「え、見せびらかしたんだ」
あのお弁当を? あたしの顔が赤くなる。
好きな女の子……、あれ、またその話題?
「うん。どのみち、あの大きさだからね。隠しようがないし、それなら僕はみんなに見せてやれ~って」
明るい口調で聖哉さんは言ってきた。
先日、あたしは聖哉さんから告白されてた。
あの時は雪哉くんが隣から出てきて、会話が中断したんだった。あたしも本気じゃないと思って、そのままにしていた。
聖哉さんはこんなにオシャレだし、イケメンだし、彼女はいるんじゃないかな……。
いないほうがおかしい……。
「あ、ねぇ星奈ちゃん、冷たいもの欲しくない? 懐かしいもの見つけたんだ」
突然、聖哉さんが声を弾ませた。
「冷たい物? うん、欲しい!」
考え事していて、馬鹿みたいに長風呂しちゃったんだった。身体が熱い。
「ちょっと待ってて」
そう言うと、聖哉さんは階段を急いで降りていった。聖哉さんはどうやらキッチンに向かったらしい。
「はい! 星奈ちゃん、お待たせ!」
弾むような声を出して、聖哉さんが階段を駆け上がってきた。
あたしは階段を上がってくる聖哉さんを見た。
聖哉さんの手にはアイスが握られていた。
「懐かしいでしょ!? このアイス、何年ぶりだろうね。廃盤になったと思ってたけど、最近復活したみたいだね。スーパーで見つけた時は嬉しかったなぁ」
水色のパッケージのアイスを聖哉さんは握っていた。
それもたったひとつ……。
「え? 懐かしい? え……?」
あたしの頭が混乱しだした。
「昔はさ、よくこのアイスを半分こにして食べたよね」
聖哉さんは袋からアイスを取り出し、半分に割って、片方をあたしに差し出した。
「え……」
理解できない。聖哉さんはなにを言っているのだろう……。
追いつかない頭で、あたしは恐る恐る聖哉さんからアイスを受け取る。
「昔はよく庭で星奈ちゃん、泣いてたよね。でもこのアイスが好きでさ、これを食べている時は幸せそうだったね……」
懐かしいね、と話す聖哉さんにあたしは呆然とした。
口に含んだアイスの味がよくわからない……。ウソだよね……?
あたしが一目惚れして、初恋だと思っていて、ずっと大切に思ってきた相手は雪哉くんではなかったってこと……?
初めての恋、ソーダアイスの相手は、雪哉くんではなく、聖哉さんだったんだ……。