ。なに、一言日記で十分だ』


『おおー、そういうミッションなら歓迎だ』

『ドキドキでござる!』


 視聴者からの反応は上々だ。


『ハッハッハー! 明日もイベント盛りだくさんだ! 楽しみにしてくれよな! ガハハ』



――ダンジョン内


 皆思う存分に風呂を堪能し、それぞれ個別のテントへと潜り込んだ。疲れや緊張感、癒やしの風呂などから早々に眠りにつきたいのだろう。


 最後になにかゴソゴソしていたナナがテントに入る前に皆に声を掛けた。


「西側の女子テントと東側の男子テントの境にトラップ仕掛けました。お互い変なことにならないように、しないように」


 参加者それぞれ返事をし、静寂が訪れた、と思ったら運営からのメールが各自のスマホに届いた。


「日記書けってさー」


 マサキが読み上げる。めんどくさいのはやまやまだが、ミッションならばやらねば、と他のメンバーもため息混じりでゴソゴソ動きだし、恐らく日記を書き終えた順に静かになっていった。



【マサキの日記】

 初日。ダンジョン攻略のために皆をまとめるべく頑張ってみたが……他の男子メンバーよりも活躍出来ていないな。明日こそ!


 第一印象はスミレかな。あまり話してないけど雰囲気は好きかも。


【スミレの日記】

 結構肉体労働よね。しんどかったな。でもお風呂気持ちいくてハッピー。あとはお酒があればね。


 第一印象はショウかな。でもお酒が作れたらリュウに乗り換えちゃうかも♡


【ショウの日記】

 めんどい、疲れた、眠い以上


 第一印象は全員!

 は、さすがにダメか(笑)

 真面目で頼れるナナにしとこ。


【サクラの日記】

 普段とは違う環境でも、みんなのために頑張れたと思うわ。特に料理。楽しかったな。大きな風呂も嬉しかった。


 第一印象はリュウね。料理作ってる姿はカッコよかった。


【リュウの日記】

 結局皆に料理を作って振る舞っているとは。これではいつもの毎日と変わらないな。でもサクラのサポートは頼もしかった。てことで、第一印象はサクラ。

……

【ナナの日記】

 恋愛リアリティショーなんて、と思ってたけど私が活躍できる場があるなんて。でも男の人と話すのは恥ずかしい……なんとかしなきゃ


 第一印象はマサキかしら。


【レオの日記】

 レベリングは順調だし、俺の強さ見せつけられただろう。リーダーシップも発揮出来てるし、明日以降もみんなを引っ張って行くとしよう。


 第一印象はモモだ。守って守って守り抜いてやりてえ。


【モモの日記】

 まさかマッピングすることになるなんて。細かく書きすぎてドン引きされないかしら。ていうか、今日これしかしてなくない?


 第一印象はマサキさん。レオさんもすごく頼もしいんだけど、あの筋肉はちょっと……



――運営サイド


『皆の日記が出揃ったようだ! ガハハ! どれどれ』


 ツタエ・マスオが日記に目を通す。


『ほう、男性陣はバラけてるが、女性陣はマサキが人気のようだな。レオはあんなに頑張ってるのにな!』


『レオかわいそうだな』

『拙者はサクラ推しでござる』

『ショウ適当すぎだろW』


『はっはっはー! 視聴者のコメントも賑やかで何よりだ! 明日はもっと恋愛を進めるためにマスクを外す許可を出すぜ!』


『おっ!楽しみだね!』

『サクラサクラサクラ……きっといや絶対美人でござる』


『おっと、ナイスなコメントだ! ガハハ! それと明日から投げ銭システムを開始するぞ! 推しにバンバン投げてくれ!』


『投げ銭の説明よろ』

『サクラに貢ぐでござる!』


『よしよし。投げ銭の説明をしよう! 投げ銭は個々の使える通貨となる。使わないで貯蓄もいいし、毎日の着替などの日用品やダンジョン攻略の装備なんかも買えるぜ!』


『なるほど、自由に使えるのか』

『サクラたんの喜ぶ顔が見たいでござる』

『それだけ?』


『はっはっはー! いいツッコミがあったな! 当然それだけではないぞ。これを見たまえ』


 ツタエ・マスオは手に持つ紙をひらひらとさせた。


『これは、三十分ツーショット券だ。これを使えば必ず三十分は二人きりになれる。これは恋愛リアリティショーにとって重要なアイテムではないか?』


『必ず……だと!?』

『サクラたんに使ってもらいたいでござる』

『ツーショットなりたくない場合はキツイな』


『はっはっはー! そこも駆け引きだろ! まあ重要アイテムゆえに高額ではあるので、推し活頑張ってくれたまえ! ガハハ!』


『でもさ、俺らにメリットないよな?』

『ないでござるな』


『くぅー! 欲しがるねえ! 視聴者にもメリットはある! 推しが誰とカップルになるか、予想してもらう。その予想が当たった視聴者には、なんと!』


『なんだなんだ!?』

『ゴクリでござる』


『団氏の作った、史上最強最悪のダンジョン【陽炎】の挑戦権をプレゼントだ! ガハハ!』


『おいおいおい! マジか!?』

『難攻不落、攻略者ゼロの鬼畜ダンジョンでござるか!』

『だが、二階層のドロップアイテムや素材だけでも億万長者になれるぜ』


『ん〜! いい反応だ! ガハハ! 期限は明日の二十三時五十九分までだぞ! では今日はここまで。また明日な! ガハハ!』


 一日目の配信は終了した。だがこの恋愛リアリティショー&ダンジョン攻略という新しいコンセプトに加え、推しのカップル予想が当たれば【陽炎】に挑戦出来るという話題で、SNSやネット界隈は騒然としていた。


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